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巨鳥
マテルとザジの戦いも、似たような展開となった。
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ザジが近づくにつれ、マテルは少しずつ後ずさりをした。
そして、試合場の端についたとき、変身したのだ。
巨鳥に。
人の体ほどの大きな翼をそなえたマテルは、大きくはばたいて上をとった。それから、人が米粒に見えるほどの高さまで一気にまいあがり、降下した。
するどい嘴が、ザジの脳天めがけて一直線に。
ザジは、右手を剣の柄にかけて、かるく見上げていた。
マテルは、猛禽のするどい目で、それを見ていた。
ザジの右手のわずかな動きを、見ていた。
突如、マテルの降りる軌道がそれた。
翼をひねって、強引に曲がったのである。マテルは、ザジから十歩もはなれたところに落ちた。変身が解ける。頭から落ちて、ごろごろと転がる。
「へへ、」
唇から血が出ていた。
ザジが、小さく向きをかえて、マテルのほうをみた。
「……しくじっちまった。降参するよ。」
マテルは小さく手をあげて、そういった。唇が震えていた。
ザジは、無表情のまま、剣の柄から手を離した。




