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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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金の光と銀の光

遅くなってしまいすいませんでした。

前話アルメリア視点のファーレン版です。

リヤトが向かっているのは多分あそこだ。

だから、大丈夫。


僕はリヤトが見えなくなった方をもう一度だけ見ると、リヤトを追いかけていた方角とは別の方向に走り出す。


(僕にできること。ちゃんと用意をしないと!)


その後、僕を慌てて追いかけてきたランバートと合流をしてから、頼んでおいたものを取りに馴染みの店に寄り、アメリーが待つ丘に向かって走りだしたのだった。




目的の場所に着くと場所も場所だしここには賊が入り込みづらいことを話して何とか頼み込み、ランバートには護衛として離れられるギリギリの距離で待っていてもらうことをお願いする。

ランバートは『まぁ、流石にここには限られた人しか入れませんし、ジンくんとリヤトさんもいらっしゃいますからいいでしょう』と言ってくれたので、僕は一人で二人がいるであろうこの先へ進む。



思っていた通り、二人はそこにいた。

カサヴァーノ家の敷地内にある小高い丘に。


城下を見下ろすように寝転んだリヤトの膝にちょこんとアメリーが座り、二人は話をしながら街並みを見ている。

後ろから近づく僕には気づいていないようだ・・・アメリーはね。

リヤトは僕が来たことに絶対気づいているはずだから。


ちょこんと座っている小動物のようなアメリーは、なんて可愛いんだろう!

でも、なんでリヤトの膝に座っているのかな!!

モヤモヤが止まらない・・・

それに、リヤトは僕がいることに絶対に気づいているはずなのに、わざとアメリーを離さないでいるようにしか見えない。

うん、わざとだな。


そっと近づくと、2人の話し声が耳に入って来た。


「そっか。幼馴染か」


「・・・はい」


僕との関係について話しているのだろう。

そして今の会話を聞き、僕はアメリーにとってまだ幼馴染のままだったんだと、彼女の口から言われてしまいかなりショックを受けた。


(そうか。僕はまだ幼馴染なんだ・・・)


僕はこんなにも君のことが大切なのに。


「早くお互いの思いが届くといいな」


僕の気持ちを知っているリヤトからの僕への応援のつもりかな・・・

でも、お互いって?

小骨が喉に刺さったように胸に疑問が残るが、次に続いた言葉に全てを忘れてしまう。

だって、


「まぁ、今回のは殿下が悪いですね。デートしているときに他の女の子を見て話をしていたんだからね。姫様泣かないで怒ればいいんですよ。『この浮気者!!』ってね」


待って!

今なんて言った!?!


「僕は浮気なんてしてないから!!」


浮気なんてするわけない!

そもそも浮気なんか出来るわけがない。

大好きで誰よりも大切で、一生そばにいたくて、何なら死んでも離したくないほどいとしすぎて、心の底から欲しいと思う人はアルメリアただ一人だけなのだから。


すぐにでも否定しなければと叫んだ僕の大きな声に驚いたアメリーが振り返る。

でもその瞳には涙の後が見られ、僕は胸が鷲掴みされるくらいの衝撃を感じた。


なんで、なんでそんなに泣いてたの?!

そんなに目が赤くなって瞼が腫れるくらい、泣いていたの?

目尻も擦ったのか赤くなってしまっている。

僕が、僕が泣かせてしまったの?

ほんとに浮気されたと思ったの?!


全く心当たりがない・・・

が、さっきリヤトはまるで僕に聞かせるように、何と言っていた?



『デートしているときに他の女の子を見て話をしていたんだから』



思考と動きが停止し、固まったように動けなくなってしまう。

まさか僕の浮気疑惑って、さっきの道を聞かれたやつのことを言っているのか?!

あれは、迷子の子に道を教えただけだ。

た、確かにちょっと可愛いかなとは思ったけど、それにしばらく後ろ姿を見ていたけど・・・

決してアメリーより可愛いとか思ってないし・・・というか思えない。

決して何かやましい気持ちがあったわけではない!

なんなら可愛さなんて、アメリーと比べること自体が間違ってる。

僕のダントツ不動の一位はアメリーだけだ。


それにあの子はユウヤ殿下の大切な人だ!

