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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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傷つけるのはたとえ自分でも嫌なんです

しばらく涙が止まらず、アメリーに抱きついていっぱい泣いてしまった。


不覚・・・




泣き腫らして目も目元もまっ赤になっていて、『泣きました』って言う顔をしていると思う。


うー、カッコ悪い。


恥ずかしくて俯く僕だったが、そっと目の前のアメリーの様子を伺うと、アメリーは優しく愛しむような優しい微笑みで見つめてくれていた。

それは、思い出の中の彼女と同じ微笑みで胸が高鳴る。


(あぁ、やっぱりアメリーの中に莉愛はいるんだね)


懐かしくて嬉しくて、でも僕の中の彼が寂しそうにしているのが分かる。

だってやっぱり僕が彼と違うように、アメリーも彼女とは違うと分かるから。

こちらで生きてきたファーレンと前世の彼とは、同じ魂だとしてもやっぱり違うのだ。


ふっと違和感を感じて周りを見渡す。

あれ?神様たちがいつの間にか消えている。

アメリーと一緒に僕を抱きしめていたはずなのに、いつの間にか姿が見えなくなっていた。


(まだ明るいのに、どうしていなくなっちゃったの?)


いないことに不安を感じて何度も辺りを見渡してしまう。

そんな不穏な行動をする僕にアメリーは不思議そうな表情をする。


「レン、どうかされましたか?」


「あ、いや何でもないよ!」


しまった。

アメリーには神様が見えていないことを失念していた。

泣いて気が緩んでしまったようで、彼らを探してしまいフィーミア様の思う壺だと反省する。

でも、そばにいてくれないことにこんなにも不安を感じるなんて・・・


前世むかしの夢を見て心が弱っている証拠と、両手で両頬を何度も叩き自分に喝を入れる。


「や、やめてください。レン!!痛いですよ!」


さっきまで泣いていたのに、急に自分の顔をバンバン叩きだした僕にアメリーは驚き慌て、止めようとするのに僕が止めないのを見てとうとう泣き出してしまった。

泣き出したアメリーに僕の方が驚いてしまう。

僕がおかしくなったか、それとも悪い何かに取り憑かれたかと思ったのだろうか?!

ポロポロ涙を流し、ジンに助けを求めて泣きじゃくる。


「ジンさん!!レンを止めてください!!」


『お願い、お願い』と言って泣くアメリーに、今度は僕が慌てる番だった。


「大丈夫だから、アメリー怖がらせてごめん。ね、平気だよ」


必死に宥めるが涙は止まらず、声をあげて泣かせてしまう。


「あー、かわいそうに。姫様、怖い思いをしたね」


ふわっと横から攫われるようにジンがアメリーを抱き上げ、僕と距離を置くように離れる。


「なっ!ジン、アメリーを離せ!!」


僕以外の人に捕らわれてしまうことが気に入らない!

僕のアメリーに何をするんだ!!


「まったく、泣かせたの殿下でしょう。姫様泣かせてどうすんのさ。ほんとに怖い殿下ですね、ちょっと離れましょうね」


なんか楽しそうだ。

確かに僕が泣かせたのだから、そう言われたら何も言えない。


「ぐっー!」


言葉を飲み込み睨みつけると『あ〜こわこわ』と言いながら、ギュッとアメリー抱きしめる。

何抱きしめてんの!眉が上がり怒りが収まらない。

流石にこれはジンに一括しようと声を荒げる。


「ジン、いい加減に・・・」


「ジンさん、レンを怒らせてはダメです!また変になったら、私もっと泣きますよ」


「えー!姫様脅し!?」


わざとらしくやれやれなんて言いニヤニヤ笑いながらジンはアメリーを床に下ろす。

下ろされたアメリーは涙目で不安そうに僕をじっと見つめる。


「別になんともないから安心して」


苦笑いを浮かべるしかなかったが、そんな僕の笑いに、


「よかった〜」


と、へにゃという言葉が聞こえてきそうな安心した声で笑ってくれた。


もう降参するしかない。

恥ずかしいけど渋々僕は本当のことを話し出す。


「ごめんね、アメリー。なんかあんなに君の前で泣いたのが恥ずかしくて情けなくて、喝を入れるために頬を叩いたんだ。なので決しておかしくなったわけじゃないからね」


「えっ?そんなこと思ってませんよ」


「えっ??」


じゃあ、なんで泣いたの?

目を丸くして不思議そうにアメリーを見てしまったのだろう。

アメリーもちょっと恥ずかしそうに、


「たとえご自身が傷つけるのであっても、レンが痛い思いをするのも、怪我をするのも嫌だったんです。それが怖くて泣いちゃいました。ごめんなさい」


『でも、本当に嫌なんですからね』と念を押すように、僕の目を真っ直ぐに見て言ってくれた。


ジンに後から結局惚気かよと呆れられたが、僕たちらしいと思いアメリーの右手を左手で握り、額をコツンと優しくつける。


「うん。気をつけるね」


「はい」


そして空いているほうの小指を絡めてゆびきりげんまんの約束をした。


「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった」


お互いを見つめてにっこり笑い合う。

僕らにとって当たり前の約束。


でも気づくべきだったんだ。

この世界にこんな約束がなかったということに。


そうすればもっと早くに、アメリーも前世の記憶を思い出しているってことに、気づくことができたかもしれない。

かもね。

でも、この時もそうだがそれから先ずっと、僕たちにとって当たり前の約束だったからこそ、気づくことは出来なかったんだろう。


さて、消えた神様ズは僕たち二人の仲睦まじさに2人っきりにさせてあげようと、遠慮してくれたそうだ。


『気を利かせたのに、そんな美味しいことになっていたなら、すんごく見たかった!!』


と、フィーミア様は大変残念がって、悔し泣きをしていた。


うん。

本当にいなくてよかった・・・

僕はホッと胸を撫で下ろしたが、それからしばらくまた神様のイタズラが続いてしまい、自業自得とはいえため息が止まらなくなるのだった。






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