金の光と銀の光(アルメリア視点)
今回もアルメリア視点になります。
走るリヤトさんの首にしがみつき、ぎゅっと目を瞑る。
今の私にはレンを見ることが怖くて出来ない・・・
しばらく走る揺れに身を任せていたが、ふっと体が揺れていないことに気付いてそっと目を開けてみる。
「ここは?!」
ここは慣れ親しんだ城下を見下ろす小高い丘の上だった。
カサヴァーノ邸の裏ということもあり、人はいない。
毎年ここから花祭りの光溢れる神殿を二人で見るのが約束になっている。
多分、今年で最後になってしまうのだろうけど・・・
レンは来年から神殿内で式典に参加をするようになるだろう。
王太子として。
私は、ただの幼馴染。
王族でもない私は神殿内には入ることが出来ないだろう。
(来年は、ここから一人で見るのかな・・・)
分かっていた。
私は彼にとってのただの幼馴染、いやそれ以下かもしれない。
だって、私はこの世界ではファーレン殿下のモブの従妹なのだから。
こんなに一緒に居られただけでも、幸せだったのかもしれない。
今回のことでよくわかった。
彼にはヒロインがいるのだ。
まだ出会うことはないはずだけど、私というイレギュラーな存在のせいで出会いが早まってしまったのだろうか?
それともただ関係ない通りすがりの街の人?
どんどん沈んでいく思考に捕らわれ、涙が浮かんでくる。
抱きかかえてくれていたリヤトさんがそっと私を地面に降ろしてくれた。
「姫様、色々考えすぎてるでしょう。顔が百面相してますよ」
そういって、知らず知らずのうちに寄せていた眉間のしわを伸ばすようの優しく撫でてから頭を優しく撫でてくれる。
昔からあまり私たちの前に出てきてくれない彼だったが、とっても優しい人だと知っている。
悲しい時、泣いているとき、困っているときにそっと手を差し伸べてくれる人だった。
でも・・・
「なんで、リヤトさんがいらっしゃるのですか?」
「ふふふ、なんでだろうね!」
優しく笑うこの人もこの世界で十分に攻略対象になりうる美形である。
ほんと、私のまわりって美形ぞろいで眼福よね。
「姫様が思っているような悲しいことは絶対にないけど、自分の大切な女を不安にさせている殿下には、男としてちょっと制裁が必要だったからね。屋根とか飛んで走ってきたけど、怖くなかったですか?」
「えぇ、それは大丈夫でしたが・・・『大切な女』ってなんですか? やっぱりさっきのハニーピンクの髪の子はレンの大切な方なのでしょうか・・・」
尻つぼみに声が小さくなり青ざめていく私の顔を、びっくりしたような表情で見ていたㇼヤトさんは、我慢できないといった表情でお腹を抱えて笑いだしてしまった。
「ちょ、ちょっとまってね。ひひひひ、ひー。死ぬ!もうダメ、姫様分からな過ぎっていうか、マジ天然にもほどが・・・ぶ、ははははは!!ジンがよく言っているけど、ほんと姫様といい殿下といい、ボケボケ過ぎてて似た者同士で、笑いが止まらねぇ!!」
大爆笑しているㇼヤトさんに私は???の表情しかできない。
私は至極真面目なのに、なにが天然なんでしょう?ボケボケとは???
ぶすっとした表情の私と涙まで流して笑っているㇼヤトさん。
しばらく彼の笑いが止まらなかったけど、やっと落ち着いて地面に足を投げ出して座ってしまう。
「はぁ!笑い過ぎて疲れた。姫様も一緒に座ったら」
ちょいちょいと手招きされたので横に座ろうとすると、『服が汚れるから』と膝に抱っこしてくれた。
「私ももう10歳なので、抱っこは恥ずかしいです!」
「ん!?もう10歳か早いな~。でも服汚れると侍女さんに悪いから我慢ね。それに誰もいないから平気だって」
気にしない気にしない、なんて言われてしまうと、確かに服が汚れたらウタに怒られてしまうし・・・まぁいいかと思ってしまう。
『じゃあ遠慮なく』と言ってちょこんとㇼヤトさんの膝に座らせてもらうことにした。
「でさぁ、姫様って殿下のことどう見てんの?!」
「と言いますと?」
「ん~、従妹?幼馴染?それとも彼氏?」
「か、か、彼氏???!」
「そうかそうか、彼氏か」
「そんなわけないでしょう!!!驚いて口走ってしまっただけです。レンは私の・・・幼馴染ですわ!!!」
自分で言って悲しくなってくる。
そう。
どうしたってレンは私の幼馴染であってそれ以上でもそれ以下でもない。
シュンとしてしまう私の頭を優しく撫でるㇼヤトさんに目を向けると、とっても優しい顔をしていた。
「そっか。幼馴染か」
「・・・はい」
「早くお互いの思いが届くといいな」
(思いって??)
先程からㇼヤトさんが言っていることがよく分からない。
「まぁ、今回のは殿下が悪いですね。デートしているときに他の女の子を見て話をしていたんだからね。姫様泣かないで怒ればいいんですよ。『この浮気者!!』ってね」
「僕は浮気なんてしてないから!!」
急に背後から声がしてビックリしてそちらを見てしまう。
だってこの声は!
「レン!」
ぶすっとした表情で、怒ったような焦ったようなそんな顔の真っ赤になったレンがそこには立っていたのだった。
浮気者!?言わせてみたいですね。
しかしアルメリア命のド執着の塊のようなファーレンが浮気をするようなことは絶対にありえないのですが、まだアルメリアにはその片鱗を見せていないので気づかれていません。
疑われてかわいそうなレン様です。
実際浮気は絶対に許しません!
お互いが一途が、やっぱりいいですね。
誤字の報告ありがとうございます。
やらかしてばかりですいません。
タイピングミスが多く職場でも早くてもミスはダメよと・・・
気を付けます。
感想など頂けると励みになります。
これからも読んでいただけると嬉しいです。
感謝しています!!