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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
9章:ギルドの街

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新たな仲間(8)

 突如として自害したジョセフであったが、その後再び体を動かし始めた。

 まるで動作を確認するように手のひらを開いたり閉じたりしている。

 死んだはずなのに一体何がどうなっているのか? 困惑しているとジョセフはこちらへと向き直る。

 しかしその表情はとても生きている者のそれとは思えなかった。

 なんと言えばいいのか、覇気が感じられないのだ。


 しかし、それは表面上の話だ。

 恐らく中身は違う、さきほどまでと雰囲気がまるで違っているのだ。

 そう、まるで別の何かが入り込んだように思える。

 見た目には覇気がないように見えるが漂うオーラは違っている。


 「何だ……? 何がどうなってる?」


 ゴリラアームを解いたのは失敗だったか? と悔やむが今更言っても仕方がない。

 警戒して構えを取る。が、ジョセフのほうはぎこちない動きでゆっくりと腕を動かし杖を引き抜く。

 恐らく殴り飛ばして屋根に落ちた時に腕の骨が折れたのだろう。

 普通なら激痛で少し動かしただけですぐに止めそうなものだが、今のジョセフは時間をかけてでも腕を動かしていく。


 そして杖を構えると呪文を呟く。

 しかし、それはとても言葉を発しているとは言えない発音だった。

 喉がやられているからだろうか? 何を言っているのか理解できない。

 とはいえ、この異世界の魔法の呪文など知ってるわけもないので正しい呪文がどういったものなのかはわからない。

 それでも、今のジョセフが発している呪文のような何かが明らかに違うとはわかる。


 ジョセフは呪文を唱え終えると杖を真横に振る。

 するとジョセフの周囲に風が渦巻き、それは杖へと収束していく。

 そして杖の先に風を束ねた魔法の刃を形作る。


 風の系統魔法の中でも接近戦で使用される代表的な魔法「ウインドブレード」だ。

 ジョセフはそのウインドブレードを振るい構えを取ると、足の裏に風を纏わり付かせて屋根を蹴り、一気にこちらへと斬りかかってきた。


 「っ! 速い!!」


 その動きに合気道で対処しようかと一瞬思ったが、すぐに考えを改めアビリティーユニット・ブレスレッドモードを解除、アビリティーユニットを握ってレーザーの刃を出す。


 「く!」


 直後、ジョセフがウインドブレードを振り下ろしてきた。

 これをレーザーブレードを振るって受け止める。

 数秒の鍔迫り合いの後、素早くレーザーの刃を引いて再びジョセフへとレーザーの刃を振るう。

 それをジョセフはウインドブレードを構えたまま受け止め、受け流し今度はジョセフがこちらへとウインドブレードを振るってきた。

 これをなんとかレーザーブレードを構えて受け止めるが、やはりジョセフは腕の骨が折れているのか力が入っているようには思えなかった。


 それどころか折れているのに無理矢理振るっているのか嫌な音が聞こえてもくる。


 (こいつ、骨が折れていようが腕が折れ曲がっていようが気にせず攻撃を振るってくるが一体どうなってやがる!?)


 普通なら腕がそのような状態なら多少なりともそれを庇う動作が見られ隙が生じるが、今のジョセフにはそれが一切ない。

 まるで腕の痛みどころか腕が大変な事になっているのを無視しているような動きだ。


 (少し試してみるか)


 一旦ジョセフと距離を取り、レーザーブレードの持ち手を変え構え直す。

 それはどこかフェンシングを連想させる構えであり、実際その通りである。

 その構えはフェンシングの中でもエペと呼ばれる種目のものだ。


 (まぁ、突きだけじゃなく斬りも有効なサーブルならいざ知らずエペ……いやフルーレも含めフェンシングは面積の広い胴体への突きを基本狙うから腕なんて面積の狭い箇所を狙うってのはぶっつけ本番で成功するかわからんが……試す価値はある!)


 深呼吸し、一気に踏み込んでジョセフの左腕を突く。

 レーザーの刃による突きは容赦なくジョセフの左腕を貫き、そしてそのまま肘から下を体から切り離した。

 普通なら激痛で叫びのたうち回るところだろう。

 しかし、ジョセフはとくにリアクションを取らなかった。

 冷静にこちらから一旦距離を取ってウインドブレードを構え、ようやく失った左腕を見てぎこちない動きで斬り落とされなかった残った腕の可動を確認するような動きを見せる。


 そして左腕にまるで義手のように風を纏わり付かせて再びこちらへと向き直る。


 (やっぱり痛みを感じている様子はない……怪我は認識してるが無視している。我慢しているってレベルじゃない。怪我をしようが、体を欠損しようが気にとめないといった感じだな)


 こうなってくると、やはりジョセフ自身はさきほど自害して完全に死んだと見るべきだろう。

 つまりは今自分は死体と戦っているのだ。

 では死体がどうして動いて戦っているのか?

 ファンタジー特有のゾンビ化というやつだろうか?

 しかし、それにしては動きに違和感がある。


 別段ゾンビ映画を見尽くしたとか、ゾンビの研究本を読み漁ったわけではないがあれは違う気がする……

 何というか……そう、死体の中に別の何かが入り込んで操っているというか、動かしているといった感じだ。


 (ゾンビなのか、死体が何かに操られているのか……いずれにせよ、動けなくなるまで刻む必要があるな!)


 レーザーブレードを構え直し、再びジョセフへと斬りかかっていく。

 向こうもウインドブレードを振るってこちらへと迫ってくる。

 レーザーブレードとウインドブレード、ふたつが激突し、お互いの斬り返しの攻防が数秒続く。


 (くそ! 埒があかない!)


