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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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まさか昔の自分を見るとは思ってもいなかった


前世まえの記憶が戻ってから5年がたち、僕らは10歳になった。


アメリーとの関係は特に進展はないものの、お互いの家を行き来しながら一緒に勉学に励み、仲を深めていけていると僕は思っている。

時たまアメリーが僕と一線を引くような様子を見せる時もあるけれど、そんな時は悲しい顔を作って情に弱いアメリーの心情に訴えながら、逃げないよう(逃すわけないけど)大切に大切に接してきた。

そう、穏やかに過ごせている はずだ。


ただ一つ、大きな問題として僕の魔力量が戻らないことを除いては・・・




「殿下、魔法を手のひら集めるように、殿下と1番適性の高い炎をイメージして下さい。そうです。意識を集中思いを込めて!」


目を瞑り両手を広げ、その手のひらに炎の球をイメージする。

魔法はイメージ。


なのだが・・・


今の僕の魔力量ではチロチロとした小さな火が手のひらで燃えるのが精一杯だった。


あの時、記憶を思い出すのとアメリーを助けることに、僕は全ての魔力量を使ってしまったようで、そのまま5年間全く戻る気配はない。

移動魔法を学んでもいない子どもが、自力で編み出したトンデモ魔法を使えた神童は、あれから全く魔法が使えなくなくなってしまったのだった。


しかし守りの結界だけは王族長子として父上と同じくらいなら無意識に使えることができているらしいが、発動が無自覚なので使い方がわからない。

今はそれを思い通りに使えるよう訓練を行なっている。

魔力測定器を壊した当時の僕になら、国土全部を覆える守りの結界をはれるほどの魔力があったみたいだが、ないものは仕方がない。


「ファーレンは守りじゃなくて護りだから、俺とは違うんだけどなぁ」


と、父上が苦笑いする。

『守り』と『護り』は違うらしい。

どちらも理論や学びで会得するものではなく、感覚として感じるものらしいが僕にはまだわからない。

自分の意思で護れる範囲は、まだたったの大人の手の握り拳くらいだけど、どんなに魔力が無かろうともアメリー一人分は護れるようになりたい。

そのための努力は惜しまないつもりだ。


アメリーのために頑張る僕を見て、


「ほんと、ルノアの王族って分かりやすいわよね」


母上は『まだ子どもなのに愛が重すぎ』と苦笑し、弟のエリシオンはまだただ一人の人に会えてないため『僕にはその気持ちが分からず残念です』と言われている。

エリシオンも出会ってしまったら、ルノアの王族の呪いともいうべき執着から逃れることはできないだろう。

そして出会えることを心から願っている。



「さぁ。今日の訓練はこれくらいにして、5日後には花祭りが始まりますわ。準備を始めましょう!」


そう。

ルノア国で1番大きなお祭りである花祭りが5日後に始まる。

ルノアの貴族や他国の王族方が次々と来国し、王城や迎賓館では出迎えのレセプションが執り行われるなどルノアはとても賑やかになる。

僕も王太子として参加している。

本来ならアメリーも王太子の婚約者として参加しないといけないのだろうが、アメリーの身の安全を第一にしている僕がそれを許すはずがなかったので、アメリーは一度も参加したことがない。


「アメリー元気かな?会いたいなぁ〜」


大切なアメリーを思い浮かべてぽつりと呟くと、そばにいたランバートに、


「昨日お会いしたばかりでしょう。ちゃんとやるべきことをしないと、アルメリア様に愛想を尽かされてしまいますよ」


と、呆れ顔で言われてしまう。


「分かってるからやってるだろう」


と口を尖らせると優しい瞳で見つめられ、頑張りましょうねと頭を撫でられた。

頭を撫でる子ども扱いをするランバートを不満そうに僕は睨むが、その手を振り払えない。

なぜならランバートや周りの人たちは、僕が笑ったり年相応の対応をすると嬉しそうにしてくれるからだ。

今までがどれだけ子どもらしくない子どもだったのか、どれだけ心配をかけていたのか。

だから僕はそんな子ども扱いをするみんなの手を振り払えることができないのだった。




花祭りまであと3日。

父上と宰相閣下とともに僕は東国の要人の出迎えをするため、王城の入り口に立つ。

今日は近隣国の王族が来国される日で、東国からは第三王子が初めて来国される。

彼は僕と同い歳らしく、名前はユウヤ・ダイレン。

東国の王太子はしっかりとした体格の武人という言葉が合う方だが、ユウヤ殿下は優しい雰囲気の将来は文官になられる予定の美しい子どもだと聞いている。

会うのが楽しみだ。


と、思っていた僕だったが馬車から降りるユウヤ殿下を見た瞬間、あまりのことに衝撃を受けて言葉が出ず目が離せなくなってしまったのだった。


(な、な、な、なんで?!ぼくがいるんだ?!)


光に透けると茶色く見える髪、胡桃色の瞳。

顔の作りは忘れもしない、子どもの頃の前世まえの自分が目の前にいたのだった。


「あの・・・僕、なんか変ですか?」


「へ? あ、あの、な、な なんでも、 無いです。大変失礼致しました」


僕は大慌てで目の前で戸惑いを見せるユウヤ殿下に謝る。

が、目が離せない。

似ている。

というか、そのままなのではないか?!?!


侍女長が花祭り期間中滞在される部屋に案内をし、城に入っていく後ろ姿を見つめる。

こんなことってあるのだろうか?


あまりにも対応がおかしい僕に父上がそっと声をかけてくれたが、動揺していた僕はきちんとした受け答えができたか自信がなかった。





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