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みんなの優しさが身に沁みます

ウタの話を聞き部屋に来てくださったお母様は、私の顔を見ると何も言わずそっと抱きしめてくれた。

みんなの優しさにまた泣きそうになる。


「今日はゆっくり過ごしなさい」


ウタは学園の制服をしまい屋敷で過ごす用の腰回りがゆったりとしたドレスを出し着付けてくれる。

薄い緑を基調としたシフォンがたっぷり使われたちょっと幼さを感じるようなドレス。

私の好きな色。


食欲はないがみんなが心配し料理長がイチゴのケーキなど私の好きなものを用意してくれたので、庭の東屋でいただくことにする。

ちょうどバラが見ごろで、きれいに咲き誇っていた。

10年前レン様がたくさん下さったお見舞いの品の中で、鉢に入ったバラを庭に植え替えたものもあった。

膝に広げた読んでないと分かる本のページを風がめくっていくのを、ぼーっと眺める。


「まったく、いいご身分だよな~」


声の方を見ると学園からお帰りになったばかりなのだろう、制服を着られたカイ兄様だった。


「カイ兄さま、おかえりなさいませ」


無駄のない動きで私の前の席に座り、ウタの淹れた紅茶を一口飲みクッキーを摘まんで口に入れ様を見る。

お父様そっくりに成長されているカイ兄様。

将来は騎士になられるのだと剣術に励まれている。


「で、今日はなんで学園を休んだ」


「体調がすぐれなかったもので・・・」


「ふ~ん。よくなったのか」


「はい。おかげさまで」


言い方はぶっきらぼうだが、私を心配して来てくれたのだろう。

歳が一つしか変わらず、何かと意地悪もたくさんされたけど、最後は無条件で私の味方になってくれる。

そんな不器用な優しさが、今の私にはちょうどいい。


「ファー様がアメリーが休んでいると、一学年上の俺のとこまで様子を聞きにきたぞ」


「そう、ですか・・・」


レン様の名前が出たことで、一瞬身体がこわばってしまう。

そんな一瞬でも、カイ兄様には気づかれてしまうのだろう、小さく舌打ちされたような気がする。


「お嬢様、ファーレン殿下がお見舞いにいらっしゃいました」


「あ、え!」


「アメリー具合はどう?」


タイミングが良いというのか悪いというのか、会話に出た本人が来てしまった。

どうしようと見るからに慌てている私を見て、カイ兄様がすっと立って、レン様との間に立って

くれた。


「これはファー様思ったよりお早いお着きで。で、具合の悪い俺の妹に何の御用ですか?」


腕を組み、視界を遮るように間に立ってくださる。

カイ兄様には今日の私の不調の原因と、言わずとも分かっているのだろうか?


「アメリーの顔を見に寄らさせていただきました」


「だ、そうだ。どうする?」


にっこり微笑むカイ兄様の後ろに、真っ黒なオーラが一瞬見えたような気がした。

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