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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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婚約者殿は怒るととっても怖いらしい





あぁ。


これは、この頃見なくなった夢だ。


たった1人の誰かを探して、彷徨っている夢。



あの人に会いたい。


会いたい、会いたい、会いたい。


会いたい・・・



会いたい気持ちは、今でも変わらない。


けど、今の僕が1番会いたい人は・・・



意識が静かに戻っていくのを感じ、瞳をそっと開けてみる。

そこは懐かしい、カサヴァーノ家に滞在した時に過ごしていた部屋だった。


ふっと枕元を見ると、ベットの蓋に頭をのせて眠るアメリーが目に入る。


あぁ、アメリーだ。


やっと会えた。

今、誰よりも会いたかった人。

なんでこんなに会いたかったのかは、やっぱり分からない。

でも、どうしてもその顔が見たかった。

会えなくて顔が見れなくて、とてもとても・・・


なんだろう?


心の奥の方がギュッとするような感じがするけど、この気持ちを言葉にすることが、僕にはよく分からなかった。


そっと手を伸ばし銀色の髪に触れる。

サラサラと指の間を滑るように流れ、とても綺麗だと思う。


「ん、ん。レンしゃま・・・」


寝起きの舌足らずな声に無意識に頬が緩む。


「うん、おはようアメリー」


「レン様!!」


ガバっと起き上がり僕を凝視するアメリーに驚くが、多分僕の表情は変わらなかったと思う。多分。


アメリーの声に側に控えていた侍女が廊下に出て誰かを呼んでいる声がすると共に、ランバートを初めにカサヴァーノ家の皆様が部屋に慌てて入ってくる。


すると今まで僕を見ていたアメリーが下を向いていることに気づいた。


「アメリー?」


「・・・レン様の大馬鹿者!!」


地を這うような怒声が部屋中に響く。


「アメリー、おまえ大馬鹿者って」


苦笑するノア兄さんがアメリー落ち着けと宥めるが、大きな瞳から大粒の涙を流し、今まで見た中で一番怖い顔をして怒っていた。


「言いましたよね、自分を大切にしないといけないって。これのどこが大切にしてるんですか?!勝手に城を抜け出し無理して魔力使い過ぎて倒れて、みんな心配したんですよ!!」


あの日、湖に落ちそうになったアメリーに言った僕の言葉のことを言っているのだろう。

確かに僕がいけなかったのだから、素直に謝る。


「アメリーごめんね。心配した?!」


ぶわっと涙が滝のような溢れ出し、とうとう声を出して泣き出してしまった。


「じん、ぱいする、に、きまっでるで、しょう。レンじゃまの、バカー!!」


そう言って僕に抱きつきワンワン泣いてしまった。

ごめんね、ごめんねと謝る僕にバカバカと泣きじゃくるアメリー。

やれやれといった感じのノア兄さんとホッとしたような表情のランバート、優しく僕らを見ているアメリーのご両親。



そして、


「ファーレン!!」


バン!と大きな音を立てて父上と母上が飛び込んできたことに驚いてしまった。


「ち、父上?母上。どうしてこちらに?」


ヅカヅカと大股で父上が近づいてきたと思ったら、


「このバカ息子!!!」


怒鳴り声と共に頭に拳が落とされた。

初めてこんな大きな声で怒鳴られ、殴られ僕は固まってしまい、痛みに涙が流れてしまう。


でもそれ以上に僕とアメリーを一緒に抱きしめ、アメリーと同じようにわんわん泣いている母上を見ているうちに、本当にいけないことをしたんだと実感が湧いてくる。


「ごめんなさい母上。ごめんなさい父上」


俯き涙を流す僕に母上はうんうんと頷き、そして大きな父上が母上ごと僕らをギュッと抱きしめてくれた。

アメリーは静かにしていたが、とても居心地が悪かったことだろう。



僕は思った通り魔力を使い過ぎて倒れたそうだ。

しばらく魔力が戻るまで療養と言われ、アメリーと話ができないまま城の自室に閉じ込められてしまった。


何のためにここまでしたのか・・・


ランバートにも父上と同じくらい怒られた。

目の前で僕が消えたとカノリからの連絡を聞いて、カサヴァーノ家に行くよう指示を出し、自分も用事を放り出して駆けつけてくれたそうだ。

護衛対象を見逃してしまうとはとカノリはきつく処分されるところだったが、僕のとんでもない魔法では仕方ないと、後日お咎め無しになったと聞きホッとした。

本当はかなりの力があるのに僕のせいで、経歴に傷がついては申し訳ない。

そして、僕が魔法を使ったことも、魔法塔の魔法師に厳しく叱られ、もう二度とこの魔法は使わないと約束させられてしまった。



そんなことがあってから3日後だった。

アメリーが自室のベットにやっと起き上がれるようになった僕のところにお見舞いに来てくれたのは。




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