よし、アメリーに会いに行こう
魔力測定の次の日、アメリーは城には来なかった。
なんで来ないのだろう?
病気ではないそうなので、明日には来るだろう。
と、思っていたのに・・・
それから1週間、アメリーは城にはやって来なかった。
「ランバート、アメリーはどうしたんだろう?」
「私は何も存じませんが、何かあったのでしょうか?」
あったとしたら、魔力測定しかない。
さて、会うためにはどうしたらいいだろうか?
考えるが、幼い僕にはこれしか思いつかなかった。
そして思いついたことを決行する日は3日後と決めた。
何故ならその日はランバートが諸用で僕の側を離れる日だからだ。
ランバートがいない時は、他の護衛騎士が僕の側につくことになっているが、ランバート以外なら撒くことは簡単だ。
僕はアメリーに会いにカサヴァーノ家まで1人で行くことを決めた。
あれから3日が過ぎ、決行日の朝が来た。
朝、ランバートが不在なことと、代わりに護衛につくカノリという青年を紹介された。
見かけない顔だな?
ランバートの代わりは普段から彼の周りにいるよく見知った人がすることが多い。
「ファーレン殿下、今日1日お側につきますカノリと申します。私は基本諜報を得意としていますが、今日は特別に殿下につくこととなりました。ランバート様からは『殿下から目を離すな』ときつく言われておりますゆえ、よろしくお願い致します」
「はい、よろしく頼みます」
笑顔で答えたが、内心ハラハラしていて冷や汗ものだった。
まずいなぁ、ランバートに僕の思惑がバレているような気がする。
今回の護衛は撒くことが難しいかもしれない。
今日は王城で過ごすことになっている。
午前中は剣の稽古と基礎体術の訓練だ。
訓練は騎士見習いと一緒に行い、カノリは訓練場の端で護衛行うこととなった。
僕より何歳も年上だが、まだ若い騎士見習いと組み手をしているところで、まずカノリの実力を知るために訓練場から外に出てみることにした。
魔力を足に集中して、大きく跳躍し訓練所の外に跳んでみる。
すると思った通り着地地点にはカノリが待っていて『殿下凄いですね』と拍手される。
う〜ん、褒め言葉が嬉しくない。
その後も昼食後の人が少ない時に庭に忍び出てみたらいつのまにかいたり、抜け穴を使ったら出口で待っていたり、午後のお茶に眠り薬を混ぜても全然効かない上に、薬を盛るとは何事とこっぴどく怒られる、などなど。
見透かされている感が半端なく、敗北の二文字が目の前で点滅しているように感じた。
今回は諦めるしかないのか・・・
でもアメリーに会いに行けるのは今日しかないから、あれを試してみるか?!
一日行うべきことを終え、自分の部屋に戻ると扉に鍵をかけ魔法でより強固な鍵を上からかけた。
多分あのカノリなら開けられるだろうが、カノリでも時間がかかだろう。
破られる前にと僕も足元に魔法陣を展開することにした。
理論上は問題ない。
でもまだ使ったことがない。
成功するかわからないけど、やってみる価値はある。
バタン!!
思っていた以上に早くカノリが扉を開けることに成功し中に飛び込んできた。
僕の魔法が発動するのが先か、捕まるのが先か。
「殿下!おやめ下さい!!」
手を伸ばすカノリが一瞬で掻き消え、目の前にはアメリーが驚いたような表情で大きな瞳で僕のことを見つめていた。
「レン、さま?」
あぁ、アメリーだ。
久しぶりに見るアメリーに心からの安堵を感じたが、急に目の前がグシャと歪んで見えて、吐き気と頭痛が押し寄せ
意識を保っていることが無理で、僕はそのまま気を失ってしまった。