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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
18章:受け継がれし鋼の魂

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受け継がれし鋼の魂(3)

3つのビークルが変形し、それらが合体して巨大なロボに姿を変えたのを見て思わず呆気に囚われてしまった。


「は?何あれ……なんか合体してロボットになったんだけど?マシーンアタックってそういう意味なの?」


そう口にした横で寺崎歩美は眉を潜め。


「え?ひょっとしてこの異世界ってロボットアニメの世界なの?ガ〇ダムだとかそういう……歩美、その手のジャンルはよくわからないんだけど」


そんな事を聞いてくるが、ガ〇ダムは合体しないので同じロボットものでもジャンルが少し違うと思うぞ?

日本で高校生してた頃は無趣味だったから俺もよくは知らないけど……

なので……


「いや、どうだろうな?まだこの世界の基本的な情報が手に入ってないから何とも言えないな」


そう口にしたところでフミコがこんな事を尋ねてくる。


「というかかい君、あれってティーの同類じゃないの?」

「うーん、まぁロボという点ではそうなんだろうけど……」


フミコのその言葉に、しかし頭を捻ってしまう。

いや、まぁ確かに同じロボットはロボットなのだが……やはりTD-66ともあれはジャンルが違う気がする。

そう、TD-66は自律型AI搭載の警護ドロイド。つまり人が何かせずとも勝手に動く、中で操縦する必要がないのだ。


一方であれはどう見ても、さきほどまで人が操縦していたビークルが変形して合体してロボットの姿となった。

つまりは中で人が操縦しないといけないわけだ。

決定的にTD-66とは土俵が違うだろう。


そう思っていると、今までの会話を横で聞いていたリーナが鬼気迫る表情で。


「マスター!あんなのよりティーくんのほうがかっこいいでしょ絶対!!」


そう訴えてきた。

いや、今そういう話ではなかった気がするのだが?

と、思わずリーナに言いそうになったところで。


「ちょっと、聞き捨てならないわね?私たちの“神″をあんなの呼ばわりなんて!」


背後から少し怒った口調で誰かが声をかけてきた。

思わず振り返ると、そこには金髪おさげ髪の見た目は10歳前後の少女が腕を組み、不満だと言わんばかりに頬を膨らませて立っていた。

耳が尖っている事から恐らくはエルフか何かだろう。


「えーっと?君は?」


彼女は一体何に対して怒っているのか?まぁ、リーナがあの合体ロボの事をあんなのと言った事に対してだろうと察しはつくが、とりあえずは愛想笑いを浮かべて尋ねてみる。

すると金髪おさげ髪の見た目は10歳前後の少女は。


「私はマーヤよ!それよりもどういう了見なわけ?助けてもらっておいて私たちの“神″を侮辱するなんて!!」


不機嫌そうにそう言ってこちらを睨みつけて来た。

いや、侮辱したつもりはないんだが?と弁明したいところだが、確かにリーナの物言いは捉え方ひとつで意味が変わってくる。申し開きができるものではないだろう……どうしたものか?と思っているとリーナが。


「ティーくんのほうがかっこいいもん!エマもイレーナもそう思うでしょ?」


そう言ってエマとイレーナにも同意を求めだした。

これにはエマとイレーナが困ったように見顔を合わせて、どうしようか?といった感じになっている。


おいおいリーナさんや。お怒りの、しかも貴重な情報源を持っているであろう現地人を刺激するんじゃありません!

ハラハラするじゃないの……


そう思っているとマーヤと名乗った金髪おさげ髪の見た目は10歳前後の少女が眉を潜めてこんな事を言い出した。


「はぁ?何?そのティーっていうの、聞いた事ないんだけど?もしかして新種のビースター?」


ビースター?なんだそれは?

もしかして、あの合体ロボの事だろうか?

そう思い尋ねてみると。


「な、なぁ君」

「マーヤよニンゲン」

「あぁ、そうだったね、ごめん。マーヤ、そのビースターってもしかしてあの合体ロボの事かな?」

「合体ロボ?あぁ……そういえば総大将がロボって昔は言ってたような……」


やはりその通りだった。

どうやらこの異世界の住人は合体ロボの事をビースターと呼んでいるらしい。

というよりも、あの合体ロボの固有名がビースターなのかもしれない。


何にせよ、その総大将ってのが転生者か転移者か召喚者であろう。

しかし、まだ引っかかる事はある。

それは……


「なぁマーヤ、あの見た目がキモい巨人は一体何なんだ?なんで俺たちの攻撃は効かなかったんだ?」


しかし、この質問を聞いたマーヤは眉を潜め。


「はぁ?何言ってるのあんたたち、記憶喪失なわけ?」


こいつはなんでそんな常識を聞いてくるんだ?とこちらに不審な目を向けてきた。

これは無理もないだろう。

自分だって日本で電車を前にして大の大人に「え?これって乗り物なの?乗れるの?まじで?」って聞かれたら何言ってるんだこいつ?と思うに決まっている。

つまりは自分が今聞いたのはそのレベルだという事だ。


(これはちょっと聞き方を変えた方がいいか?)


