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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
17章:混沌の戦場

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ココ救出奪還作戦 (15)

 (こいつ、本当に何でも弾けるっていうの? 冗談でしょ?)


 フミコは予想していたものの、いざ自らが放った2発目の強烈なつむじ風の攻撃をリュカルが弾くのを目にすると、思わず驚愕の表情を浮かべてしまった。


 レーザーの刃や鞭に関しては、まぁ何かしらの瞬間的な肉体強靭化を行ったのだろうと考えていたのだが、風そのものを弾いたとなればそれでは説明がつかない。

 何かしらの異能でも使わない限り、風そのものを弾くなんて芸当は常人にはできないからだ。


 とはいえ、確かにリュカルは転生者ではあるが魔物である。

 ならば、そのような芸当ができてもなんら不思議ではないだろう。

 であるが、それでも風をすべて弾くなんて事が魔物とはいえ、当然のようにできるとは思えなかった。


 もうここまでくると本当に異能はパリィと精神干渉だけなのか? と疑いたくなってくる。


 (とはいえ、ココだったら涼しい顔して普通にやりそうだなと思ってしまうのがなんとも言えないところなんだけど……)


 フミコはそう思って一瞬苦笑するとすぐに頭を切り替え、再び神楽を舞って大麻を再び高々と掲げ、そして正面を向いて一気に振り下ろす。


 (心を乱すな! 今は検証する事に集中するんだ!)


 直後、バルコニーの遥か上空で熱風が吹き荒れると、それはやがて強力な熱波となって真下にいるリュカルを襲う。

 だが……


 「弧月閃」


 リュカルは腕から生えた刃でもって、まるで宙に扇の弧を描くような動きを見せ、()()()()()()()()()()


 「な!? ほんとどうなってるのよ!?」


 目には見えない、そもそも弾けるものかもわからない熱波を弾く……それはもはや異能ではなかろうか?

 フミコは軽く舌打ちしてから今度は神楽を舞う事無く神楽鈴を鳴らし、何かを薙ぎ払う様に大麻を真横に振るう。

 直後、フミコの目の前に火花が散り、瞬く間にそれは巨大な火の玉となってリュカルへと放たれる。


 だが、リュカルはこれに反応する事はない。防御の構えすら見せず、ただ仁王立ちで迫る火の玉を待ち構える。

 そしてそんなリュカルを火の玉は飲み込み、焼き尽くそうとするが、一瞬にして火の玉は霧散し消滅した。


 そんな光景を見てフミコは。


 (なるほど、同じ神道呪術でもこれは初見パリィになるわけか……って事は雷系や水系も初見パリィで弾かれるってわけだね)


 検証結果にひとり頷いてから。


 (だったら全属性の攻撃をひとしきり放って初見パリィを使い切らせてから、どこまで対応してくるか試すか)


 そう考え、神楽鈴を鳴らして大麻を振るい、稲妻を放つ。


 それからフミコはリュカルに対し、現在扱える神道呪術の属性すべてをリュカルにぶつけた。

 そして、それらは当然ながら初見パリィによってすべて弾かれてしまったが、気にする事はない。

 本当の検証はこれからなのだ。


 (さて、それじゃ本当にどんな呪術も弾くのか試させてもらうよ!!)


 フミコは神楽鈴を鳴らして大麻を振るい、通常であれば真正面から受け止める事が不可能な、対処が困難な神道呪術を次々と放っていく。

 とはいえ、フミコは神道呪術をまだまだ習得できたとはいいがたいレベルだ。

 なので、その威力も規模も本職のものとは比べ物にならず、効果は格段に落ちる。


 呪力を単純に扱う黎明期の呪術たる鬼道を操るフミコにとって、呪力の扱い方が複雑化した中世から現代の呪術は非常に扱いずらいのだ。

 それでも何とか論理を理解し、曲がりなりにも習得に漕ぎつけたわけだが、実戦でメインの攻撃手段として行使するにはまだまだだったようだ。


 しかし、今この時に限って言えば、それはよかったのかもしれない。

 何せリュカルには連続パリィの先にカウンターアタックという奥の手がある。

 ならば不完全な状態で威力がそこまで高くない神道呪術ならば、カウンターアタックで跳ね返ってくるダメージの総量もそこまで多くないはずだ。


 そう思っていたのだが……


 (これで60回!)


 連続パリィの回数が60回に達した時、リュカルがこれまでとは違った動作を見せた。

 それまでは、まるでか〇は〇波でも放つかのような動作をおこなってビームを放っていたのだが、今回はそのような動作はせず、ただ両手を大きく広げただけであった。

 しかし、広げた両手の先はこれまでのカウンターアタックを放った時以上に眩しく虹色に光輝きだす。


 そんな光景を見てフミコは思わず息を飲み込んだ。


 「何あれ……ものすごくヤバそうな気配がするんだけど」


 冷や汗が頬を伝い、リーナ(成長ギャル化版)が言っていた言葉が脳内で木霊する。




 「あと気をつけてね? カウンターアタックは10回、30回、60回と大台に達するたびにそれまでの弾いたダメージ総量が跳ね返ってくるわけだけど、60回目からは60回弾いた攻撃総量プラス10回目までのダメージ総量と30回目までのダメージ総量も加算されて跳ね返ってくるから! 冗談抜きでマジヤバだし!」




 リーナ(成長ギャル化版)が言っていた60回目のカウンターアタック。

 ここからは単純なダメージ総量が跳ね返ってくるだけではない、そこにプラスしてそれまでに発生したカウンターアタックのダメージ量も上乗せされるのだ。

 となれば、このまままともにカウンターアタックをくらえば、確実に瀕死の重傷を負うだろう。


 たとえ今回はそこまでのダメージを負わなくても、次の90回目は許容できないダメージ総量になっているはずだ。


 「確かにこれはちょっとまずいかも……さすがにもうこれを使わないとまずいよね」


 フミコはそう呟くと、両手に持っていた神楽鈴と大麻を手放し、霧散させると右手で首からかけて白衣の胸元に隠していたペンダントを引っ張り出す。

 そのペンダントには無数の宝石が散りばめられていた。


 フミコはそのペンダントを強く握りしめるとリュカルを睨みつけ、無駄だとわかっていても左手に人と同じ高さの(とはいえ、当時の倭人の平均身長と同程度だが)地上に置いて構えるタイプの朱色で塗られ、装飾品である巴形銅器が取り付けられた倭国大乱時代の楯を構える。


 そんなフミコに対し、リュカルは眩しく虹色に光り輝く広げた両手を、まるで目の前に飛んできた蚊をパチンと叩き殺すかのように勢いよく叩きつけた。


 「さぁ!! 今度こそこれで終わりだ!! くらうがいい!! カウンターアタック!!」


 勢いよく叩きつけ、重なり合ったリュカルの両手の先から目を開けていられないほどの眩しい虹色の光量があふれ出し、それは虹色の光の濁流となってフミコに襲い掛かり、そしてフミコを飲み込んだ。

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