 レーザーブレードを大振りで振るい一旦後ろに下がると素早くアビリティーチェッカーを取り出し装着、聖剣のエンブレムをタッチする。

 レーザーの刃の出力が上がり、刃渡りも伸びて刃幅も増した。

 そんなレーザーブレードを真横につきだし水平に構える。するとレーザーの刃に渦のように光が纏わり付きより一層輝きを増す。


 「くらえ! 聖天閃光剣!!」


 そのまま真横につきだしたレーザーブレードを宙を斬るように振るう。

 するとレーザーの刃に纏わり付いていた光がまるでカッターの刃のような形状となってジョセフへと飛んでいく。


 これを見てジョセフもすぐさまウインドブレードを真上に振り上げて一気に真下に振り下ろす。

 すると振り下ろされたウインドブレードの切っ先から風のカッターが飛び出す。

 風の系統魔法「ウインドカッター」だ。


 お互いの放った光のカッターと風のカッターは激突すると周囲に衝撃波をまき散らして消滅する。

 どうやら威力は同等のようだ。


 「なら連続して放つまで!!」


 再びレーザーブレードを振るい光のカッターを飛ばす。しかも今度は複数を放つ聖天閃光双剣だ。

 しかしジョセフも同じくウインドカッターを連続して飛ばしてくる。


 (さっき威力は同じだった。なら何度やっても結果は同じだ……だったら!)


 聖天閃光双剣を連続で放った後、素早くレーザーの刃をしまいアビリティーユニットに銃身をセットしてハンドガンモードにする。

 そして横へと飛んでウインドカッターを連続して放つジョセフに向かって数発撃ち込む。


 照準は定めていない。そんな余裕はないため適当に勘で撃ち込んだが、数発のうち一発はジョセフの脇腹を貫通した。

 しかし、案の定痛みを感じる仕草や撃たれた箇所を庇う仕草は見せない。


 「まぁ心臓をさっき自分で突き刺したんだ。死んでて当然だろうが、やろう……これは本当に誰だか知らないが死体を操ってるやつを倒さないことにはどうにもならないぞ」


 どうにかして死体を操っている相手を探さないといけないが、戦いながら探せるだろうか?

 そもそも見える範囲にいるのだろうか?


 (襲撃してきたギルドの連中は全員片付けたはずなんだよな? 生き残りはいないはずなんだが……)


 リーナの千里眼の指輪でそれは確認している。

 ではリーナが知らないギルド団員がまだ他にいたという事だろうか?

 何にしてもリーナに再び千里眼の指輪で探知してもらう必要がある。


 ハンドガンモードで数発ジョセフに追加で乱射してから銃身を外し、再びレーザーの刃を出してジョセフへと斬りかかる。

 ジョセフは銃撃を受け、足などに誰の目から見てもまともに動ける状態でない傷を追いながらも、それを気にもとめずウインドブレードを構え、こちらの攻撃を受け止める。


 そんなジョセフに斬りかかりながら、屋根の端でフミコ、ケティーと一緒に隠れているリーナに叫ぶ。


 「リーナちゃん、もう一度千里眼の指輪で周辺に他に敵がいないか調べてくれ! なるべく探索範囲は広げてほしい! この死体を操っている奴が見える範囲に潜んでいるとは限らない!!」


 指名されたリーナは慌てたような声を上げる。


 「え? で、でも見つけたとしてどうすれば?」

 「フミコ! リーナちゃんが死体を操ってるやつの場所を特定したらそいつを叩いてくれ! ケティーはリーナちゃんの護衛とフミコの援護を!!」


 そう叫ぶと、フミコとケティーが任せといて! と返事をしてきた。

 方針は決まった。

 後はフミコたちを信じるのみ。


 「さて、死体を操っているやつをフミコが倒すのを待つのもありだが、そもそも操っている死体が操れなくなるほど欠損したら、どっちにしろ敵は攻撃手段を失うよな?」


 そう、死体を動かすと言ってもそれはまだ生前の肉体の状態を留めているから動かせるのだ。

 これが生き物としてそもそも活動できないまでに刻んだり痛めたりバラバラにしたらどれだけ死体に憑依しようが活動はできないはずだ。


 (そこまでの状態に追い込めるかは不明だが……フミコが死体を操ってるやつを倒すのが先か、俺が死体をそこまでの状態にするのが先か……競争してみるか)


 そんな事を考えていると自然と頬が緩んでいた。

 戦闘中なので自分の顔を鏡で見ている暇はないが、もしかしたら悪人面をしているかもしれない。


 死体を破損させる。少し前の自分ならそんな事冷静に考えたり、それを競争と考えるなんてまずなかっただろう。

 数多の異世界を渡り歩いて転生者、転移者、召喚者を殺していく中で倫理観が壊れかかっているのかもしれない……


 そう思うと少し自分が怖くなってくる。

 が、今はその考えを頭の中から消す。

 つまらない思考を巡らせたまま勝てるほど甘い相手ではない。


 だからレーザーブレードを握る手に力を込める。

 するとレーザーブレードに渦のように光が纏わり付き、より一層輝きを増す。


 「いくぞ! 聖天閃光剣・改!!」


 レーザーブレードを野球のバットのように構えフルスイングする。

 直後レーザーの刃に纏わり付いていた光が巨大な光弾となって恐るべきスピードでジョセフへと飛んでいく。

 これをジョセフはウインドブレードに更に風を纏わり付かせてウインドバスターソードに進化させて受け止める。


 それを見て一気に距離を詰めてジョセフへと斬りかかった。

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