花祭りの花を摘みに行こう
花祭りが始まった。
先日王城で仮縫いを済ませた衣装はとても可愛く出来上がり、侍女たちにも大好評!だった。
あの時よりも薄布部分に金糸で刺繍が入り、色とりどりの花の刺繍が増えていてとても可愛い。
私の着る服がこの後ルノアの流行になることも多いため、みんなの力の入れようが半端ない。
くるっと回ると薄緑のシフォンが広がりみんながキャーキャー言ってくれて嬉しいけどちょっぴり恥ずかしい。
私の衣装を見に来てくださった王妃様からは「体重戻らなかったでしょ」と厳しい表情で咎められてしまい、笑って誤魔化すしかなかった・・・仰る通りです。
ごめんなさい。
脇の髪を2本に編み込み、サイドアップにして緑のシフォンのリボンを長めに結び、妖精の羽根が広がったように見えるようにする。
可愛い服はやっぱり嬉しい!
花祭りは妖精が精霊に春の花々を届け、その花束を精霊が女神に捧げることで、王華のカサブランカが輝き花祭りが始まる。
1年に1度、花祭りの日に王華が輝き神殿から女神の祝福が城下に降り注ぐと言われている。
私とレンは5年前からこの妖精役をやってきた。
未成人の貴族の子どもが選ばれるのだが、私たちみたいに5年も続けて大役をやった人はいないそうだ。
王太子は特別なのだろう。
妖精役になる前から、私たちは衣装を対にすることが多かったが、行事に参加するときはその年の流行を考えられた衣装を対になるように作っている。
今年はレンが忙しくて一緒に衣装作りがスタートできなかったので、最後の衣装合わせにレンの衣装が間に合わずまだ見ていない。
レン素敵だろうな~
ワクワクドキドキが止まらない中、レンが待っているであろう一室のノックし入室する。
「!!(かっこいい~///)」
あまりにも素敵なレンに言葉が出てこない。
窓辺に腰掛け、長い足を組み書類を見ていた。
こんな時にも王太子のお仕事があるなんて、本当に大変だなとそっと見守る。
私の衣装と色の割合が反対で黄色を基本とした色味の中に緑がきれいに取り入れられている。
私のと同じ金糸の刺繍と、男の人なので色とりどりの花々の刺繍の代わりに銀糸の刺繍がされている。
視線に気付いたのか顔を上げ私を見てふんわり微笑んでくれる、私だけの王子様。
「リア、すごくかわいい」
両手を広げて待っていてくれる腕の中に、迷いなく躊躇わずに飛び込む。
「レンこそすっごくかっこいい!似合ってるわ」
「そんなことないよ。俺の妖精よく見せて」
さらっと恥ずかしいことを言えるこの人はすごい・・・ほんとに恥ずかしい。
顔を真っ赤にしながらお互い見つめあって笑ってしまう。
「凄く可愛い、可愛いんだけど・・・」
私のスカートと足を見ながらため息をつく。
「似合っているしすっごく可愛いけど、やっぱりなんで・・・なんで、妖精の衣装はスカート丈がこんなに短いんだ。きれいな足を惜しげもなく見せるなんて・・・・・・俺だけでいいのに」
最後の方は小さくて聞き取れなかった。
そうか、毎年可愛いと褒めてくれるけど、どこか不満そうだったのはスカートの丈だったのか。
初めて言われて気づいた。
そうか、短いのか・・・
改めて自分のスカート丈を見るが、女子高の時の方がよっぽど短かったので、なんとも思わなかった。
(今の方がもっと若いんだも~ん)なんて心の中で舌を出す。
今年のデザインは、学園に通うようになり大人の仲間入りの一歩手前ということを考え、足を出すことへの配慮だろう。
今年はリボンを足に巻くタイプのサンダルになっているが、生足に巻いているのは、可愛いけど見方を変えるとちょっと///ね。
「今年で妖精の衣装着るの最後なんだけど、似合わない?!」
「いや!すごく可愛い。似合っているよ」
ちょっと上目遣いで見ると、慌てたように言うレンが年相応で可愛かった。
「じゃあ、温室にお花を摘みに行こう!」
パッと離れてレンに手を差し出し、今日のお仕事を始めることにした。
私たち妖精が春を連れていくのだ。
まずは温室で私たちで選んだ花々を花束にしないといけない。
「じゃあ行きますか」
「うん」
当たり前のように手をつなぎ温室に向かう。
毎年この花選びが楽しいが、これも最後と思うと感慨深い。
出来るだけたくさんの色を入れるようにしているが、今年は白、黄、オレンジ、赤、ピンク、紫など色とりどりのフリージアを主にスズランをあしらった花束にする。
神殿の巫女が花束にしてくれ、緑と黄色のリボンで結ぶ。
最後と思うと色々選んでしまい、結構大きな花束になってしまったが、レンが右手で持ち肩に乗せて左手を差し出した。
「では、妖精の姫君。神殿までご一緒してもよろしいですか」
「もちろん、王子様」
「今年のリアは本当に楽しそうだね。こんなに楽しそうなの初めてみたよ」
レンの左手を取り、にっこり笑う。
うん、今年は楽しもうって決めたんだと、心の中で返事をする。
とっても、とても楽しいよ!
レンと花が飾られた馬車に乗り、神殿に向かう。
この道も今年で最後。
なんてセンチメンタルな気持ちに浸っていると、繋いだ手をぎゅっとレンガ握った。
なに?と思ってレンの方を向くと、静かに唇が落ちてきて優しくキスをされた。
「妖精のリアも今年で最後なんだね。一緒に楽しもうね!」
「うん」
目を瞑り、そっと花束の陰でもう1度キスをした。




