じゃあ、どっちもが・・・だね
「レン様、具合いはいかがですか?」
ベットに起き上がってはいるが、まだベットから出ることを許されないため、アメリーがベット脇に用意された椅子に腰掛けて話をする。
「うん、もうだいぶいいんだけどみんなが心配するから、もう少し静かにしてようと思ってる」
「本当に心配しましたからね。もう勝手にいなくなるのと魔法はしばらくダメですよ」
曖昧に笑って頷いておく。
この間は心配をかけて、たくさん泣かせてしまったから、何を言っても言い訳にしかならないからだ。
「何であんな無茶をしたのですか?ランバート様は分かっていらっしゃるようですが、殿下にお聞きくださいとしか教えてくださらないので」
「う〜ん、なんでだろうね」
理由ね。
押しかけてぶっ倒れてるのにアメリーに会いたかったなんて、かっこ悪くて言えない。
言葉に詰まる僕の様子を見て、アメリーの瞳に涙が滲む。
「な、アメリーなんで泣く!?」
「だってやっぱり私がいけないんですよね。私がお城に行かなくなったから、心配してきてくれたんでしょ。無理させてごめんなさい」
ポロポロ泣いてしまうアメリー。
あぁ、また泣かせてしまった。
「違うよ。僕がいけないんだ。ちゃんと正面からカサヴァーノ家にお邪魔すれば良かったんだよ。アメリーが悪いわけじゃない」
「でも、それじゃあ私が部屋から出てこなくて会えないと思ったんでしょ」
はい、その通りです。
とは、言えない。
「僕がズルをしたからいけないんだよ」
「違う私が、会おうとしなかったから」
「いや、僕が」
「違う、私が」
どっちも引かない様子に、とうとう僕が我慢できなくなって苦笑いしてしまう。
「じゃあ、どっちも悪かったということで手を打たない?」
「そうですね。レン様と喧嘩をしにきたわけじゃあないですしね」
アメリーもクスクス笑いが止まらず、2人で手を取り合い『ごめんね』と謝った。
ひとしきり笑ってから、アメリーの表情が急に沈んだものになる。
その表情は、話すのに勇気がいることを物語っていた。
でも、これはアメリーから話してくれないといけないことだと感じたので、僕は静かにアメリーの言葉を待つ。
「レン様、私ではあまりにも力が無さすぎます。これからあなたの隣で一緒に学んでいていいんでしょうか」
暗に一緒に学ぶことだけを指しているとは思わない。
これから先、将来のことも言っているのだろう。
「ねえ、それがアメリーの本心」
「私は・・・」
迷っているのを感じる。
でも僕はアメリーに選んで欲しいと心から思っていた。
何を?誰を?
違う、僕を・・・だ。
「私は、レン様と一緒にいたいです。でも、学んでも私には力がないから無意味なものになってしまうのが怖い。呆れられてしまうのが怖いんです」
「大丈夫。誰も呆れたりなんてしないよ」
だって本当はすごい魔力を持っているんだから。
言いたいけど言ってはいけない。
大丈夫、これからは僕がずっと・・・
ずっとずっとどうしたいんだろう。
もう答えは出ている。
けど、まだ形には出来ないと思っている。
もう少し、もう少しだけこのまま、僕が僕の想いにきちんと向き合い受け入れるようになるまで。
「もう少し待ってね」
「?」
でも、この時に想いを認めてアメリーとちゃんと向き合っていたら、あんなに拗れて何年もアメリーを苦しめることはなかったのかと思うと、悔やんでも悔やみきれない。
僕たちの運命が動くあの日が、もうすぐそこまで迫っていることを、まだ僕たちは知らなかった。