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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
17章:混沌の戦場

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ココ救出奪還作戦 (11)

 フミコはリュカルが放ったビームの直撃を受けた。

 とはいえ、カウンターアタックは何をしたところで絶対に回避できない攻撃だ。こればかりはそういうものだと割り切って受け入れるしかない。


 とはいうものの、ビームの直撃を受けたフミコは少し後方に弾き飛ばされはしたが、目に見える形での被害はそれだけで、さほどダメージを受けたようには見えなかった。

 とはいえ、それは最初のカウンターアタックだからだ。


 カウンターアタックはパリィの連続成功回数が10回、30回、60回、90回、120回と大台に達した時に発動し、それまでに弾いた攻撃のダメージ総量を一辺に相手に叩き返す攻撃である。

 つまりは最初から莫大な攻撃力を誇る大技でも連発していない限り、まだダメージ総量がそこまで蓄積されていない最初のカウンターアタックである10回連続成功時の攻撃では当然、相手を打ち負かすほどの攻撃力にはならないのである。


 (ダメージはまったくと言っていいほどない。とはいえ、次の30回の時のカウンターアタックはそうはいかない……それまでに何とかしないと!)


 少し後方に弾き飛ばされたフミコは体勢を立て直し、構え直したレーザーウィップをリュカルに向かって再び叩きつけた。

 これをリュカルはさきほどの「初見パリィ」の時と違い、腕を振るって腕から変えた刃を使ってレーザーの鞭を弾く。

 続けざまにフミコはレーザーの鞭を振るい、軌道を読みづらい動きと速さでもってリュカルに叩きつけるが、しかしリュカルは目を見張る運動神経でこれを弾いていく。


 そんなリュカルの動きにフミコは思わず感心してしまう。


 (こいつ……本当に異能でも何でもなく自身の実力で見極め、弾いているのか! とんでもない集中力と洞察力だな…)




 「リュカルの扱う異能は基本それだけ! 初撃パリィ、初見パリィ、カウンターアタックの3つだけだし! まぁ、パリィを連続成功させるたびに何かしらの異能ボーナスは発生してるらしいから、正確にはそれだけじゃないっちゃないんだけどねー。でもその発生した異能ボーナスを使ってる様子はないんだよね~どういうわけか。まじありえなくない? 勿体なさすぎっしょ! まぁ単純にリュカル本人がその異能ボーナスの使い方を知らかったり? 発生している事に気付いてなかったり? それとも使うつもりがマジナッシングなのかわからないけど」


 そう言って肩をすかしてみせるリーナ(成長ギャル化版)に寺崎歩美がこんな質問をぶつけた。


 「でもカウンターアタックを発動するためには連続して相手の攻撃を弾き続けなきゃいけないんでしょ? それって集中力持つの? 相手がこれが通じないならこれはどうだ? って感じで次々と温存している隠し玉を使ってくれたら初見パリィの連続発動でどうにかなるだろうけど、そうじゃなかったら自力ですべての攻撃を弾かないといけないわけでしょ? 厳しくない? だって絶対にかすり傷くらいは普通負うでしょ。でもカウンターアタックを使うためにはそれもダメって事なんでしょ? 無理ゲーでは?」


 そんな寺崎歩美の疑問にリーナ(成長ギャル化版)は。


 「まぁ、ぶっちゃけ常人には厳しいと思うよ? それこそ、自分と相手との実力差が天と地ほど離れていたなら難しくはないっつーか超余裕ぶっこけるけど、実力が拮抗している相手に対して、すべての攻撃を弾け、絶対にかすり傷も受けるな! なんてできないっしょ? そんなの無理! でもリュカルはそれができちゃうんだよね、集中力やばくない? あーしには無理」


