国王夫妻
「アルメリアちゃん久しぶり。ほんといつ見てもかわいい!!」
ギューギューと抱きしめてくる王妃様、胸が大きくて苦しいです・・・
見れば見るほど、レンは王妃様に似ていると思う。
髪の色も目の色も、漂う雰囲気も。
でもレンの瞳の色の方が澄んでいて綺麗と感じるのは、やっぱり好きな色なのだろう。
「母上、アルメリア様が困っていらっしゃいますよ。そろそろお放しになってください」
柔らかな物腰で、そっと王妃殿下を私から放してくれる。
エリシオン・ルノア殿下。
笑顔が素敵な一つ年下のレンの弟。
血のつながった兄弟でも、エリシオン殿下は国王陛下によく似ている。
レンより男らしい肉付きと骨格に、茶色がかった金髪、赤く燃えるルビーのような瞳が印象的だ。
昔から兄の治めるこの国を支えるのが自分の役目だと笑顔で言い、文武両道で体を鍛えることを趣味としているエリシオン殿下。
お兄ちゃんが大好きなのだ。
ファーレン殿下は王道ルートの王子様。
俺様キャラ設定のツンデレでたまに見せる甘いところが乙女心を擽ると不動の1位。
でも、私の知っているレンとは違う。
甘えん坊ですぐ嫉妬するし、私が困っていることを楽しむかのように甘いことを囁いて反応を楽しんでいるところはドSだ!と思うけど、私に徹底的に優しい。
本気で嫌がることは絶対しない。
う~んキャラ変?それともこれから俺様キャラになるのか?
ファーレンルートもやっておけばよかったのかな?
乙女ゲームの内容に思いを馳せる私の目の前では親子の攻防が続いていた。
「だってシオンちゃん、アルメリアちゃんこんなに可愛いのよ。お母様だって女の子が欲しかったの~。女の子って柔らかいのよ~、かわいいのよ~、小さくてぎゅーってしたいの~!!」
「/// 母上、兄上に嫌われますよ」
母の問題発言に顔を赤くしながらも冷静な対応は流石だ。
「ん~~~ ファー君、心が狭いからこれで我慢する」
私の腕に手を絡め、これなら怒られないもんと言う王妃様は、30代半ば過ぎでもうすぐ成人する子の母親とは思えないほど、若々しくてかわいらしい。
『天真爛漫』その言葉のままが歩いているような方だが、国の有事では美しい女神のような物静かな微笑みを浮かべ、王妃としての仕事をしっかりされるのだから凄い。
っていうか、実の母に心が狭いとか言われているレンって・・・
「母上、アルメリアを困らせておりませんか」
「すまないね、ユーフォニアがどうしても会いたがったので無理を言って」
国王陛下に帰城のあいさつに行っていたレンが陛下と一緒に部屋に入ってくる。
王妃様が手にぶら下がっているので、しっかりとしたカーテシーはできないが、ひざを折り挨拶をする。
「国王陛下、ご機嫌麗しく。お声掛けていただき嬉しいです」
「うむ、堅苦しいのはお終いだ。で、アルメリア元気だったか。」
「はい、陛下。学園も楽しく通学しております」
「それは良かった。で、ユーフォニア、そろそろアルメリアから離れてあげてもいいんじゃないかな。ファーレンが怖い顔で睨んでいるぞ」
「もうファー君!男の嫉妬は醜いものですよ」
レンにベーっと舌を出すと渋々私の手を離し陛下の横に並び、自然に腕に手を絡める。
定位置と言わんばかりにぴったりのお二人だ。
ゆったりと会話をしながら家族の食卓に案内される。
王城と言っても、家族との会話を大事にしている国王家族は、普通の家族の⒌倍程度のテーブルで食事をする。そう⒌倍。
アニメの中の長~~~~~~いテーブルというわけでなく、程よい距離の取られた食卓だ。
おいしい食事をいただき、近況を報告しながら穏やかな食事は進む。
「もうすぐ、花祭りですね。アルメリアちゃんの花の妖精のご衣裳は私とフェレノア様でご用意させてくださいね。今年もファー君と対になるようにデザインしましたのよ。今年は成人前の最後の花祭りですから、着飾らせるのが楽しみですわ。来年は成人として参加、花の精霊ですものね。ふふ、そちらも楽しみですわ」
王妃様の言葉を最後まで聞き取ることが難しかった。
胸が苦しい、息が出来ない。
ぐるぐる世界が回る。
レンの声がする。
急に視界に霞がかかり、意識を手放す瞬間、無意識にレンに手を伸ばす。
花祭り。
ルノア王国の大切な国祭。
でも私にとってはレンとお別れするお祭り。
花祭りでレンはヒロインと運命の出会いをし、運命の恋に落ちる・・・
やだな。
いやだな。
涙が流れる感触がした。
助けて・・・ ・・・