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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
17章:混沌の戦場

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断ち切るべき畏怖の念 (12)

 率直な感想を述べるなら、ザ・マザー<激情態>の振り下ろしたマグマ・エンヴェロップ・スライサーは想像以上に恐ろしい異能であり、もう二度と見たくないく部類に入るものだった。


 これまで数多の異世界を巡ってきて、それなりの数の転生者、転移者、召喚者の持つ理不尽と思えるほどのチート性能を見てきた。

 転生者、転移者、召喚者でなくとも、圧倒的な力を誇る現地人やその異世界が抱える理不尽な脅威も目の当たりにしてきた。


 さらにはイカれた異世界渡航者の先輩であるアシュラや何を考えているかわからないハーフダルムとも一戦交え、その絶望的な力の差も見せつけられてきた。


 そう、これまで何度も自分は経験してきた……してきているはずなのだ。

 どう考えてもこちらが不利な、勝てる見込みのない圧倒的な絶望的状況と言うものを……

 だが、そんなこれまで経験してきたどんな状況もザ・マザー<激情態>の前では霞んでしまう。

 そう、根本的な部分であれは他とはレベルがかけ離れているのだ。

 レベル:ビリオンは伊達じゃないというわけである。


 ココがマグマ・エンヴェロップ・スライサーを見て、震えながら星をスライスすると言った時は冗談半分に思っていたが、実際に目の当たりにすると確かにあれは()()()()()()()()()()


 正確には大地を破壊し地面をかち割るのではなく、地面の形状や素材を変化させ、まるでスポンジ生地をナイフで切り分けるかのようにスムーズにスライスするのだ。

 つまりは星をスライスするために地面の材質をやわらかく切りやすい()()()()に変えてしまう。

 いや、地面だけでなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういう異能だ。


 まったく、星そのものに干渉して思いのままに作り変える事ができてしまうなんて、そんなのありかよ? 反則だろ!

 そして今回はかわせたが、また次もかわせる保証はない。

 ここは精神世界だが、それを抜きにしても星に干渉して思いのままにできるという事は、こちらが攻撃をかわせないように星の構造を作り変えて、回避が困難な状況を作りあげてから攻撃を仕掛けてくるという事も可能であり、次はそうしてくる可能性がある。


 何にしても次の攻撃が放たれる前にこちらから仕掛けないと受け身になるのはまずいだろう。

 とはいえ、現状ではどの混種能力もザ・マザー<激情態>には届いていない。

 つまりは決定的な一手が打てない状況だ。


 だからと言ってここで怖気づくわけにはいかない。

 それにザ・マザー<激情態>を倒す役目はあくまでココだ。ココが倒さなければ意味がないのだ。

 ならば自分の役目はココのサポートに徹する事。

 そうあくまで主役はココなのだ。

 だからこそ、今はココが一歩を踏み出せるように促さなければならないのだが……


 (問題はそこなんだよな……はぁ、どうしたもんか)


 そう思いながら双眼鏡を手にしココの様子を確認する。

 するとココが怒った表情でザ・マザー<激情態>に殴りかかっていた。

 恐らくは自分が殺されたと思って激高し、拳を振るったのだろう。


 なんだココのやつ、やればできるじゃないか!

 とはいえ、あれは恐らくは一時の感情に身を委ねた突発的な行動であり、あれを持って恐怖を克服したとは言えないだろう。

 それでも、一歩とはいかなくても、少しは前進できたことに変わりはない。

 だったら、その背中を更に押してやるのが自分の役目だ。


 (待ってろココ! すぐに向かうからな!!)


 ココの放った拳はかわされ、ザ・マザー<激情態>はココへとマグマ・エンヴェロップ・スライサーを振り下ろす。

 まずはココと振り下ろされたマグマ・エンヴェロップ・スライサーの間に割って入らなければならない。


 それには超加速で事足りるだろう。

 今はユニットリンクで能力値が向上している状態でもある。ならば瞬きする間にあの間に割って入れるはずだ。

 問題は振り下ろされているのがマグマ・エンヴェロップ・スライサーという点である。


 あの灼熱の刃を真正面から受け止められる刃は存在しないだろう。

 少なくとも現状、自分が有している異能の中にそんなものはない。

 だとすればどうすればいいか?


 とはいえ、対抗できる手段がないわけではない。

 しかし、それは現状ではどう足掻いても無理なのだ。

 そう、アブソーブ・コネクターがない限りは……


 ヤーグベルトとの戦いにおいてプロトアブソーブ・コネクターで生み出したタイムブレード。

 あれを使えば恐らくはマグマ・エンヴェロップ・スライサーを無効化できるかもしれない。

 何せ星全体を作り変えてしまう異能と斬ったり触れた相手の時間を戻したり速めたりする事ができる異能がぶつかるのだ。

 どちらが勝るかの前に互いの異能が相殺される可能性はある。


 となれば、ザ・マザー<激情態>が放つ脅威の一端を潰す事はできるのだ。

 しかし、今はこの手は使えない。アブソーブ・コネクターがない以上はタイムブレードは生み出せないからだ。

 まったく肝心な時に完成品がないとはどういう事だ自称神め! と文句を言いたくなるが、実際はアブソーブ・コネクターが手元にあってもタイムブレードを生み出せたかは微妙なラインであった。


 何せタイムブレードを生み出すために必要な異能であるタイムリープ能力がアシュラによって封じられたままなのだ。

 ならば結局はこの手は使えなかっただろう。


 であるならば、あれに対抗できる手立ては何もないのか?

