表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/134

乙女ゲームの補正

このまま帰ると家族のみんなが心配するし、まだ離れたくない。

ギュッとわざと甘えるように抱きついてみると、レンが困ったようにでもやっぱり分かってくれて、いったん王城に寄って行くことになった。


「今日は父上と母上は不在だから、堅苦しいことはなし」


と言って城に着いてそのまま手を引かれつれてこられたのは迷子の庭だった。


「この間、いいとこ見つけたんだ。多分誰も知らないとこ。あ〜、父上と庭師は知っていると思うけどね」


王城を右手にバラの生垣をぐるりと周り、特に何もない箇所で止まると、屈んでみるよう手で促すので、一緒に横に並んで屈んでみる。


「ほら見て、ここだけバラじゃないんだよね」


「ほんとだ」


「で、ここをこうやって」


一部分だけバラに似た葉の木が植えられている箇所があり、棘の無い葉を掻き分けると小さなトンネルのようになっていた。


「行こう」


子どもの時のように笑うと、先に潜って中に入り手を差し伸べてくれる。

その手を取り引っ張られるように中に入ると、


「わぁ〜綺麗」


蔦が絡まったお城の壁とバラに囲まれたぽっかり空いた空間。

芝生が綺麗に刈られていることから、ちゃんと手入れがされていることが伺える。

陛下と庭師が知っている、うん納得だ。

ちょっとした秘密基地のような空間に私がワクワクして喜んでいると、先に芝に座っていたレンに腕を引かれ、足の間に背後から抱きしめられるように抱え込まれてしまう。


「少し元気になった」


「うん・・・」


首筋に顔を埋めながら話されるのはちょっとくすぐったい。


「隠すのは嫌だから、ちゃんと話しておこうと思うんだけど・・・」


レンが話し出したことは、昨日自分に起こったこと。

自分が自分で無くなりそうで怖かったこと、すごく嫌だったこと、初めての体験に驚いたこと、などゆっくり話してくれた。


あ〜これは、乙女ゲームの補正だ。

そしてヒロインはファーレンルートに入ろうとしている。

やっぱりダメなんだ。

私では、この人のお姫様になれないんだ。

そんなマイナス思考の私に、レンは話を続ける。


「だから、俺も頑張ってみようと思うけど、変になっちゃった時は、俺の名前を呼んでもらいたいんだ」


「レン?」


顔を後ろに向けようとすると、少し力を緩め向きを変え向かい合う。


「そう、レンって呼んで、リア」


「!」


「リア。俺にだけそう呼ばさせて。いいかな?」


「・・・うん」


よかったなんて言って、嬉しそうに笑っている。


莉愛、前世での私の名前。

今の私の名前の中にも入っている名前。


「俺はリアだけにレンって呼ばれたいのに、勝手に呼ばれていい気持ちがしない。だから、リアにたくさん呼んで欲しい。俺を『オレ』でいささせて」


うんと頷くと涙が溢れた。


「ほんとにリアは泣き虫だなぁ」


ゴロンと芝生に抱え込まれるように寝転がり、優しく微笑みながら一つ一つ涙にキスを落としてくる。


リア、リア、リア


なんてたくさん名前を呼びながら、顔中キスをされたんじゃないかと思って恥ずかしくなりそうだったけど、最後に唇にキスが落とされた。


「レ、レン///」


真っ赤になる私に幸せそうに微笑むレン。


私たちのファーストキスは、ちょっぴりしょっぱい涙の味がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