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蘇生術

 メイ=サラン。

 ガル=デミウ。

 キュナ=ナルパ。

 三人の死体が、板の上に寝かされている。


 ラ、ラ、サ・ハルナ、サリ、マリー、カル、カル、シー、サラルーナ…、


 三人のまわりを、ラナ=デミギアが、ゆっくりと呪文をとなえながら歩く。

 一周するごとに、月光が強くなっていくように見える。

 白い、もやのようなものが、じんわりと地面から染みだして来る。月光とまざりあって、粘液のように見える。

 ぞわりと、動いた。

 その粘液が、である。

 足から、少しずつ上半身へとずるずると這っていき、しまいに口へ。

 きらきらと、光沢を放ちながら、


 モリスは、思わず目をそむけた。



「……不覚をとりました。」

 自分にいいきかせるように、メイはそうつぶやいた。

 ここは、デミギア家の客間のひとつである。

 部屋のなかには、ベッドがふたつと、ちいさな机がある。ダージふうの、意匠化された植物のもようが脚に刻まれた、高価そうな机である。

 メイは、部屋のはしにあるゆったりした長椅子に、前のめりに座って、うつむいている。

「あの、奇妙な動きが……、惑わされました」

「……たしか、螺旋闘術、とか。」

 モリスは、立ったままそういって、しずかに頷いた。

「あの動きをした後、異様に筋肉がふくらんでいました。魔術のようなものでしょうか」

「あぁ、……でも、呪文もなしに?」

「……そういうことになりますね」

 モリスは腕組みしたまま、じっとメイのほうを見た。

 直接見たわけではないが、胸の傷はもうすっかり治っているようだ。

 たぶん、体内も。

「鎧も、……壊されてしまいました。」

「……ええ。」

 メイの着ていた鎧は、机の上に置いてある。

 呪語を記した鉄片を重ねあわせてできた半身鎧である。エマの拳がうちこまれたところだけ、鉄片がひしゃげ、ちぎれて、ばらばらになっている。

 剣で思いきり打ち込んでも、このようにはならない。

 どれほどの力……いや、疾さで、拳を叩きこんだのか。

 よしんば、修練の結果としてそういうことができるとして、ここまでの威力で打ったら、拳そのものが耐えられないのではないか。

 

 いや、それよりも……


「……あの、呪文、」

「え?」

「いえ…なんでもありません」

 モリスは、メイから目をそらした。なんとなく息がつまるような気がして、

「……ちょっと、様子を見てきます」

 小さくそういって、部屋を出た。

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