守るべきもの(レン視点)
たった一人、命に替えても守りたい人がいる。
一度失った。
でももう二度と同じ間違いは繰り返さない。
「アメリー!」
意識を手放し椅子から崩れ落ちるアルメリアの手が、力なく俺に助けを求めたような気がした。
俺は、アルメリアの体を大切に受け止める。
一滴涙が頬を伝う姿が痛々しい。
何があった?
今、母が花祭りの話をしただけのはずだ。
そういえば花祭りは毎年あまり乗り気ではなかった。
花の妖精の姿が可愛いくて一緒に祭りを楽しみたくて、引っ張って無理やり連れて行った。
行けば笑顔で楽しそうだったけど、今年の花祭りは今までと違うのか?
花祭りになにかあるのか?
「アルメリアちゃん!」
母も横に駆け付け、エリシオンは侍医を呼ぶよう執事に話をしている。
そっと抱き上げると、また軽くなったような気がして無意識に舌打ちをする。
あの日から隣で笑ってくれるようになったけど、ふとした瞬間に今にも消えてしまいそうなそんな不安を感じる笑い顔をする。
何が、君を苦しめているのだろう。
「部屋に運びます」
「ダンとフェレノアには連絡を入れておく」
カサヴァーノ家への連絡は父に任し、俺はアルメリアを抱き上げ部屋に運ぶことにした。
今は使われていないアルメリアの部屋。
いつでも使えるようにと、掃除は毎日してもらっている。
いつの日か、一緒に暮らせるようになったら使ってもらう部屋・・・
ベットにそっと下し羽根布団をかけ、椅子を引いてきてベットの脇に座る。
青白い顔。
何がこんなに彼女を苦しめているのだろう。
見えない何かにいつも怯えているのを感じる。
それも俺を失う悲しみを考えている。
「アメリー。
見えない何かじゃなくて、俺を信用してくれないかな。俺は絶対に君を裏切らないから・・・
ね、 」
細くて華奢な手を取り、口づけを落としながら、まだ呼べない『君』の名前を小さくつぶやいた。