僕が何かするわけない。


僕が珍しく顔色が変わり狼狽えていることに気づいたのだろう。

アメリーの表情がショックを受けたように悲しげに変わり、リヤトに抱きつき肩に顔を埋めこちらを向いてくれない。

吹き出しがあったら間違いなくガーンと言う言葉を背負っていたであろう僕は、激しくショックを受けて項垂れてしまう。


『殿下なんてもう知らない。浮気者〜』


「リ〜ヤ〜ト!!話がややこしくなるから、お前が言うな!!!」


そんな緊張した雰囲気を壊したのはリヤトが、アメリーを真似て言った言葉だった。


「アメリーの声はそんな野太くない!」


ちっ、バレたかなんて言って笑ってるリヤト。

アメリーもそんな雰囲気にそろそろと顔をあげてやっと僕を見てくれた。

泣いたことで少し霞がかったような金の瞳。

泣かせてしまって可哀想だったと思う自分と、僕のことを思って泣いたのかと思うと嬉しいと感じてしまう腹黒い自分がいる。

でも、僕のことを見てくれたことが嬉しくてそっと微笑む。


「アメリー、僕浮気なんてしないから」


「う、浮気なんて思ってません。それに、私には関係ないし・・・」


最後の方は小さな声で聞き取れなかったけど『関係ない』だけが、妙に頭に残ってしまいズキッと痛む胸を誤魔化すように苦笑する。

仕方ない。

彼女の中では僕はまだ『幼馴染み』なのだから。


「レン?」


僕の苦笑いを不思議そうに見るアメリー。

今はまだいい。

そう、今は・・・

この関係で十分幸せだから。



「さ〜てと、俺はここいらで裏方に戻るとします。ってことで、殿下。俺の大切なお姫様、よろしくお願いしますね」


リヤとは立ち上がりながら、膝に座らせていたアメリーを抱き上げると僕の前にゆっくり降ろす。


「『俺の』ってとこが気に入らないけど、姫はお預かりします」


もう泣かせない!と心に誓って。

にやっと笑うとリヤトは『姫様、またね!』と手を振ると、先ほどまでそこにいたのが嘘のようにサッと消えてしまった。


「ジンさんもですけど、どうやったらあんな風に消えることができるのでしょうね?!」


不思議ですわ!?と首を傾げ、何ででしょうねなんて微笑むアメリーを見て心から思う。

やっぱり君には泣き顔じゃなくて、僕の隣で笑っていて欲しいって。


そっとアメリーの右手を左手で捕まえるように掴むと力を入れて引っ張り、腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。


「レ、レ、レ、レン!!どうしたの?!?」


慌てふためき身を捩るアメリーに、気づかないふりをしてギュッと抱きしめた。

逃げられないと分かったのかアメリーもおとなしくなり、鳥の囀りが聞こえてきた。



「すごく・・・」


「えっ?」


「すごく、心配した。迷子の子に道を聞かれて教えて振り返えると、アメリーが消えていたから・・・」


本当に心配した、攫われたかと思った。

ギュッと腕の力が無意識に強くなり、その時感じた不安な気持ちと恐怖が思い出されてしまう。

アメリーがことんと僕の肩口に頬を寄せ、とてもとても小さい声で『ごめんなさい』と呟くと、そろそろと僕の背中に手を回して抱きしめ返してくれた。

その温かさに、僕の腕の中に取り戻せたことに、心から安堵したのだった。



しばらく腕の中の温もりを堪能していたが、アメリーが身を捩る動きに苦笑しそっと腕の力を緩めた。

真っ赤になって僕を見上げるアメリーの額にキスをする。


「もう、勝手にどこかに行かないでね」


と、お願いするとアメリーは益々赤くなり恥ずかしそうに頷いてくれた。

約束を取り付けたずるい僕は心の中で『一生ね』と呟いていたことはアメリーには内緒だ。


そんな中、大神殿の鐘楼が鳴り、花祭りのメインイベントを告げる。


「アメリー時間だよ」


僕の左手で彼女の右手を繋ぐと街並みの方に体を向け二人で並び立つ。


街中にこれから起きることを知らせるように鳴り響く鐘の音。

毎年ここで見てきた。

見られるのが今年で最後になってしまう、とても美しい風景。

鐘の音が止まり、辺りはシンとした静寂が包み込む。

すると、大神殿の壁の上に設けられている明かり取りの窓から金の光が溢れ、それを追いかけるように銀の光も流れるように溢れ出してくる。

光の登場に街中から拍手喝采が聞こえる。

溢れ出てきた光は地面を空を覆うように光り輝き、そしてゆっくりと街を煽っていく。


「きれい・・・」


ここは特等席といってもいい。

街中を覆う光、そして流れるようにこちらにもやってくる光を見ることができる。

ギュッと握る手に力が込められたことに気づいて、隣のアメリーを見つめる。


ここは今誰も来ないよね・・・

僕はそっと彼女の髪に触れ、込めてあった魔法の力を解放すると、そこには今溢れている光と同じ色彩の天使が僕を見て笑っていた。

風に靡く銀髪に金の瞳の僕だけの天使。


この丘にも金の光と銀の光がやってきて辺りは輝きを増していく。


「花祭りおめでとう、アメリー」


僕は光の中、毎年告げる祝いの言葉とともに恒例となっている3本の赤いチューリップを手渡す。


「ありがとう。レン、花まつりおめでとう」


アメリーは優しく微笑むと花のお礼に僕の頬にキスをしてくれる。

これも毎年恒例。


2人だけの花祭り。

嬉しくって、楽しくて、そしてとても幸せと感じられた、10歳の花祭りだった。




そして、光が収まり彼女をカサヴァーノ家に送って行く道すがら、浮気疑惑を必死に弁明する僕の話をくすくす笑って聞いてくれたアメリーの目には、もう涙はなかった。

右手は僕と手を繋ぎ、左手にはチューリップを持って笑うアメリーは、やっぱり可愛いかった。


そして、赤く腫れた瞼に彼女を溺愛する兄様たちから、しばらくネチネチと嫌味を言われるのだった。





3本の赤いチューリップの花言葉は『あなたを愛しています』。

決して言葉にはできない思いをファーレンは毎年花言葉としてアルメリアに送っていました。

アルメリアも花言葉を知っています。

でも(たまたまこれを選んだだけ)と思っていますが、告白されているようで嬉しくて仕方がなく、できるだけ長持ちさせようと昔から知らず知らずのうちに魔法を使い、このチューリップを2週間近く持たせているのはファーレンには内緒の話です。


ただ今20年ぶりに再熱してしまった某アニメ。

私の中の推しカプ(私の妄想)のようにファーレンとアルメリアがなってしまい実は先が中々書けませんでした。

溺愛、執着、腹黒、そして両片思い。

自分の萌え要素詰まっていたんだと、改めて感じました。

これで幼馴染み扱いか?と、アルメリアにツッコミを入れたいですが、あと5年ジレジレする2人なのです。


早めに続きを書きたいとは思っています。

いつもありがとうございます。

また読んでいただけたら嬉しいです。

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