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戦士たち

 馬車が止まった。

 御者席の白布がぺらりと上がった。御者はもう席を降りており、見知った顔が、御者台のすぐわきに立ってこちらをのぞき込んできていた。

 ラナ=デミギアであった。

「ごめんなさい。わたしがお迎えに伺えれば良かったんですが。」

「いえ……、」

 逆光で日がまぶしい。手をかざしながら馬車をおりる。

 大きな邸宅の中庭。そのように見えた。漆喰で塗り固められた白い壁に、三方を囲まれ、残りの一方は手入れされた庭園、遠くに門が見える。

 馬車のむこうには、小川のような人工の水路で囲まれた、円形の広場のようなものがある。そこに、数人の男女が立っている。

「さあさあ、」

 ラナは太陽のようにわらって、メイとモリスをみちびいた。広場の周囲には、かがりびをたくための大きな燭台のようなものが8つ。それから、橋がむかいあって2つ。

 広場に並んでいる男女は、メイとモリスをくわえて15人。ラナはぐるりと見渡して、

「みなさま、お集まりですね。ご承知のこととは思いますが、皆様には、これから試合をして頂きます。皇帝のおん前で技を見せるための、予選ということです。勝ち残ったおひとりだけが、名誉を得られます。……よしなに」

 ふわり、ふわりと、頭をゆらしながら、ラナは戦士たちの前を歩いた。

「それでは、一組ずつ、名前をお呼びします。呼ばれたかたは、前に出てください。……まず、先程到着なさいました、魔剣術の継承者メイ=サラン様と、付添のモリス様。」

 メイとモリスが、ゆっくりと進みでる。背中に視線が刺さるのを感じる。

「螺旋闘術の達人、エマ=ナンラ様。付添のパナン様」

 まっすぐに立つ、男のような服装をした若い女と、壮年の小柄な男。

「奇術師ケイ=バムン様、付添の……失礼、お名前は伺っておりません」

 全身を黒い布で包んで、人相のわからぬふたり。一人は、車輪つきの椅子に座っている。

「用心棒、ザジ=ダーム様。付添はいらっしゃいません」

 腰に大小の剣をさした、髭面の男。頬がこけて、きつい目つきで、ぎろりと一瞥。

「からくり使いのラモン=シリウス様。付添のギメイ様」

 手袋をつけた、白髪で童顔の男。それから、大きな鞄をもち、男装をした金髪の少女。

「獣化術の使い手、マテル=パナル様、付添のメナン様」

 細おもての若い男。それから、対象的におとなしい顔立ちをした、泣きぼくろのある女。

「精霊使いのガル=デミウ様。付添のマード様」

 選手のうちでは最年長か。彫りの深い顔をした中年の男と、もう少し年下の、痩せた男。

「拳闘士のキュナ=ナルパ様。付添のモス様」

 モリスと同い年位の、おどおどした目つきの少年。対象的に、ねめつけるような目の女。

 全員の名前をよんだあと、ラナは満足げに一礼して、

「皆様、それぞれに部屋を用意してございます。……すでに荷物を運び込まれた方もいらっしゃいますが……。そのほかの方はこのあとご案内いたしますので、どうぞごゆっくりお休みください。よろしければ、食事もご用意いたします」

 広場の外から、案内役がすっと進みでる。ひどく無表情な、同じ格好の女たち。

「予選は、月が高く昇ってからといたします。準備ができたら、お呼びいたします。どうぞ、よしなに。」

 ラナの声は、どこかぶきみに聞こえた。

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