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ティータイムのいちごは甘酸っぱい

ファーレン殿下は、私が落馬をした時に一緒にいたようで、そのことで責任を感じているのだろう。

何度自分のミスだと話しても、中々受け入れてくれない。

まだ5歳なのにずいぶんと大人びた子どもだなあと、同い年が何を言っているのだと突っ込まれそうだが、感心してしまう。


さて、今日も私のお見舞いにいらした殿下、午前の学業を終えて来てくれたそうだが、今日も変わりなく美しいお姿。

せっかくベットから出ることができた最初の日ということで、お庭の東屋でお茶をご一緒することにした。


お茶菓子は殿下が持ってきてくださった、細かく切ったアーモンドがのった焼き菓子と、うちの料理長が腕によりをかけたいちごのゼリーとパウンドケーキの上にスライスされたいちごがふんだんにあしらわれた、いちご好きの私のために作ってくれたもの。

まだ、この世界には生クリームはないようで、あったら完璧なんだけどなぁ〜と思いながら、殿下のお菓子をひとつつまみ食べる。

アーモンドの優しい香りと感触、甘さも控えめでほろほろと口の中でほどけるような焼き加減が絶妙!


「ファーレン様、ドレスとお菓子ありがとうございます。とても可愛いくて、気に入りました。お菓子も美味しいですね」


自分でも幸せ〜オーラが出ているだろうなぁ、と感じるほどの笑顔で殿下にお礼を言ったが、イケメン殿下の爆弾発言に表情が固まってしまった。


「気に入って頂けたならよかったです。でも、いつになったらその他人行儀な呼び方が戻るんですかね?」


ニヤリと漫画の吹き出しがつくような笑みを浮かべて言うのだ。


‥‥‥!?


ずいっと私に顔を近づけ、ちょっぴり意地の悪そうな微笑みで見つめられ、持っていた焼き菓子を落としてしまった。


「え、えーっと何のことでございましょうか?」


ウタやメイド長に指摘されていたので、いつか言われるかもと思っていたけど、いざ言われるとなんと誤魔化せばよいか迷ってしまう。

言い方も直球すぎ!!


「喧嘩をした時に一度だけ『殿下』呼びされたけど、僕がそう言われるのがどれだけ嫌か、お話ししてそれ以降は呼ばなくなったはず。やはり落馬したことを根に持っていたということでしょうか」


「それはないです!!根になんか持っていません!」


「でしたら、なぜ?」


小首を傾げて、ちょっと寂しそうな表情、わざとやっているよね!と思ってしまうほどあざと可愛い!


「そ、それは‥‥

いつまでも自分のせいだと、思っているところが嫌だというか、やっぱり従兄弟だけど王太子殿下なんだなと改めて感じたというか」


誤魔化しながらごにょごにょいう私に、一瞬だけ目を見開き笑顔になった殿下は、


「うん、ごめん。もう僕のせいだなんて思わないよ。それに僕らは従兄弟で幼なじみなんだから、今さら気にすることはない。ということで、アメリー。いつもみたいに呼んで」


「‥‥‥‥レン様」


「う〜んおしい。ここは今誰もいないよ」


「そうでしたね、レン」


「ありがとう、アメリー。僕は君にそう呼ばれないとボクでいられなくなってしまいそうで、怖いんだ」


「?」


私の手を取り甲に優しく唇を寄せた。

とても優しくてまるで大切にされているようなそんな行為。

自分の顔が朱に染まるのを感じたが、心のどこかで10年後私に見向きもしないで、ヒロインの元に行ってしまうレンが思い浮かぶ。


『あれ?』


何か小骨でも引っかかったそんな気分。

深く考えたくないような気がして、慌てていちごのゼリーを口に入れる。

甘くてほんのり酸っぱくて、今の私にちょうどいいなんて気持ちになったのはなぜだろうか。

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