ジュリアンさん
レンはクスクス笑う私を引っ張って会場を後にし、会場横のカフェの2階に連れてくる。
このテラス、会場がよく見えるわ!
中でも1番会場がとてもよく見える席にカムロ兄様とジュリアンさんがいた。
兄様が黒を基調としたスーツを着ていらしたのは、ジュリアンさんの赤のワンピースを引き立たせるためだったんですね。
2人のコーディネイトされたかのような完璧な装い。
素敵!と思ったけど、ん?ジュリアンさん女装ですか?!と思ったけど、あれ違う?
「ジュリアンさんって女性だったんですか!?」
「はぁ?アメリー何を言っているんだ。昔からジュリアンは女性だけど、会ったことあったよね」
私の素っ頓狂な声に何言ってんだという表情の兄様と、苦笑しているジュリアンさん。
レンも何言ってんだという表情。
え、私だけですか?!間違えていたの・・・
「ジュリアンさん、ごめんなさい!」
「いいのよ、アルメリアちゃん。私こんなだから、よく間違えられるのよ」
「なんでこんなに綺麗なジュリアンが男と間違えられるのか、僕はずっと不思議なんだよね」
惚気とも思えるようなことを言ってるのに、お付き合いしてませんよね、兄様・・・
言われたジュリアンさんも可愛らしく赤くなっていらっしゃるのに、なんでこの二人お付き合いしてないのでしょう!?
それに、ジュリアンさんがしている珊瑚のピアスは、カムロ兄様の守護宝石。
これは両片思いを拗らせてますね~
なんて、ついこの間まで両片思いを10年拗らせまくっていた私が言えることではないのですが。
「カムロ兄さん自分だけ危害のないところに避難して高みの見物、羨ましいことです」
「いいじゃん。ファー様、ちゃんとアメリー守れてたしね。それにいいもの見せてもらったよ。アメリーお前ノリノリであんなことできるんだな。もう笑いが止まらなくて、やっと落ち着いたのにまた思い出して・・・くくく」
「兄様!忘れてください。それとノア兄様には絶対内緒にしてくださいね」
「分かった、分かった。けど、ほら王子が不貞腐れているぞ」
え!と隣のレンを見ると、確かに機嫌が悪そう。
何か気に障ること言ったかな?
「なんでノア兄さんには内緒なの?」
「え、何でかな・・・あははは」
それは大好きなノア兄様に知られるのは恥ずかしいんです。
ほんとにノア兄さん好きなんだから、とレンはブツブツ言っているけど、例え実の兄様といえども推しは特別なんです。
「さて、夕方の発表までは別行動でもいいかなと思うんだけど、大丈夫かな?婚約者殿」
「あの、いいんですか?」
「別に、僕は君のこと信じていないわけではないんだけど、ただちょっと意地悪したくなっちゃったんだよね。アルメリアは僕の大事な妹だからね。やっぱり大切に守ってくれる男に託したいじゃない」
「今度こそ『全力で守ります』」
「『頼んだよ』」
カムロ兄様とレンの間で、何かあったとは思っていたけど、二人の関係が戻ってよかったと思う。
では、またあとで!と言って、私の手を取り二人とは別れて外に出る。
「行きたいとこがあるんだけど、いい?」
えぇ、どこでもいいよ。
あなたが行きたいところに私も行きたいから。




