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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
109/134

前と今の融合


今度こそ離れない、離さない。

ずっと、ずっと。

君のそばにいるから。



ぼんやりと歪む天井が見える。

ここはどこだろう。

のろのろと体を起こし、周りを見ると知っているような知らないような不思議な感じがした。


そんな時、ふっと自分の手が目に入る。

とてもとても、小さな手。

俺の手はこんなに小さかったっけ?!


ぱた・・・


えっ?!

自分の小さな手のひらに落ちる雫に驚く。

雫はぱた、ぱたとひとつひとつ増えていき、僕の手を濡らしていく。


コレハ、ナニ?!


ふっと、自分の頬を伝って流れ落ちる雫の感触が妙にリアルに感じられた。

あぁ、俺は泣いていたのか。

そこでやっと自分が泣いていることに気づく。

だから、僕の周りの様子が歪んでいるように見えたのか。

妙に冷えた思考が、客観的にオレを見ていた。


ぼく?!


オレ!?


じゃあ今、泣いている自分はいったい・・・ダレ?


思考がぐちゃぐちゃで僕と言う俺と、俺と言う僕が混在している。

なんだこれ?!

胸が苦しい、苦しい!!

誰か、誰か・・・

ダレカ?!


モヤモヤとした霞がかかったような霧の中に、パッと金色の瞳の銀髪の少女が現れ、


「レン」


と、ぼくを呼び、はにかむようなそれはそれは綺麗な笑顔で笑ってくれた。


「アメリー!!」


急に思考が一つに合わさり、俺は僕と一つになったような気がした。


やっと心に体が追いついた感じがして、僕は迷わずベットから飛び降りると、廊下に出る扉をバン!と開けて飛び出した。


「うわっ!で、殿下!!」


ちょうど扉を開けて中に入ろうとしたランバートとぶつかりそうになるが、そんなことには構っていられなかった。

小さな体をいいことにさっとランバートの横を通り抜けると、アメリーの部屋へと走りノックもせずに扉を開けた。


「殿下、お気づきになられたんですか?!」


アメリー付きの侍女がベットのそばにいて、急に部屋に入ってきた僕に驚いたようだが、僕はそれを無視してゆっくりベットに近づき、眠るアメリーの顔を覗き込む。


「アメリー・・・ねぇアメリー目を開けて。お願いだから・・・」


ぱた、ぱた。


相変わらず涙は止まらず、静かに眠るアメリーの頬を濡らす。

なんで目を開けてくれないの。

アメリー、アメリー、アメリー、アメリー・・・アメリー!!


「起きて、お願いだから!起きてよ。     アメリー!!」


アメリーの肩を掴んで揺さぶる僕に悲鳴をあげる侍女。

そばにいたランバートがすぐにアメリーから僕を引き剥がすが、僕は左手を伸ばしてアメリーの右手を掴んで絶対に離さなかった。

子どもの僕にどこにそんな力があったのか分からないほど、強く強く大人の力でも離せないほどの力で、彼女の手を離さなかった。

子どもの力ではありえないことで、考えたらおかしな話なのだが、無意識に僕は魔法の力を使ったのか、または王家のただ一人への執着がなせる技だったのか。

どうしてそんなことができたかは最後まで分からなかったが、それから僕の左手はアメリーの右手から決して離れようとしなかったのだ。



泣き叫び手を離さない僕にランバートが押さえつけるようにしながら、普通の声が怒鳴り声に変わり、始めて僕を怒鳴りつけたのだった。


「殿下、落ち着いてください。落ち着いて・・・!!

ちっ!!くそっ!!もう!いいかげんにしやがれ!

殿下!!落ち着け、って言ってんだろが!!」


怒鳴りつける必死な声が僕の耳に届き、目の前の人を認識することができた。


「・・・ラン バ ート?!」


嗚咽混じりの自分の声。

涙も止まる様子がなかった。

今は溢れすぎて僕の髪も服も、アメリーのベットも濡らしていた。


やっと僕と目があったことを安堵するように、ランバートはいつもの表情に戻り、僕の目を見ながら言い聞かせるように真剣な声で話をする。


「いいですか殿下。よく聞いて下さい。アルメリア様は頭を打っています。絶対に刺激を与えてはいけません。絶対です。そっと見守ってあげて下さい。そして目が覚めることをみんなと一緒に待ちましょう」


『いいですね』と言い聞かせるようにランバートは言うと、優しく抱きしめてくれた。


「大丈夫ですよ。あなたが待っているんです。目を覚ますまで、そばにいましょうね」


ランバートは僕を抱きしめたまま、背中をトントンと落ち着かせるように優しく叩く。

僕の涙は相変わらず止まらない。


でも・・・


「うわ〜ん」


そこで僕は初めてランバートの胸に顔を埋めて、声を上げて大声で泣くことができたのだ。

どうしても僕は泣き止むことはできなかったが、ランバートは僕が落ち着くまで優しく背中を叩いてくれた。





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