 そう思った時だった。ふと、まだ試していない混種能力があった事を思いだす。


 (そういえば、あれって……)


 アビリティーチェッカーを取り出し、その混種能力のエンブレムを確認する。

 それは無数の剣が扇状に展開しているデザインのエンブレムであった。


 その混種能力はこれまで奪ってきた異能の中のすべての属性を収束し統合させ、いわゆる「勇者」や「英雄」「剣聖」「剣神」「剣姫」と呼ばれる類の転生者・転移者・召喚者たちの剣にまつわる異能をすべて混ぜ合わせ、更には「魔王」「暗黒騎士」といった転生者・転移者・召喚者たちの剣にまつわる異能もプラスした究極の異能の剣を生み出すというものである。

 そんな混種能力のエンブレムをタッチし、現状有している最強の異能の剣を生み出し、超加速でもってココとマグマ・エンヴェロップ・スライサーの間に割って入った。


 「混種能力:剣」で生み出した目も開けていられないほどの眩しい輝きを放つ刃振るってマグマ・エンヴェロップ・スライサーを受け止め、そのまま横へと受け流した。

 その事にザ・マザー<激情態>は驚き声をあげた。

 どうやら「混種能力:剣」はマグマ・エンヴェロップ・スライサーに対抗できるらしい。


 だったらこれで持ってココを護り、ココが反撃にでる手助けをしよう。

 そう思いココに声をかける。


 「ようやくぶつかり合う気になったみたいだなココ!! さぁ、反撃開始だ!! 一緒に倒すぞ!!」


 これにココは力強い言葉で返してきた。


 「はいですカイトさま!! 倒しましょう! 一緒に!!」


 しかし、それを聞いたザ・マザー<激情態>がマグマ・エンヴェロップ・スライサーを真横に振るい、怒りを露わにする。


 「倒す? 倒すだと!? 愚女がヒューマンのオスが戻ってきたくらいで調子に乗るな!!」


 ザ・マザー<激情態>は叫び、その全身を禍々しいオーラで包み込む。


 「っ!! 自己進化(ボディーメイク)か!! させるかよ!! ココ、畳みかけるぞ!!」

 「はいですカイトさま!!」


 それを見て慌てて「混種能力:剣」を振るい、ココも拳を握りしめるが、しかしそれよりはやくザ・マザー<激情態>の全身を禍々しく包み込んでいたオーラが形状を変えて実体化し、自分とココへと襲い掛かる。

 それはまるで無数の鋭利な棘で全体を覆い尽くされた触手であった。

 そんな触手がザ・マザー<激情態>の両肩からそれぞれ4本、計8本飛び出しこちらに襲い掛かってきた。


 「っち!!」


 これを「混種能力:剣」を真横に振るって払いのけようとするが、しかしこれを触手が絶妙な動きで持って回避、8本すべてがそれぞれ独立した動きで回避行動を取りながらこちらへと迫ってくる。


 「面倒な!!」


 そう叫びながら、ちらっとザ・マザー<激情態>を鑑定眼で視てみる。

 すると自己進化(ボディーメイク)した事によってさらに種族名が変化していた。

 パーフェクトギガバイソン・エクシードへと……


(もうどれだけ種族名変えたら気が済むんだ? 最終的にどうなりたいんだよ、こいつ……)


 そう呆れそうになった時だった。それぞれ独立して動き回る触手全体を覆う棘が眩しく発光しだし、そのままレーザービームを放ってきた。


 「っ!!」


 これを「混種能力:防御」を発動して受け止めようとするが、あっさりと砕かれてしまう。


 「まぁそうだろうと思ったよ!! ココ!!」

 「わかってますカイトさま!! こんのぉぉぉ!!」


 迫るレーザーをココはすべて拳を振るって弾き飛ばす。

 だが……


 「それにばかり気を配ってていいのか? 愚女」

 「っ!!」


 レーザーをすべて弾いたココの目の前にはザ・マザー<激情態>が立っていた。

 一体いつの間に? そんな疑問を口にする前にザ・マザー<激情態>はココへとマグマ・エンヴェロップ・スライサーを振るっていた。


 「ココ!!」


 慌てて駆け寄ろうとするも。


 「邪魔だヒューマン」


 ザ・マザー<激情態>はこちらを見ずに肩から触手を振るって触手の先からレーザーを乱射してくる。


 「っち!」


 これを「混種能力:剣」を振るって切り落とそうとした時だった。


 「このクソ親!! ココのカイトさまに手を出すな!!」


 ココが叫び、その全身を眩しいオーラで包み込む。


 「あれはっ!! ココ!!」

 「これは!! 愚女め貴様!」

 「いい加減失せろですこのクソ親!!」


 ココが叫んだと同時、ココの全身を包んでいた眩しいオーラはパリンというガラスが砕けたような音とともに周囲に暴風をもたらし、触手が放つレーザーを吹き飛ばして消滅した。

 そして、そんな眩しいオーラが消えた後にはどこか雰囲気が変わったココがそこに立っていた。

 それを見たザ・マザー<激情態>は忌々しそうにこう口にする。


 「何一族の許可なく自己進化(ボディーメイク)してやがるんだ愚女!!」


 そう、ココはあれだけ拒否していたにも関わらず、ついに自己進化(ボディーメイク)したのだ。

 畏怖の対象たる母親から最愛の人を護るために、立ち向かうために意を決したのだ。

 そんなココの種族名は鑑定眼で覗くとこう変化していた。


 アルティメット・ギガバイソンと……

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