好き・・・そう言えるようになりたい
やっと涙が止まった私だが、なぜだかを抱きしめるように腰に回されたレンの手は私を放してくれず気づいたらいつの間にか膝の上に横座りするように乗っていた。
これって抱っこなのでは!?
恥ずかしくてアワアワ慌てる私にちょっぴり意地の悪い笑みを浮かべたレン。
「あ、あ、あの・・・そろそろ降ろしてほしいな~と」
「え~、もう少し」
私のシルバーブロンドの髪をひと房手に取ると優しく口づける。
うわ~キザな王子。
でも、流れるような仕草と高貴な気品は、何をやっても絵になる・・・さすが人気の絵師のキャラデザだと、再認識してしまう。
そして改めて乙女ゲームなんだな~なんて思ってしまった。
でもそんな私自分自身もその人気絵師の世界の一員ということは、きれいさっぱり忘れていたのだけど。
これは何を言っても離してくれないなぁと諦めた私が、甘えるように無意識に胸に擦り寄る。
そんな私の無意識の行動に、嬉しそうなレンが髪を撫でながら優しい声で聞いてくる。
「で、婚約したこと忘れてたのか?!」
「うん。5歳の事故前の記憶が所々無いというか、あやふやなこともあるというか、よくわからないことが多くて、婚約していたことも覚えていなかったの」
「そうか」
「だから入学式典後のお茶会で王太子妃教育を私しか受けていないとか、未来の王太子妃だとか婚約者だとか聞いて驚いて、ウタやマイヤーに教えてもらったけど、よくわからなくなってしまって・・・本当に私だけなの?」
レンはうなずくとぽつりぽつりと話してくれた。
婚約者は私だけで候補者もいないということ、でも婚約者のことを秘密にしていること(私の身に危険が及ぶことが無いように)、だから周りでそんな話が出ないこと、王太子妃教育も私だけで今まで一緒に受けてきたものがそうだということ。
そして、蕩けるような表情で照れくさそうに私を見つめた。
「好きなんだ」
「!///」
「一目見た時、君が『キミ』だって奇跡に感謝した。そばにいられることが幸せだった。一緒に過ごせることが嬉しかった。どんどん綺麗になっていくアルメリアに、もっともっと恋をした。婚約者だからじゃない、アルメリアだから」
「・・・レン」
「好きだよ、アルメリア。俺と結婚してください」
そっと私の左手を取り薬指に優しくキスを落とす。
「私でいいの?」
「もちろん。アルメリアじゃなきゃイヤだ」
「もっと素敵な運命の人が現れる!(現れるんだけど)かもしれないよ?」
「アルメリアより素敵な人なんていないよ」
「裏切られたら、たぶん私死んじゃうよ」
「それは困る。でも裏切ることなんてありえない」
「好きになっていいの?」
「うん、好きになって、俺だけを見てて・・・。 」
最後、小さくて何て呼ばれたか聞こえなかったけど、ぽろっと止まったはずの涙が一つこぼれた。
泣き虫だな~と言いながら、とても幸せそうな笑顔でやさしく涙を拭ってくれるレン。
『私もあなたが好き』
・・・そう言えるようになれるといいなと思いながら。