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カップルフェアリーコンテストの開催

舞台裏に行くとフレイアが待っていた。


「レン様お久しぶりです。お会いしに学園に行ったのですが、いらっしゃらなくて残念でした。私のミスコン見てくださいました!」


笑うフレイアと対照的に、レンは辛そうに奥歯を噛み締め耐えている表情、繋いだ手が震えている。

大丈夫だよというように、力強く握り返す。


「レン、大丈夫?」


「あぁ、まだ大丈夫だ」


私の存在に今気づいたというように、初めてフレイアがこちらを見る。


「こちらの方はどなた?」


「はじめまして。私はアルメリア・カサヴァーノと申します。フレイア様のお噂は友達のメアリアンから聞いております」


「カサヴァーノ?!ふーん、カサヴァーノ家の妹ね」


小さな呟きが聞こえる。

そう、私はカサヴァーノ家の妹としか登場しない、名前もないモブ中のモブだ。

そのモブが攻略対象大人気の王太子と手を繋いで現れるなんて、ストーリー上ありえないことだ。

上から下まで値踏みするようにじっくり私を見てから、レンに向き合い微笑む。


「レン様がご参加されると分かっていましたら、ご一緒に参加できましたのに、残念ですわ」


「残念でもなんでもありませんよ。俺はリアとしか出ませんから」


ビックリしたような表情をしてから、レンの首元あたりを見て表情を変えた。

多分ラペルピンに気づいたのだろう。


「リア?!そう、あなたにも、もう大切な人がいるんですね」


私とレンを交互に見比べ、小さな小さな呟きを落とす。

それはなんと言っているかハッキリは聞こえなかったけど、その瞳には落胆の色が色濃く浮き出ていた。


「やっぱりバグを見つけないと」


「えっ?!」


「いえ、なんでもありませんわ。お二人も頑張ってくださいね」


にっこり微笑み、いってらっしゃいと手を振って見送ってくれたが、その私たちの背中を見送る瞳が怖いくらい睨んでいたことには、気づかなかった。



フレイアの邪魔が入るかと思っていたけど、すんなり通らせてくれて良かった。

でも、とうとうランウェイ裏まで来てしまった。

カップルフェアリーコンテストには5組参加するが、私たちはその4番目に登場する。


1番目の子、可愛い!

紫のマーメイドタイプの衣装がとても似合っているけど、お相手の子が濃い赤の衣装で二人の色が合っていない。

2人とも可愛いくて、カッコいい子なのに衣装の釣り合いが取れてなくて残念だ。

それに、急にカップルになったのか息も合わず、舞台でグダグダになってしまっている。


あーどうしよう!!

