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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
7章:運命の乙女

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運命の乙女(20)

 フミコを抱き寄せて大地の壁に隠れた直後に周囲が氷漬けになったのを見て冷や汗が出る。

 あと数秒遅かったら確実にやられていた。

 一緒に戦っていた時は心強かったが敵対した今は脅威でしかない。


 (まったくどうしたものかな?)


 とにかくフミコと連携してなんとか切り抜けなければならないが、そのフミコは抱き寄せた自分の胸に顔を埋めて。


 「幸せ、もうこのままでもいいかな」


 などと言っている。


 「いや、このままはやめてくれ」


 言ってフミコを引き離すと、フミコは不満たらたらな顔をしていた。


 「もう少し抱きしめてくれててもよかったのに! かい君のいけず!」

 「そんな悠長な事言ってる場合じゃないだろ?」


 言ってる間にも取り巻き男子達の攻撃は続いている。

 それを受け止める大地の壁は今にも崩れそうだった。


 「それでかい君どうするの?」

 「とにかく連中を分断しない事にはどうしようもないな……4人がまとまって連携できる状況を打破しないと」


 言ってる間に大地の壁が氷の刃と雷撃で砕け散った。

 その事に舌打ちして、すぐさまアビリティーユニット・アックスモードを振るう。

 直後、地面が波打って4人の取り巻き達へと向かう。


 それに会わせてフミコも丸木弓をその手に取り矢を射る。

 しかし、それらの攻撃は取り巻き4人の連携スキルによって防がれてしまう。


 そう、これが運命の乙女の取り巻き達の厄介なところだった。


 クラウス、ルーク、ヘンリー、”指揮者”の坊ちゃんはそれぞれ「氷」「雷」「光」「風」にまつわるスキルを所持しているが、これらを組み合わせることでそれぞれの持つスキルをより強力なスキルに引き上げたり、まったく異なる効果を発揮したりする事ができるようだ。


 クラウスと”指揮者”の坊ちゃんが見せたのは融合スキル。

 「氷」と「風」のスキルを掛け合わせて「氷」を強力にしたのだ。

 組み合わせは数多いが、2人のスキルを掛け合わせたのが融合スキルらしい。

 そして3人以上でスキルを掛け合わせるのが連携スキル、これはもはや別次元の効果を生む。


 威力も効果も個人単発で発動するスキルとは桁違いだ。

 故にこそ、背徳の女神側もこれを阻止するために運命の乙女の取り巻きを陣営から引き剥がそうとしているのだろう。


 そしてこの連携スキルはこちらの攻撃をまったく寄せ付けなかった。

 それどころか、こちらも防御で手一杯になってしまう。


 聖斧の能力で大地の壁を何度も作るが、これも長くは保たない。

 おかげで次の防御の壁を作る作業に追われて反撃の一手が打てない状態になった。


 なのでフミコが合間を縫って攻撃を行っているが、次第にそれも限界に近づいてくる。

 フミコの体力が保ちそうになかった。


 (まずいな、このままじゃ撤退しないといけなくなるぞ……)


 額の汗を拭いながら焦りを感じる。

 さきほどからアビリティーユニット・アックスモードを使い続けているが、どうにも大地の壁を作る速度が落ちてきている気がするのだ。

 それだけではない、壁の強度も下がってきている。


 いくら取り巻き4人の連携スキルが強力とは言え、壁の耐久値もそこまで低くないはずなのだ。

 つまりは聖斧の能力の使いすぎで披露が貯まり実力が発揮できない状態に陥っているのだ。



 今までの異世界で能力を奪う際、自分は相手がこの状態になるのを待っていたが、まさか自分が追い詰められてその状態になるとは思ってもいなかった。


 (くそ! まだまだ実力不足ってことかよ!)


 歯がゆく思うが、今は嘆いても仕方ない。

 なんとか打開策を探さないと……


 とはいえ、フミコも見るからに疲弊していた。

 このままフミコに攻撃を任せ続けられそうにない。

 しかし、フミコは息を荒く吐きながらも笑顔で「まだ大丈夫、戦えるよ」と言ってくる。

 どう見ても、そんな風には見えなかった。


 (くそ! フミコにこんな事言わせて俺は何をしてるんだ! でも一体どうすれば……)


 考えて、そして疑問が湧いた。


 (ちょっと待て……俺たちは押されて力の使いすぎで疲弊してるが、()()()()()()()()()()()()()()()()?)