そう思った時だった。

マーヤは右手で顔を押さえて大きくため息をつくと。


「あっ……そうか、そういう事か……まさかまだミ=ゴの実験の被害者がいたなんて……この前助け出した連中だけじゃなかったのね」


そんな事を言い出した。

そして可哀想な生き物を見る目をこちらに向けると。


「あんなイカれた実験の被害にあったなら、そりゃ記憶が飛んでても仕方がないわね……配慮がなくてごめんなさい」


そう言って申し訳なそうに謝り、あのバイオ装甲巨人について話してくれた。

どうやら以前あったヤバい事件の被害者だと勘違いされているようだが、まぁ異世界から来たと言えない以上は説明が面倒だし、その勘違いに乗っかる事にした。


マーヤの話によると、事の発端は26年前。何の前触れもなく突如として空が歪み、そして次の瞬間には巨大な穴が空に開いて、そこからやつら化け物どもが現れたという。

空に開いた巨大な穴はすぐに塞がったが、その穴から降ってきた化け物どもは次々と街や集落を襲い、人々を惨殺していった。

さらにはその死体を溶解させて粘液に変え、その粘液でもって彼らが纏う気味の悪い装甲を強化していったという。


そんな彼らにこちらの攻撃は一切効かなかった。

物理攻撃もダメ、魔法攻撃もダメ、神の奇跡たる法術もダメ、何もかも通じない……まさに打つ手なしだ。

誰もが絶望し、ただ殺され連中の肥しになるのを待つだけだったその時だった。


再び空が歪み、大きな穴が空に開いたその時、あれは降臨したのだ。

そう、最強無敵のビースターが。


空から降臨したビースターは自分たちではまったく手がでなかったあの化け物どもを次から次へとなぎ倒していく。

その姿を見た人々はあれはまさに“神″だと崇めたのだ。


しかしそんな“神″であっても、化け物どもの頭目だけは倒す事ができなかった。

化け物ども、正式な名はバイオスターというらしいがそへの頭目、“神″いわく道化師のエムブロとやらは世界の最果てと言われる最北の氷の大陸へと逃げ、今なおこちらに威力偵察のつもりか単騎で化け物どもを送り込みながら侵略の機会を窺っているという。


そう、この世界ではかれこそ26年もあのバイオ装甲巨人と“神″たる最強無敵のビースターが死闘を繰り広げているのだ。何せバイオスターに対抗できるのは最強無敵のビースターだけなのだから……


「なるほど、この世界の現状は理解できた……けど」


マーヤの話で疑問に思う部分は多々あるが、最大の懸案事項はバイオスターとビースター、どちらも異世界転移者という事にならないか?という点だ。

そう、どちらもこの世界に召喚されたというわけではないだろう。

恐らくは何かしらの次元の歪みに両者とも巻き込まれてこの異世界に来たのだ。


現地人からすればビースターが助けに来てくれたように感じるだろうが、実際は何かしらの原因で元居た世界から次元の彼方に吹き飛ばされ、そしてこの世界に漂流しただけだろう。

恐らくはバイオスターとビースターは同時に次元の彼方に吹き飛ばされているはずだ。

ここに漂着したのが早いか遅いかの違いだけのはずである。


そういう意味では異世界転移者というよりは異世界漂流者と言うべきか……

何にせよ、ここで重要なのはどちらも地球から漂流してきた可能性が高いという事だ。

つまりは……


(ビースターを連れて来た総大将って人物と、バイオスターの頭目だっていう道化師のエムブロとやら両方から異能を奪わないといけないって事じゃないのか?ビースターの総大将はまだしも、道化師のエムブロは世界の最果てに逃げたって言ってなかったか?最北の氷の大陸て……つまりは北極に乗り込まないといけなってのか?)


有力な情報は得られたが、なんとも面倒な事になりそうだと思った時だった。

フミコがマーヤにこんな事を尋ねた。


「というか君」

「は?マーヤだけどニンゲン」

「あ、ごめんマーヤ。あとあたしもニンゲンじゃなくてフミコね」

「はいはい。で?何フミコ」

「……随分とえらそうな子だね?まぁいいや、26年も前の出来事を伝え聞いた話とは思えないくらいやけにリアルに語るけど、ここじゃ親に聞かされた体験談をそこまでリアルに言い伝えないといけないわけ?」


これを聞いたマーヤは何言ってんだと言わんばかりの表情になると。


「いや、そりゃ実際この目で見て体験した事語ってるんだからリアルなのは当然でしょ?ニンゲンと違ってエルフは長寿なんだから」


そう言って肩をすかして見せた。

確かにエルフがすんごい長寿なのはどの異世界でも共通だが、しかしマーヤの見た目はどう見ても10歳前後の少女である。

こんな見た目で100歳超えてるとか1000歳超えてるとかはさすがに許容範囲を超えるのだが?


そいう思い、恐る恐る尋ねてみた。


「えーっと実際体験したって、マーヤはちなみに今何歳なんだ?」


するとマーヤは鼻息荒く。


「ふふん!50歳だ!!もうすぐロースクールは卒業できるぞ!」


そうドヤってみせてきた。

50歳?まじかよおばはんじゃねーか!

