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逝かせない


「あぶない、フレイア」


フレイアを突き飛ばしたけど、ダメだ自分のことは守れそうにない。


これは大けがして怒られるなぁ、なんてゆっくりとコマ送りのような感覚に襲われながら冷静に思っていると、右手を引っ張られ誰かの胸の中に閉じ込められた。


「莉愛」


え!?・・・レン・・・蓮?


急に世界の動きが元に戻るのと同時に強い衝撃が体を襲う。

あ、あの時と同じだ。

前世でバスの事故で命を失ったあの時。

あの時もこの腕が私を守ろうとしてくれた・・・え、この腕が?!



周りの音が聞こえるようになり、激しい頭の痛みと肩の痛みを感じたが、生きている。

ぎゅっと私を抱きしめたままのレンは動かない。


「レン、レン・・・大丈夫?目を開けて・・・レン!」


目を閉じたままのレンには意識が無いようだ。

ダメだよ。

金の髪が赤く染まっていくのが怖くて震えが止まらない。

今度は私だけ助かっても意味がない。


「やだ、やだ・・・一人にしないで」


涙が溢れて止まらなかったけど、泣いていることにもこの時は気づいてなかった思う。


絶対ダメ、絶対に連れて逝かせない。


急に自分の中に暖かな銀色の光が宿るのを感じるのと同時に、それが溢れ出して全体を銀の世界に染める。

助けたい何が何でも、この人を。

今度こそ、一緒に年を取って幸せに暮らしたいと、心の底から思った。


後から聞いた話では、私から溢れ出した銀の光は事故現場の穴から溢れだし、周り一帯をしばらくまぶしいくらい明るく輝く光で包み込んでいたという。


そして銀の光は近隣に住む者たちのところまで溢れ届いたという。

光に驚き周辺は大パニックになったというが、その時に銀の光に触れた者は傷や怪我が消え、病気で苦しんでいた者たちは病が治ったとか・・・

まことしやかな話がしばらく噂になっとか、ならなかったとか。



瓦礫の中で意識を失って倒れていたところを救助された私がその話を聞いたのは、五日後のことだった。


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