僕の笑顔は恐怖絵図?!
城に戻ってからも、毎日アメリーの体調伺いと称しカサヴァーノ家に行こうとしたが、1ヶ月以上城を不在にしていた分のノルマが溜まっていて、3日に1度行ければいい方だった。
でも、行かれなくても花やお菓子を用意してもらい、僕の代わりに体調伺いに行ってもらっていた。
僕がいないところでアメリーに何かあったら、多分僕は正気ではいられないだろうから。
城に戻って5日目。
アメリーが落馬する前に頼んであった物が出来上がったと知らせが入る。
事故ですっかり忘れていたが、アメリーの誕生日のプレゼントにと思って作ったんだっけ。
僕が使える客間の方に案内して、頼んだものを確認する。
「ご依頼通りの色彩と殿下からのイメージでデザインいたしました。アルメリア様にピッタリだと思うのですが、いかがでしょうか?」
アメリーも御用達のデザイナーのドレスは、イメージ通りで、アメリーが着たらそれはそれは可愛いだろう。
思い浮かべると、自然と口角が上がる。
それにしても薄緑に黄色のドレスとは・・・
まだ無自覚だったくせに自分の色を纏わせたいだなんて、結構な独占欲に我ながらドン引きだわ。
「殿下。アルメリア様を思っての微笑みは大変美しいと思いますが、妄想で鼻の下伸ばさないで下さいね。まだ俺でも慣れてないのに、周りは驚きどうしたらいいか困っていますから」
ランバートが苦笑しながらツッコミを入れてくる。
ふと見ると、いつもお願いしているデザイナーなので顔見知りだが、僕の顔を見てこんなに驚いた表情をするのを初めて見た。
そんなに違うだろうか?
城に戻ってから僕が表情豊かになったことで、周りが戸惑いメイドたちが悲鳴をあげていることは知っていた。
見慣れないものを見て怯えているのか?
「でもいいだろ。表情ないよりも感情が豊かになって。前よりずっと王子らしくなっただろう」
「そうなんですがね。若いメイドたちには目の毒というか、要らぬ話題で盛り上がっているというか」
「?」
僕が笑うようになったことは良いことなのだろうが、見慣れない人たちにとっては、恐怖絵図といったところなのか?
「母上に似ている僕の顔の作りは、決して悪くないと思うんだけどなぁ?」
「だからこそですよ。ほんと殿下や王妃様は人タラシと言いますか、なんと言いますか・・・」
盛大なため息をつかれてしまった。
ランバートの言いたいことは分からなかったが、手の中のドレスを着たアメリーを思い浮かべるだけで、自然と笑顔になってしまうのだから仕方がない。
ドレスは誕生日プレゼントに用意したものだったけど、今は誕生日よりもアメリーの回復のお祝いに贈ろうと決めた。
侍医の話ではそろそろベットから出る許可を出す予定だと言っていたので、その時に着て欲しいと思う。
しかし残念ながら、今日もアメリーのところには行けそうもない。
ランバートに今日のお見舞いの花束と一緒に、ベットから出られるようになった日に着て欲しいとドレスも一緒に持って行ってもらった。
アメリーが目覚めて明日で2週間になる。
そろそろゆっくりでいいから、一緒に散歩など出来るといいなぁと、この服を着たアメリーと庭を歩く日を楽しみにするのだった。
と、思っていた2日後にアメリーが起きる許可が出たと言われ、僕は大慌てでその日のノルマを終え、アメリーの元に向かうのだった。