と一瞬思ったが、しかし1000年以上生きるかもしれない長寿のエルフにしてはショボい数字じゃね?と感じてしまう。


実際マーヤはもうすぐロースクールを卒業できると言っていた。

ロースクールというものがエルフ世界における何なのかはよくわからないが、恐らくは年齢的にも言葉の響き的にも小学校みたいなものだろう。

つまりはお子様だ。

リーナ、エマ、イレーナより遥かに年上、いや俺よりも普通に年上なのだが、けど実態はリーナたちと同じ子どもじゃねーか!


そう思った時だった。

マーヤの後ろでガサガサと音がした。

その事にマーヤは無言で振り返り、自分もその方向を見る。

フミコも寺崎歩美もヨハンもリトルトラベラーズの面々も視線がその一点に集中なか、音がしたサトウキビ畑のような場所から大きな草をかき分けて5メートルほどの大きさのバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物が姿を現した。


そのバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物はこちら向くとゆっくりと口を大きく空けて涎を垂らしながら気味の悪い大きな奇声を発した。

それを見たマーヤは驚愕の表情を浮かべ。


「ひ!で、でたー-------!!!!」


とバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物に負けず劣らずの大声で叫び、右手を突き出してその右腕に巻いているブレスレットに手をかける。

そのブレスレットにはゲームウ〇ッチのような外見の液晶画面とボタンがついた装置が装着されており、マーヤは素早くボタンを押した。


すると液晶画面にトレーラーのようなマークが表示され、次の瞬間には大型トレーラーが一体どこから現れたのか?すでにマーヤの横に待機しており、そしてマーヤは腰のベルトに吊り下げたホルスターからカードを素早く引き抜き、それをゲームウ〇ッチのような外見の液晶画面とボタンがついた装置の端にスライドさせ叫んだ。


「ビーストレーラー!!は、はやくそいつ轢いちゃってー-------!!!!」


その叫びに呼応するように大型トレーラーはクラクションを鳴らすとバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物目掛けて猛スピードで発進し、そのまま轢き飛ばした。

その光景を呆気に取られてみていたが、しかし数メートルも轢き飛ばされたバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物は次の瞬間にはフラフラしながらももう立ち上がり、こちらを威嚇しだす。


そんなバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物を見てマーヤはさきほどまでの慌てようとはうって変わり、冷静さを取り戻してニヤリと笑うと。


「ふっふっふ、下級バイオスターめ!今度こそ轢き殺してくれるわ!」


そう言って腰から新たなカードを引き抜こうとするが、しかし大型トレーラーはマーヤを無視してどこかへと走り去ってしまった。

これにはマーヤも慌てた表情となる。


「ちょ、ちょっとぉぉぉ!!どこ行くのビーストレーラーーー!!私を置いていかないでー---!!ねーってばー----!!!」


マーヤの叫びも虚しく、大型トレーラーは無情にも止まる事無く、さきほど合体して巨大ロボとなったビースターのほうへと走り去っていった。

考えるまでもなく巨大ロボのほうに呼ばれたんだろうな。

もしかしたらあの大型トレーラーも変形して合体するのかもしれない、そう思っていると。


「ど、どーすんのよこれー----!!!防護フィールド発生装置持ってきてないんだけどー--!?というか、なんでみんなまだ来てないの?遅すぎでしょ!!」


マーヤが発狂しだした。

そんな年上幼女エルフを見て思わずため息がでてしまう。


「はぁ、仕方ない……俺たちで何とかするしかないか」


この言葉を聞いたフミコは首を傾げ尋ねてくる。


「何とかって、かい君どうするの?」


そんなフミコの疑問に。


「どうするも何も、あの化け物……バイオスターだったか?あれはロボでしか倒せないというかダメージを与えられないんだろ?だったらロボを使って戦えばいいんじゃないか?」


そう言ってリーナのほうを向く。

するとリーナはこちらの意図を理解して力強く頷き。


「うん!ティーくんがあんなのに負けるはずない!!」


そう言って空を見上げ叫んだ。


「ティーくん!!きて!!」

『はいお嬢様』


すると上空で光学迷彩で姿を消して待機していたTD-66が光学迷彩を解いてその姿を現し、そのまま降下してくる。

TD-66は勢いよく地面に着地し、そして目の前の敵であるバイオ装甲をまとった4足歩行の怪物と対峙した。


『お嬢様には指一本触れさせません』


そんなTD-66を見てマーヤは開いた口が塞がらないといった表情をしていた。

そんなマーヤに苦笑しながらも、こちらも右手を突き出して召喚の準備をする。

それを見たフミコが尋ねてきた。


「かい君、何するつもりなの?」

「決まってるだろ?機械の騎士さんだけに戦闘を押し付けるわけにはいかない。バイオスターにはロボの攻撃しか効かないっていうなら、ロボを召喚するまでだ!!召喚……こい!クラタス!!」


叫んだと同時に突き出した右手の先に魔法陣が浮かび上がり、直後そこから高さ4メートルはあるメカが出現した。

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