 そう言って肩をすかしてみせた。


 「それだけリュカルってやつの実力はすごいって事か」

 「ま、ぶっちゃけやばいよね? どんな攻撃にも即座に対応できるんだから、反則っしょ! 初見パリィは何もしなくても勝手に弾いてくれるけど、次の瞬間からは自分で何とかしないといけないわけだし? それを初見パリィのわずか一瞬で見極めて即座に対応できるように体を動かすわけだよ? ありえなくない? だって攻撃によっちゃ筋肉の動かし方や体の柔軟性も変化させなきゃいけないかもしれないのに、それを瞬時に理解して行動に移せるって並大抵じゃ無理っしょ! 1回失敗して学習したとかならわかるけど、カウンターアタックを成功させるためには失敗から学ぶなんて温い事は言ってられないわけだしね」


 リーナ(成長ギャル化版)のその言葉に寺崎歩美はドン引きだと言わんばかりに顔を引き攣らせた。


 「いや、何そのチート。もうその対応力自体が異能じゃないの」


 そんな寺崎歩美にリーナ(成長ギャル化版)は告げる。


 「あゆっち、異世界渡航者として転生者、転移者、召喚者と相対するってそういう事だよ? マジ目に見える形の奪える異能だけじゃなく本人の運動神経や生まれ持った才能とも対峙しないといけないわけだし? だからあゆっちも覚悟マジ決めるっしょ」

 「覚悟って……」


 困惑する寺崎歩美を見てフミコは小さくため息をつき。


 「で? そのリュカルはどこまで対応できるの?」


 そう尋ねた。

 これにはリーナ(成長ギャル化版)も首を傾げた。


 「どこまでって?」

 「そのままの意味だよ。通常攻撃まで? それとも異能も……魔法なんかの攻撃にも対応できるの? 初見パリィで異能は弾けるにしても、自力で弾く手段がなければそれまでじゃないの?」


 フミコの質問にリーナ(成長ギャル化版)は真顔になると。


 「ぶっちゃけ、何をやっても弾かれる。それがリュカルの恐ろしいところだし」


 そう言ってから声のトーンを低くして、こう付け加えた。


 「あと気をつけてね? カウンターアタックは10回、30回、60回と大台に達するたびにそれまでの弾いたダメージ総量が跳ね返ってくるわけだけど、60回目からは6()0()()()()()()()()()()()()1()0()()()()()()()()()()()()()3()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 冗談抜きでマジヤバだし!」


 リーナ(成長ギャル化版)の語ったその内容に寺崎歩美は思わず青ざめる。


 「は? 何それどういう事? それってずるくない? つまりは90回目は……」

 「うん、90回目までの攻撃総量+10回目までの総量+30回目までの総量+60回目の総量ってヤバいダメージ数を負っちゃうっしょ! で、120回、150回、180回となったら……マジ考えたくなくね?」


 これを聞いたフミコは小さくため息をついた。


 「つまりは最低でも60回パリィされる前にケリをつけないといけないってわけか……」




 フミコはリュカルに対しレーザーの鞭を連続で振るい続けるが、どれだけ変則的な動きをしてもリュカルは腕の刃ですべて弾き返す。

 リュカルがフミコが放った攻撃をパリィし損ねる事はない。

 フミコはレーザーの鞭を振るいながらも考える。


 (パリィされた回数を数えながら、こちらも戦略を組み立てないといけない……まったく面倒な相手だけど……でも確かに、この異能を奪えれば、これから先の戦いは……特にザフラやアシュラと戦う時にはかなり優位になる!! つまりは絶対に手にれないといけない異能だ!!)


 フミコはレーザーの鞭を振るうのをやめ、アビリティーユニットのボタンを押しレーザーの鞭を消すとアビリティーユニットを懐にしまい、その手に94式拳銃を出現させる。

 この日本陸軍が開発した欠陥満載の、接収した連合国の技術者から自殺拳銃と揶揄された拳銃を手にして、フミコはリュカルの眉間目掛けてためらわず引き金を引いた。


 銃声とともに銃口から8mm南部弾が放たれリュカルを襲うが、しかし当然ながら初見パリィでリュカルには弾かれてしまう。

 これは織り込み済みなので気にせず続けざまに拳銃を撃ち続ける。

 そして、これらをリュカルは目に留まらぬ速さで腕を振るい、腕から伸びた刃で弾丸をすべて弾いた。

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