君の夢と違和感
『私、小さい頃から憧れている夢があるんです』
テーブルの向かいでちょっとお酒に酔っている彼女が、微笑みながら教えてくれる。
『ふ〜ん。どんな夢?!』
『ふふふ、笑わないで下さいね。私の祖父母はしょっちゅうケンカして、お互い憎まれ口を言い合うような夫婦だったんです。でもいつの間にか仲直りをしていて、ケンカしてたことなんて忘れたように楽しそうに笑っていました。こういうのを仲が良いっていうんだろうなぁって思ってました』
彼女はそう言ってなんだか恥ずかしそうに笑いながら、目の前のグラスをちびちび飲みながら話を続ける。
『恥ずかしながら私の両親はあまり仲が良くなく、一緒にいるとこなんて覚えていないのに、仲が良い祖父母の姿だけは覚えているんです。大人になったら私もあぁなりたいなぁ〜って。そんなささやかな夢です』
祖父母との幸せな思い出でも思い出しているのだろう。
話す彼女は酔っ払って頬を染めながらとてもご機嫌だった。
彼女は酔っ払うといつもよりちょっぴり幼く見えるが、どこか艶っぽくていつも以上に俺はドキドキが止まらず、まっすぐ見つめることができなくなってしまう。
『素敵な夢だね』
ドキドキする心に気づかれないよう、平常心を装いながら目の前のグラスの中身を飲み干した。
『そう言ってもらえると嬉しいです』
顔が赤いのは酔っ払っているだけなんだろうか。
彼女に中々恋心を伝えられない俺の、願望がそう感じさせるのか?!
でも、
(願うなら、一生そばにいてその笑顔を見つめられるのが俺でありたい)
彼女の夢を叶えるのが、どうか俺でありますように。
そう願いながら、楽しそうに笑う莉愛に俺も笑いかけた。
ふっと目を開けると、見慣れない豪華なベットに俺は寝ていた。
見上げた天蓋には繊細な彫刻が彫られ、眠る寝具は大変肌触りが良く違和感を感じる。
あれ?俺はさっきまで莉愛と食事をしていたはずだったのに・・・
ノロノロと体を起こしぼーっと周りを見る。
スィートルームかと思わせるほど広い室内には、高そうな調度品と座り心地の良さそうな豪華なソファなどの家具が配置されている。
ここはどこだ?
夢と現実が曖昧になったような感じが、全身に纏わりつく。
そんな俺に側にいた人が不安そうに顔を覗き込み話しかけてきた。
「殿下、お目覚めになりましたか」
「・・・ラン バー ト?」
そう、彼は僕の護衛騎士のランバートだ。
・・・ランバート?!
パッと僕の脳裏に銀色の髪が風に揺れ、優しく微笑む金の瞳の少女が思い浮かぶ。
そう、彼女は僕の僕だけの大切な、
「!!アメリー! ランバート、アメリーは?!」
僕は飛び起きて、ランバートの服を掴んでアメリーの安否を確認する。
ランバートの服を握る自分の手が震えていることに気づく。
目覚めたアメリーを見たはずなのに、どこかいつもと違う雰囲気の彼女は僕の見間違えだったのではないだろうか?!
なんだか知っているようで知らないようで、僕を見る目がいつもと違って、漂う雰囲気に不安になり、あの子は本当に僕の、『僕のアルメリア』なの?!
なんとも言えない、漠然とした不安を感じていた。
私がこちらに書き始めて一年半がたちました。
不規則で忙しい中、続けて来れたのも読んでいただける皆様のおかげです。
読んで頂き本当にありがとうございます。
ちびっこの2人もいいのですが、大人な甘々の2人も書きたくなり一年半の記念日に短編を上げました。
シリーズから読みに行って頂けると嬉しいです。
ちびっこファーレンとアルメリアもやっと記憶を思い出しました。
これから、すれ違いになって行きますが、ファーレンはそれを許さないんだろうなぁ。
ヘタレだけど溺愛執着の塊なんで(笑)
両片思い、大好物です(笑)
これからもよろしくお願いします。




