嫉妬は心が狭い物です
じーっと私がメアリアン様とジュローム様を見つめていたのが気に入らなかったのか、ちょっとふてくされたような表情で、レンが私の残りのマカロンを口に頬張り、二人掛けのソファーに座る私の腰をそっと引き寄せ、くっついてくる。
このソファー二人掛けで広いんですがね・・・恨めしそうに睨む私にふてくされていた顔がちょっぴり笑顔になった。
そんな私たちの様子を見ていたジュローム様がため息をつきながら、メアリアン様の紅茶をあたりまえのように飲んでレンに厳しい目を向ける。
「心が狭いと嫌われますよ、殿下」
「ジュローム、お前には言われたくない」
仲のよいお二人を微笑ましく思いながら『あれっ?』と思う。
なんでお二人は、当たり前のように私たちのお茶やお菓子を召し上がっていらっしゃるのでしょう?
私は小首をかしげ(?)という表情をすると、まぁ、かわいいと微笑むメアリアン様。
ジュローム様に見るなと怒っているレン・・・
何を見てはいけないのでしょうとキョロキョロする私に、「おまえはいいの」と腰を抱かれてドキドキしてしまったことは内緒。
「あ、アメリーは今日の帰りは俺と一緒に城に帰るからな」
「え!?なんで!」
城に帰るとは?何かあったのかしら?
確かにお城には私の部屋がある。
今までお城で勉学を教わったり、パーティーに出ることがあったので、その時用にと国王様が用意してくださったお部屋だ。
とってもかわいくて、私好みのお部屋・・・だけど、学園に入る準備をするようになってからは、お城に上がることも少なくなり使われなくなった。
お父様にも、お城に行くことが少なくなるから使わなくてよいと言われている。
それに私の部屋、レンの部屋の隣なんだよね・・・今考えると婚約者用だったのだろう。
それに気づくとそこを使うのは恥ずかしい。
顔を赤くしている私に、軽く「どうした~」なんてのぞき込んでくるレンは、分かっているよね。レンだもの。
でも、
「お誘いは嬉しいですが、屋敷に帰らないとお父様と兄様たちが、確実に乗り込んでくると思いますわよ。あ、たぶんルイも一緒に来るでしょうね」
にっこり微笑むと、レンは心底イヤそうな表情でため息をつく。
「だろうな、確実に乗り込んでくるね。今回は、母上がたまには『アメリーの顔が見たい』と朝から駄々を捏ねてな。父上がカサヴァーノ公爵に話をしてくださっているはずだから、大丈夫。夕食を一緒にと思ってる。もちろん食後に俺が責任をもってお送りするよ」
「そうゆうことでしたら、喜んで」
にっこり微笑むと、また面白くなさそうにふてくされているのはなぜでしょう?
メアリアン様とジュローム様に別れを告げ、王室専用の馬車にエスコートされる。
我が家の馬車も素敵ですが、王室専用は白を基調とし、所々に金の装飾が入った全てが洗練されたデザインで素晴らしい。
また車輪の作りが違うのか揺れがとても少なく、クッションも超一級品で座り心地がとてもいい。
そんな素敵な広い馬車の中、なぜレンは私の隣に座るのでしょう?
馬車が走り出すと、私の両脇に手を入れ、すっと持ち上げ自分の膝の上に降ろす・・・これは抱っこですか!?
「レン!重いので降ろしてください」
「ダメ。俺以外の男性を見つめていた罰。それにアメリーは全然重くないし、反対にもっと増やしなよ。やせすぎで心配だから」
ぎゅーっと抱きしめてくるレンにため息が出る。
ジュローム様相手に嫉妬ですか。
あんなにメアリアン様、大好き大好きな方に嫉妬なんてありえないでしょ。
でも私も、サロンでの周りのご令嬢たちの、レンを見る目にちょっぴり焼きもちを焼いていたので、抱きしめてくるレンに『しょうがないな~』なんて言いながら、抱きしめ返す。
この腕の中が、いつまでも私だけの物でありますようにと祈りを込めながら。