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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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目覚め

父上の前でたくさん泣いたことで、気持ちがだいぶ落ち着くことができた。

まだ気づくと涙が勝手に溢れてしまうこともあるけど、それ以降涙が止まらずに泣き続けることは無くなった。

心が軽くなってスッキリしたように感じる。

本当は転生したことも話せたらもっと良いのに・・・と思ったが、それは言わないことにする。

こんなに愛してくれている人たちから、変な目で見られるのはやっぱり辛い。

自分の胸に秘めておこう。


だから、きっと大丈夫。


アメリーのベットの横に静かに座り、寝顔を見つめる。


莉愛きみ前世まえを覚えていなくても、今世いまのアルメリアをファーレンは心から大切に思っている。

莉愛と気づく前から、僕はアメリーのことが気になって仕方がなかったのだから。


ただ一人の大切な人。


だから、早く目を覚まして。


僕だけを見つめて欲しい。

僕に話しかけて欲しい。

僕だけに可愛い笑顔を向けて欲しい。

そして・・・


ファーレンのことを好きになって欲しい。


欲求はどんどん膨らんでいく一方だ。

そして、もう離してあげられない。


ごめんね、ごめんね。

好きになってごめんね。

でも、アメリーが後悔しないよう、いっぱい愛を伝えるから。

でも、言葉で伝えるのは恥ずかしいから態度で締めそう!


後に、この言葉にできなかったことですれ違うことが増えてしまい、アメリーを悲しませることになるなんて思ってもみなかった。



アメリーが眠りについてから7日目になる。

父上と母上は王城に戻り、僕とランバートはアメリーが目覚めるまでカサヴァーノ家に残った。

目覚めるまで待つ。

父上は仕方がない・・・と苦笑し、母上にはちゃんと眠って食べることを約束させられた。


あれからランバートやアメリー付きの侍女さんたちと交代でそばに着くようにしたことで、僕はきちんと眠り食事が取れるようになった。

今日はランバートがどうしても彼が行かないといけない急用が出来てしまい領地に戻っているため、ずっと僕がアメリーのそばについている。

普段は一緒にそばに居てくれる侍女さんがいるのだが、城から使いの者が来たということで、僕の代わりにそちらの対応をしてくれている。


僕も気持ちが落ち着いたことで、短い時間ならアメリーを一人に出来るようになってきている。

といっても、部屋続きにあるトイレに行く程度の短い時間だけなのだが。


今日も僕は短い時間アメリーから離れて、用を済ませて部屋に戻る。


扉を開け中に入った時、いつもアメリーを確認するのが癖になっているのだが、この日はいつもと違った。

部屋に入った僕の目にベットに起き上がって座り、じっと自分の手を見つめているアメリーが目に映ったのだ。



・・・・・・これは夢?!



驚きで固まって動けない僕の方に、ゆっくりアメリーの顔が動き、僕と目が合う。

久しぶりに見る僕の大好きな金の瞳。

ほんの数秒だったのだろうが、アメリーが僕を見てくれている喜びに僕の心は震え、何分にも長い時間のように感じられた。


「アメリー・・・」


やっと体が動くと、僕はそのままアメリーのところまで走っていき力いっぱい抱きしめた。


「アメリー、アメリー!!良かった、目が覚めて。・・・アメリー・・・」


僕の代わりに城の使いと話をしてきてくれた侍女が戻り、悲鳴を上げ廊下に飛び出していくのが聞こえたが、僕はアメリーを抱きしめる腕の力を緩めることが出来なかった。

離れたら消えてしまうようで、目が覚めたことが夢になってしまうようで・・・


驚いたように体を強張らせ、抱きしめられるままだったアメリーだったが、ふっと体の力が抜けたことに気付いて顔を覗くと、先ほど僕を見つめていた金の瞳が閉じ長いまつ毛に隠れてしまっていた。


「アメリー!アメリー!!」


意識の無くなったアメリーに僕は焦って大声を出したところにノア兄様とカムロ兄様が部屋に飛び込んできて、僕とアメリーを引きはがし一緒に来た侍医に診察をしてもらっていた。


やっぱり”夢”だったの?!


涙が止まらない。

僕を羽交い絞めにして動きを止めるカムロ兄様の服を濡らし、壊れたおもちゃのように彼女の名前を呼ぶことしかできなかった。


侍医によると意識を取り戻したのなら、もう大丈夫だろうとのことだった。

僕と侍女の二人が目覚めを確認したのなら、幻ではないでしょと優しく僕の頭を撫でてくれる。

呼吸も安定し、顔色も大変よくなったと言っていた。


「殿下。『もう大丈夫』ですよ」


その言葉に、安堵したのだろう。

カムロ兄様の腕の中で緊張していた心がふっと軽くなると同時に、目の前がゆっくり霞んでいき僕は意識を手放したのだった。


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