ジュロームとメアリアンとの出会い
アメリーの誕生日で分かったことがある。
僕はアメリーのことが好きだ。
でもその好きが僕の『ただ一人の絶対』かと言われると、それは分からない。
アメリーは可愛い。
いつまでも一緒にいたい。
アメリーが他の誰かと一緒にいるのはちょっとだけ嫌だと思う。
でもだからといって、それがただ一人の絶対なのかと問われたら、やっぱり首を傾げてしまうだろう。
ただ一人の絶対とはどういう人のことをいうのだろうか?
母上に聞いても分からない。
かといって、父上に聞いたら間違いなく『おまえ馬鹿なのか?!』と残念な目をして言われそうなので絶対に聞きたくない。
そんな風に思っていること自体が、違うと自分に言い聞かせているとしか思えないし、父上に馬鹿にされると気付いている時点で、僕にとってのアメリーの存在の大きさに気付けたらよかったのだが、まだ気づくことができなかった。
今日の魔法学の講義の最後に、僕たちの魔力量を計測することになっている。
「レン様は魔力量がとても多そうですよね!いつも素敵な魔法を見せてくれますものね!」
「いやそんなでもないよ。アメリーはどんな魔法が得意なんだろうね」
「私はあまり上手じゃないので、そんなに期待していません」
魔法に苦手意識を感じているので眉を顰めてしまう。
確かに上手ではないが、魔法を使えるのはすごいことなので、それだけで本当はすごいことなのだと教える。
が、僕ができるだけに残念そうにしている。
「大丈夫です!私は普通よりできることは理解してますから。今日はレン様のことを楽しみにしています」
にっこり笑っていう顔からは嘘を感じない。
そうだね。
でも僕は、君の測定も楽しみなんだと手を繋いで魔法塔に向かいながら、そっと心の中で呟いた。
魔法学の話を楽しそうに聞いていたアメリーだったが、いざ講義が終わり測定器などが部屋に運ばれてくると、とても緊張している様子が伺えた。
(大丈夫)心の中で呟きそっとアメリーの右手を握ると、僕の方を見てぎこちなく笑いギュッと握り返してくれた。
僕がこれからも君を・・・君を何?
空いている方の手をそっと胸に押し当てた。
僕は今何を思ったのだろうか?
「では、これからお二人な魔力量や魔法適性などを測らさせていただきます。まずは殿下から」
「僕たちだけでなく今日はダミラス閣下のご子息とラスティン公爵家令嬢が城に来ていると聞いたが、彼等も同席し測定してもいいだろうか」
「もちろんです。殿下方と同い年であらされ、博識高いと有名ですからね。私たちもぜひ知りたいですね」
(殿下の補佐役として有能だかを)
続く言葉が聞こえたような気がするが、それはあえて目を瞑る。
僕以外の誰かを同席させた方が、アメリーの緊張もほぐれると感じたからだ。
ランバートに連れられてジュロームがやって来る。
彼とはたまに会う機会があり、話をするととても楽しいと思っている。
ジュロームの幼なじみというラスティン公爵家のメアリアン嬢とは初めて会うが、ジュロームの後ろに隠れている感じで、おとなしそうな女の子だと感じた。
ムスッとした怒った顔のジュロームは、
「殿下に呼ばれましたので来ましたが、メアリもっていうとこが納得できません」
「ごめん。アメリーがいるので、せっかくなので一緒にいてもらえるといいと思ったんだけど、ダメだったかな?」
ジュロームはチラッとアメリーを見ると、仕方なさそうに自分の後ろに隠すようにしていたラスティン公爵令嬢を僕たちの前に連れてくると、あいさつをしてくれた。
「アルメリア様。初めまして。僕はジュローム・ダミラスといいます」
「は、は、はじめまして。私はメアリアン・ラスティンです」
真っ赤な顔をしたメアリアン嬢はこのような場に慣れていないのだろう。
緊張していることが見てとれた。
「初めまして。僕はファーレン・ルノアでこちらが」
「初めまして!アルメリア・カサヴァーノです。メアリアン様、仲良くしてくださいね!!」
先ほどまでの緊張が解けたアメリーがメアリアン嬢の前に出て両手を取ってにっこり笑った。
ますます真っ赤になるメアリアン嬢はとても可愛らしい人だと感じたが、なんだかムスッとしたままのジュロームが気になるのと、僕の胸の中も同じようにムスッとしていることが気になる。
「何をそんなに怒っているんだ」
「いえ、メアリと楽しく過ごしていたのを邪魔されたのと、メアリのことを殿下が見るのが嫌なんです。ですから、殿下。メアリのこと見ないでください」
見られるのが嫌?!
それを聞いて、胸の中でムスッと怒っているもう一人の僕のことが分かった気がする。
そうか、僕もジュロームがアメリーを見ることが嫌だったんだ。
でも・・・
「なんで嫌なんだ?」
「はっ?嫌なものは嫌なんです。メアリは俺のですから、殿下取らないでくださいね」
牽制するような言い方と怒ったままの表情は変わらないが、アメリーと楽しそうに話をして笑っているメアリアン嬢を見る時の目はとても優しい。
「ジュロームはメアリアン嬢が好きなのか?!」
「なっ!?!?あなた馬鹿なんですか!!何を急にそんなことを言って」
真っ赤になって狼狽えるジュロームを見て確信する。
好きだから、他の人にも見せたくないんだ、と。
じゃあ僕の中でムスッとして怒っているもう一人の僕は、アメリーのことが、『好き』なのか?
「楽しそうで何よりなのですが、そろそろ魔力測定を始めてもよろしいですかな?」
「ごめん。本来の目的を忘れてたよ」
魔力測定器の準備も整い僕らの測定が始まった。
アルメリアは小さい時にジュロームとメアリアンに会っていました。
でも落馬で前世の記憶を思い出したことで、それまでの記憶が曖昧になってしまい、この時の記憶はなくなってしまいます。
そして心の狭い男の子たちの思惑により、この後会う機会がなかったので、メアリアンも忘れてしまいます。
このままずっと関わりを持てていたら、アルメリアとメアリアンは学園からの友達ではなく幼なじみになれたことでしょうにね。
ジュロームの嫉妬がファーレンのアルメリアに対する想いに気付くきっかけとなることは間違い無いでしょう。
さっさと気づけ!と周りがヤキモキしているのが目に浮かびます。
ファーレンの両親の物語『隠されの森の隠され姫』の話を書き始めました。
年度末で中々忙しいですが、どちらも最後まで書き切りたいと思っています。
よろしかったらこちらも見て頂けたら嬉しいです。