閑話 懐かしい夢に出て来るのは
深く、深く沈んでいくような感覚。
あ~
これは夢だ。
懐かしい、懐かしい、生まれる前の夢・・・
私の前世。
見るのは久しぶりだな~
小さい頃は月に1回くらい見ていて、成長するうちに1年に1回くらい見るようになり、間隔があいていき、この頃は見なくなっていた。
色々な夢があるけれど、これは先輩が出て来る夢だ。
憧れていた1歳年上の先輩。
受付の私に毎日声をかけてくれて、一緒に立っていた同僚に絶対に気があるなんて言われて喜んで、何度か一緒に帰った。
先輩の話は面白くて、楽しくて、一緒にいられるのがとても嬉しかった。
あの日は何度目かのご飯を食べる約束をして、先輩の仕事が終わるのを待っていた。
エレベーターから降りて私を見つけて足早に来る先輩のことを見て、あ~好きだな~って思った。
今日こそ告白しよう!と決めて、あのバスに乗った。
前世の私の最期の日。
バスの揺れによろめく私の手を握ってくれて、耳が赤くなっている先輩と顔が赤くなっていたであろう私。
ぎゅっと握りあえた手が嬉しかった。
幸せだと感じた時に耳を塞ぎたくなるような大きな音と衝撃、そして意識が無くなる瞬間、逞しい腕に抱きしめられ、初めて名前を呼んでもらったような気がした。
『莉愛』
と・・・
先輩は無事だったかな・・・
無事であってほしい。
大好きだった、 せんぱ・・・