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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
108/134

僕と俺の記憶

今回、ファーレンが前世を思い出すときに自分が死ぬ時のことも一緒に思い出します。

血が流れるような描写はありませんし、酷い描写は避けておりますが、人が亡くなります。

苦手な方や、バスの事故に嫌悪を感じる方は読むことお勧めしませんので、どうぞ飛ばしてください。

あれは誰・・・


倒れるアメリーの姿に重なる影。

ちいさなアメリーをすっぽり覆いつくす大人の女性の姿。



知ってる・・・


だって、あの人は僕の、俺が、一番大切で守り(護り)たかった人。


アルメリア・・・


アメリー・・・


リア・・・


りあ・・・




莉愛!



涙が止まらなかった。

頭の中に流れ込むたくさんの情報に心が体が追い付かない。


前世での僕の記憶。

結城蓮として生きた29年の人生のすべてが、怒涛のように頭の中に流れ込んでくる。

頭の中の記憶と目の前の様子がリンクしているようで、していなくて。

夢のような、でも現実としっかり認識をしている、不思議な感覚。


「アメリー・・・」


調教師に抱えられ意識なく揺れる小さな手。

屋敷に向かってかけていく後ろ姿を追いかけたいのに、僕の体は全くいうことをきいてくれない。


連れて行くな、その子は僕のモノだ。

たった一人の大切で愛しい、莉愛アルメリア



彼女はいつだって受付で笑顔で迎えてくれた。


「おかえりなさい」って言って微笑む姿がとっても可愛いかった。

会長の孫息子の俊哉坊ちゃんのいたずらを頬を膨らまして「メッ!」と怒るけど、謝ると屈託ない笑顔で頭を撫でる優しい表情も。

医務室に連れて行くときに抱え上げた体が小さくて軽くてちゃんと食べているの!と心配になりながらも、触れることが出来て舞い上がった心も。

食事に誘うと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑ってくれたことも。

揺れるバスでそっと手を繋いだ細い指も。


全部、全部・・・


結城蓮オレ立花莉愛たちばなりあが好きだった。



最期の時。

混雑の中、揺れるバスを利用して初めて手を繋いだ。

ビックリして顔を赤らめる彼女だったけど、多分自分の耳も赤くなっていただろう。

一緒に帰れて幸せだった。

今日こそ、彼女に告白しようと決めていた。

その時、普段では考えられないようなバスの揺れと衝撃と、耳を塞ぎたくなるような音と体が浮き上がるような感覚を感じ、俺は繋いだ手を引っ張り彼女を自分の腕の中に引き入れ守るように抱きしめた。

その後、一瞬記憶が途絶えているので、意識を失っていたのだろう。

ぼんやり瞳を開くと腕の中にしっかり小さな体を抱きしめているようだったが、感覚があまりない。

何かに押しつぶされているようだった。

あぁ、バスが事故を起こしたのだな・・・

冷静な自分が客観的に見ているように感じた。


「莉愛・・・」


そっと、腕の中の彼女の名前を呼ぶ。

返事はない。

周りの音も何もかもが聞こえなくなり、目の前も暗く霞がかかったようになってきていた。

多分、自分は助からない。

でも、でもどうか神様。

彼女だけは、どうか彼女だけは助けてください。

神など信じていない俺だったけど、その時だけは見ぬ神に一心に祈っていた。


でも、最期の時まで一緒で俺はとても幸せだったのだ。



それなのに。

それなのに、また僕は君を守ることが出来なかった。


涙は止まらない。

怒涛のように流れ込んでくる記憶はまだ止まりそうにない。


でも僕は。


震える膝を叱責しなんとか立ち上がると、屋敷に向かって歩き出す。

逸る気持ちに体が追い付かず、何度も倒れそうになるが足を踏ん張り前に出す。


僕はアメリーのそばに居たいのだ。


周りが全く見えず、音も聞こえていなかった僕は、そばで声をかけ続けるランバートの存在に全く気付いていなかった。

そしてとうとう体が言うことを聞かずに倒れる僕をランバートが抱え上げ、屋敷に連れて行ってくれたのだが。

記憶と感情とごちゃごちゃになっていた僕はそれさえ気づいていなかった。


ただ、涙だけは目から溢れ止まることはなかった。





更新に1か月以上間があいてしまいました。

すいません。

仕事が立て込み、他の作品や妄想が楽しくて・・・すいません。

こちらも進めていきたいと思いますので、今後も読んでいただけたら嬉しいです。

会長の孫の俊哉君は、この転生令嬢シリーズの中の『おにわそと!ふくはうち!!』の豆まきの話に出てきます。

保育園児で悪ガキですが、多分莉愛姉ちゃんを好きだったと思います。

蓮も、うすうす感づいていたので、ちょっとしたライバル!な話も面白そうだな・・・と。

なんて妄想に花を咲かせてしまいました。

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