 それは戦闘が始まって少ししてから感じていた違和感だった。

 融合スキルに連携スキル。

 そこまで強力な技を連発しておきながら確認する限り、取り巻き男子4人は疲弊してるようには見えない。


 当然、この異世界では強力なスキルを使ったからと言って脱力感に見舞われるような消耗はしないと言われればそれまでだが、飛行船でのラピカとの戦いでクラウスがスキルを連発して疲労していたのを実際に見ている。

 そう、この異世界でも強力なスキルを使い続ければ体力を奪われて疲弊困憊するはずなのだ。


 なのに、彼らは今まったく疲弊していない。

 もちろん、疲弊しないようなスキルを使って連携スキルを生み出しているとも考えられるが、それにしては威力が尋常ではない。


 体力を消費しない程度のスキルを連携させてこの威力を生み出せるなら、誰も単独行動などしないはずだ。

 つまりは、弱い威力のスキルを会わせても、威力はそれなりにしか出せない。


 では彼らはなぜ強力なスキルを連携させて疲弊困憊せずそれを連発できるのか?

 疑問に思い、そして思い出した。


 ここに来る前の飛行船から脱出した後での合流地点でヘンリーとはじめて会った時、会話の中で言っていた事を……

 遠くにいる仲間と通信できると言った際、運命の乙女の能力についてこう言っていなかったか?

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」と……


 ここでようやく気がついた。

 この異世界での転生者と召喚者の争いのカラクリを……


 そもそも運命の乙女は背徳の女神の復活のカウンター機能として召喚される。

 ここでまず疑問に思うべきだった。


 なら召喚された運命の乙女は強大な力を有しているはずである。

 しかし、実際は運命の乙女は取り巻きたちに守られている。

 運命の乙女だけではない、背徳の女神も自ら運命の乙女を倒しにいかず「トリニティーブラッド」などという戦闘能力が高い集団を組織している。


 まぁ背徳の女神に関してはラスボスは最後まで戦わないなんてゲームか何かの設定と思えば気にならないが、運命の乙女に関しては少し腑に落ちない。


 何より、今戦っている取り巻き達のように疲弊せず強力なスキルを連発できるなら、そもそも彼らだけでいいはずだ。

 運命の乙女など召喚せずとも彼らだけで世界を救えばいい。

 なのに、実際はそうではない。

 彼らは彼らだけで背徳の女神に挑みに行かず運命の乙女を守っている……それはなぜか?


 その答えがようやくわかった。

 そう、ヒントならすでにいくつもあったのだ。


 グラスガムの金融街でシャルルと戦った時、彼女は言っていなかったか?

 「背徳の女神と運命の乙女の争いは言うなれば駒の奪い合い」と……


 つまりは、どれだけ自分以外の戦える戦力を揃えるかという盤上の勝負に近いという事だ。


 「そういう事かよ……つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 わかれば話は簡単だ。後は攻勢に出て決着をつけるのみ。

 疲弊しているフミコに頼むのは申し訳ないが、それでもお願いをする。


 「フミコ、まだやれるか?」

 「……うん、大丈夫だよ」

 「すまない、でもこれでケリをつける」

 「……でもあいつらを倒しても女は逃げたままだよ?」

 「いや、あかりならすぐ近くにいるさ」

 「わかるの?」

 「さぁ? ただヒースのスキルで近くに隠れているはずだ。そうでなきゃ取り巻き共がここまで大技を連発できるはずがない」

 「どういう事?」

 「まぁ、すぐにわかるさ。それよりも、疲労してるのに申し訳ないが()()()を使ってくれないか?」

 「……え?」


 フミコは驚いた顔をしたが、作戦を話すとすぐに頷く。


 「うん、わかった。多分、今の状態だと一発しか使えないけど」

 「十分だ! 無駄にしない! これで決める!」

 「わかった!!」


 言ってフミコは立ち上がると笑顔を向けてくる。


 「かい君を信じてる!!」

 「あぁ! 任せとけ!!」


 笑顔でサムズアップして見せるとフミコは隠れていた壁から飛び出す。

 そんな飛び出したフミコへと4人の注意は引きつけられるが、フミコはそのまま両手を頭上へと掲げた。

 否、フミコが掲げたのは両手ではなくある物だ。


 それは銅鏡、三角縁神獣鏡だ。

 その鏡裏の図画意匠を取り巻き達に向けていたが、自身と鏡を中心点として周囲の呪力が満ちていき鏡へと吸い寄せられていく。


 まるで嵐が吹き荒れているかのような強風が吹き荒れる。そして……


 「日は満ちた。その加護の元闇へと帰せ!!」


 言ってくるっと表面、鏡の部分を取り巻き達に向ける。

 すると鏡に収束した呪力を解放され、目も開けてられないほどの眩しいまでの光が放たれた。


 その光に4人の取り巻き男子達は怯んでしまう。


 その隙を突いて壁から飛び出し、取り巻き男子達が遮るその向こうへと駆け出す。

 運命の乙女とケリをつけるために。

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