花祭りの妖精
ルノア国には決して枯れることが無い王華のカサブランカがある。
王都ペレではその王華を称え、夏の初めに花祭りを行う。
カサブランカの花の女神を崇め、成人前の子どもたちが花の妖精に、その年に成人になる新成人が精霊になって祭りを盛り上げる。
その大切なカサブランカを守護し守っているのが、我が家カサヴァーノ公爵家である。
女神の愛し子とも呼ばれ、昔は神殿に使える神官『カサヴァンナ』の家系にあたるらしい。
と、言っても聖域化は100年前に無くなり、神官たちも臣下に下がった。
なんでも女神が生まれなくなったのだという。
それからは王華は王宮で管理され、歴代の姫様方や王妃、カサヴァーノ家によって守られ、祭りの時に神殿に戻される。
今の女神は国民に愛されている元王女のお母様がされている。
王華のカサブランカは私もお祭りの時に神殿で祈りを挙げるときにしか見たことが無い。
銀色に輝く美しく大きな花だった。
レンが「アメリーの髪の色に似ている」なんて、恐れ多いことを言って周りを驚かせていたっけ。
毎年、あまり気乗りしない花祭り。
最後と思うと悲しくなるけど、最後だからこそ今までの分も楽しんでみようと思えた。
「アルメリアちゃん!すごくかわいい~!似合うわ~~!」
今日は王城で花祭りの花の妖精の衣装の最終衣装合わせを行っていた。
王妃様のお気に入りのデザイナーで私も大好きなブランドだ。
薄い緑色を基調としたドレスで、袖やスカートに飾りとしてつけられたふわふわ~と広がるシフォンは、白と水色。
白いパニエがふんわり広がり、妖精は膝までのスカート丈と決まっている。
胸元に編み込まれたリボンは、濃い黄色と深い緑が使われている。
全体的に緑を基調としたデザインになっている。
「う~ん、腰回りがあまっちゃってるな~。リボンで隠せるけど、当日までにもう少しお肉付けてね」
「ひやい!」
つつつ~~とわき腹をなぞられて変な声が出ちゃった。
私の反応に楽しそうな王妃様は、宝石が埋まったカサブランカをモチーフにした宝飾品の箱を私に見せる。
「あとは花飾りのアクセサリーだけど、どれにする?」
「・・・これにします」
女の子の妖精は花飾りをつけるのが決まりだ。
その年によってモチーフがあり、今年は銀色のカサブランカ。
貴族はそのモチーフに好きな色の宝石を組み合わせている。
そして、今年はこの宝石の色が乙女ゲームの攻略対象ルートに入る鍵となっている。
自分が選ぶヒーローの瞳の色の宝石。
私が選んだのは、レンの瞳の色のエメラルド。
「本当にアルメリアちゃんは翠が好きね」
「はい。好きです」
初めて好きな色と言うことが出来、にっこり笑うことが出来た。
「////かわいい!ファー君見れなくて残念。悔しがるだろうな~。自慢しちゃおう」
ふふふと笑う王妃様。
レンの衣装は当日まで私も見ることが出来ない。
「楽しみにしていてね」
「・・・はい」
楽しみにしよう。
レンの瞳の色の宝石を付けて、未来は変わるんだと信じて。




