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ユキと住んだ部屋を出た。
「急だったから引っ越しまで今まで通り払うよ」と言う優しさに甘えていたら僕はずっと前に進めない気がしてそそくさと出ていった。
新しい部屋は静かで、本当に静かで一人を余計に感じた。でも不思議と安心感があった。ぐっすり眠れる。
それは僕が待ち望んでいたことだし、運良く最上階の角部屋をとれたのはラッキーであった。
ユキに引っ越し先を伝えようか迷った。「もし忘れ物があったら」と彼女の方は伝えてきたから。と言うより僕から聞いたのだけれど。
それでも彼女はあの部屋に髪の毛一つ残していかなかった。
それでも引っ越しの荷造りをまとめた頃、彼女の痕跡を見つけた。
僕のリリックノートに書かれた絵
そこには一組の男女が裸で抱き締めあっている絵が描かれていた。
きっとそれは僕と彼女なのだろう。いつ描いたのか、自分のスケッチノートと間違って?それとも僕への伝言?付き合う前なのか、別れを決意した後なのか、分からない。
でも彼女が絵の隣の吹き出しに書いてある文字を読んでそんなことはどうでもいいと思った。
彼女に向いた吹き出しには、「ずっと愛してる」とあった。