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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
本編・花祭り編レン視点(表記なしレン視点・その他視点名前入りであり)
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紅い炎と金の光

アメリーの測定の後にジュロームとメアリアン嬢も魔力量の測定を行った。


ジュロームは風の魔法が使え、魔力量は多くもなく少なくもなく、魔法を使う上で最も最適な量と言われているくらいだそうだ。

魔力がなければ魔法は使えない。

しかし魔力が多いとそれをコントロールするための力を必要とし、コントロール出来なければ魔法を使うことは難しい。

魔力が多くてもコントロール出来なければ、それはただの宝の持ち腐れになってしまう。

魔力を最適量を持つジュロームは、特に努力をしなくても風魔法の使い手になれるということだろう。


かたやメアリアン嬢は水の魔法が使えそうだが、魔力量がほぼ無いため、魔法を使うことはできないだろうと言われた。

生活する上で魔法が使えないからと困ることは無いし、これから先も、特に大きな問題もなく過ごせるだろう。

しかしこれは城下街に暮らす市民の話だ。

メアリアン嬢は侯爵家の令嬢だから、また話が変わってくる。

貴族には魔法が使え、ある程度の魔力を持って生まれてくる者が多い。

そのため魔力量で婚約者が決まることも珍しくない。


子孫に魔法ちからある者をと望むために行われる、いわゆる政略結婚というやつだ。


だけど・・・


これもメアリアン嬢には関係のないことだろう。

風魔法の使い手になるであろう人が、彼女をみすみす逃がさないだろうから。


それと、


「私たち一緒ですね」


頑張りましょう!なんてメアリアン嬢の手を取り、可愛らしく微笑む僕の婚約者。

自分の魔力が少なかったことを、とても気にしているのに無理して笑っている。

本当はすごい膨大な魔力を持っているのに、それを伝えることができない。


なんだか、どうしてだかわからないけどその時の僕は、


『アメリーをギュッと力一杯抱きしめたい』


と思ったのだった。




「では、次は殿下の魔力量の計測をいたしましょう」


魔法士に呼ばれ僕も水晶玉の前に立つ。

手をかざし目を瞑り、体の奥の方にある力に目を向ける。

僕は炎の魔法が使えると元々言われていて、力の出し方を教えてもらっていたので、すぐに力を出すことができた。


が・・・


止まらない。

力が、多分僕の魔力だと思うけど、力が止まらない。

出ていく力の止め方がわからず、初めてのことに焦って瞑っていた瞳を開けてしまう。

僕の手の平は水晶玉から離したいのに、くっついたように離すことが出来なくなってしまった。


水晶玉の中には紅く燃え上がる炎のような揺めきが見え、渦を巻くように燃え上がっていた。


「殿下!気をしっかり持って落ち着いて下さい!」


魔法士たちが僕の周りで右往左往しているが、僕よりも慌てているのがわかる。

真っ赤な炎の中に金色の光を感じると同時に、水晶玉に亀裂が入り、あっという間に。


ピシッ、パーン!!!!


と、金の光を放出しながら、水晶玉が粉々に砕け散ったのだった。


「アメリー!」


水晶玉の破片が周りに飛び散っていくの見て、僕は慌てて後ろにいたアメリーの方を振り返る。

アメリーとジュロームとメアリアン嬢を抱きしめ守ろうとする母上と、その前に立ち手をかざし青白い『守り』の魔法の防御壁を張る父上を見てホッとする。


アメリーに怪我がなくてよかった。


「そ、測定器が・・・」


と言ってバタン!と音を立てて魔法士が数名がひっくり返り、残りの人たちは茫然と立ち尽くしていたが、目の前で失神した仲間に気づくと慌てて助け起こしに走りまわっていた。



「やっちまったなぁファーレン。こりゃ、大惨事だわ」


「ファーくん大丈夫。きゃあ!顔にキズが!!」


笑いながらのんびりとした口調のなんだか楽しそうな父上と僕の顔を見て卒倒する母上。

そして、


「レン様・・・大丈夫ですか?」


アメリーがそっと僕のそばに来て、僕の顔を見ると大きな瞳に涙を溜め『痛いですよね』とそっとハンカチを頬に当ててくれた。

水晶玉の破片が頬を掠めて血が出ていたようだけど、痛くはなかった。


「大丈夫だよ」


「でも、とっても痛そうです」


「アメリーに怪我がなくてよかったよ」


「国王様と王妃様が守ってくださったので、私に怪我はありませんでした。でも、レン様が・・・」


しゅんと項垂れるアメリーの頭を大丈夫だよと撫でる。


「うわぁ!あのファーレンが女の子に優しくしてる。ねぇねぇ、見た!ユーファ!!2人がとてつもなく可愛いんだけど」


父上が可愛い、可愛いと大きな体で僕たちをギュウギュウ抱きしめるのを、2人が潰れちゃうからやめなさいと止める母上。

でもそんな母上も、とても嬉しそうに僕のことを抱きしめてくれた。



僕の魔力は測定器を破壊するほどの魔力量だったが、壊れてしまったために測りしれない量と位置付けられた。


測定器はたった1台しかなかったために、それ以降6年の間魔力測定を行うことが出来なかった。

あの水晶玉同等の純度の高い水晶が見つからなかったことと、完璧な球体を作るのには年月がかかるのだという。


また僕のような魔力量の多い子どもが現れるかもしれないからと、ルノア国の子どもは10歳になるときに全員魔力測定を行う義務が定められた。

魔力が大きいことでコントロール出来ず、不幸な事故が起こらないようにするためだ。

また、魔力が高い子どもは無償で魔法塔での訓練も行ってもらえるようになるという。


僕が測定器を壊したことで、いいこともあったと思うが、あの時卒倒して失神した魔法士の方々には、申し訳ないことをしたと反省している。



魔力測定の会場が大変なことになってしまったので、アメリーとジュロームたちは、早々に家に帰されてしまった。

帰り際の寂しそうな微笑みのアメリーが気になるが、また明日会えるのだからと自分に言い聞かせる。



「ファーくん、傷の手当てをしておきましょうね」


母上が僕の頬に当てられていたハンカチをどけ、綺麗な水で濡らしたガーゼで顔を拭いてくれたが、その手がぴたりと止まりじっと僕の顔を見ながら父を呼ぶ。


「ジル、ファーくんの怪我なんだけど」


「どうかしたか、ユーファ」


同じように僕の顔を見た父上も驚きの表情をしていた。


「あの、どうかしましたか?!」


2人の様子に恐る恐る聞いてみる。

驚いたような、困っているような、なんと言っていいかわからないと言った様子の2人だったが、


「お前も、お前のただ一人の人も凄いなぁ」


父上は急に僕の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でてからギュッと抱きしめた。



『ダカラコソ、ソノトキマデシラレテハ、イケナインダ』



ふと、急に声が聞こえた。

父上の声とは違う、でもよく知っているような、いつもそばにいてくれていたような安心する声が。

その後はもう聞こえなかったが、またきっとその時が来たら聞こえるようになると、変な確信があった。


そして、


僕の頬の傷は綺麗に消えていたのだった。





久しぶりに書いていて楽しいですが、文が思うようにまとまらず時間がかかっています。

また、誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

気をつけているつもりですが、いつもありがたいです。

これからもありましたら、教えていただけると助かります!!

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