そんな様子を見てしまうと、余計に心配になってくる。

私できるかな?!ダメだ!!やっぱり無理だよ。

緊張でドキドキが止まらず、オロオロしてもう他の参加者なんて見ていられない。

もうどうしょう、とうとう下を向いてしまった。


「リア、顔あげてごらん」


ムリムリと首を振ると両頬に手を添えてグイっと上向きに顔をあげられ、チュッと唇にキスをされた。


「レ、レ、レン!ここ外!!」


「うん。でも、もう大丈夫でしょ!」


目の前にはレンだけで、他は見えない。

緊張のドキドキが違う胸のドキドキに変わっている。

なんだか、ある意味落ち着いた。


「一昨日の神殿でのお仕事の方が失敗できないし、よっぽど緊張するから。あれができるんだから大丈夫だよ。これはお祭り、失敗も何も全部楽しいことに変わるから」


「お祭りは失敗してもいいの?」


「そうだよ。ほら見てごらん」


舞台を見るよう促されて見ると、3番目の子たちがとっても楽しそうに踊っていた。

見ているみんなも楽しそうに笑っていた。

私もさっきまであの輪の中でみんなと一緒に楽しんでいた。


「いいんだ、失敗しても。上手に出来なくてもいいんだ」


「そう、ここはいいんだよ。リアは今までそんな経験したことないもんね。だから、俺に任せて一緒に楽しもう」


にっこり笑うレンに、私も笑いかけた。


気づくと私たちの番が来たようだ。

スッと手を差し出される。


「行きましょう。俺のお姫様」


「よろしくお願いします。私の王子様」


いつものようにレンの左手を取り、一息深呼吸してから私たちは出て行く。

一昨日のような王太子の表情や威厳なんかない、私だけを見つめてくれる優しい笑顔に、私も一番の笑顔を返す。

街中でよく遊んでいた私たちのことを知っている人たちも多く「レーン君頑張れ!」「アルちゃん可愛い」など声がかかる。

よくよく考えると、私こういうの慣れていたんだと気づき、今までの王太子妃教育を思い出しにっこり手を振る。

真ん中まで進むと両手をとり流れるようなダンスのような動きの後、私の両脇に手を入れてフワリ!と抱き上げ、くるんと半回転して地面に下ろす。

キャーと言う声が聞こえ拍手や野次など色々聞こえるけど、今は目の前のこの人のリードが気持ちいい。

今回の衣装を活かすようにくるんと回してくれて、シフォンがふんわりふんわり広がっている。

楽しい!とっても楽しい!心からの笑顔が溢れた。

しかし最後にお姫様抱っこされた時は一瞬どうしようかと思ったけど、私も楽しかったんだろうなぁ、片手と片足を上げてポーズなんかしてしまった。

たくさんの拍手と指笛と歓声とで大騒ぎになったが、いつまで抱っこしてるの///早く降ろしてと目で訴えるけど、あえてスルーされそのまま姫抱っこのまま退場した。


「くくく。リア、ノリノリだったね」


大笑いしたいのを我慢しているその笑い。

わかってます。

自分でもかなりノリノリで楽しんでいたと思います。


「いいでしょ、楽しんでって言ったのはレンだし」


恥ずかしくてプイっと視線を外すと、ごめんごめんと言いながらも、笑いが止まらない。

モゾモゾ動いて地面に下ろせ!とアピールすると、ハイハイとゆっくり降ろしてくれる。

いつまでも姫抱っこは恥ずかしいんだからね。


あら?周りの視線が初めと違うような気がする。

レンを見る周りの女の子たちの視線が・・・あぁ、いつもこうなっちゃうんだよね。

完璧なイケメンは罪だな~

なんて思っていると、急に不機嫌MAXになったレンが手を引いてさっさと会場を後にする。


「レン、何怒っているの」


「あそこにいる男たちがリアを見るのが嫌だ。だから本当はこういうの出たくないんだよ。俺のなのに」


///ちょっと嬉しい。

嫉妬しているレンが可愛くて、嬉しくてクスクス笑いが止まらない。


「笑うなよ」


「だって、ふふふふ」


「だから笑うな!」


こっちを向かないレンの耳が赤くなっているのを見て、私の笑いは中々止まりそうになかった。



ファーレンとアルメリアは美男美女カップルです。

そんな二人がコンテストなんかに出れば、そりゃあ人目を引きますよね。

嫉妬と独占欲の塊君は、今までアルメリアが興味を持たなかったのをいいことに、参加しなくて良かった!と思ってきましたが、今回はお兄ちゃんの命令で渋々参加となりました。

でもアルメリアが楽しんでいるのが嬉しくて、ちょっとノリに負けてしまった結果、やっぱり注目を浴びてしまうことになり不貞腐れてしまいます。

お互い自分に向く好意の目には全く気づいていないのが、不思議ですね。


いつも読んでいただきありがとうございます。

ジワジワとヒロインが出てきて、バグ探しも始まります。

バグは、やっぱり・・・ね。


次は、コンテストの結果が出るまでの間、カムロ兄様のお友だちのジュリアンさんの登場です。

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