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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
17章:混沌の戦場

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ココ救出奪還作戦 (3)

 召喚され魔法陣の中から飛び出してきたリーナ(成長ギャル化版)を見てフミコはげんなりした顔になり。


 「はぁ、本当に召喚しちゃったよ……別にいらないのに」


 そう言ってあからさまに不機嫌となった。


 リーナ(成長ギャル化版)は召喚されてすぐに自分のところに笑顔で来ると猛烈な勢いで相槌を打つのも不可能なほどのマシンガントークを繰り出してきたが、視界の端にそんな様子のフミコを捕えたのだろう。

 ニヤニヤしながら自分との話を早々に切り上げ、フミコの元へと近づいていくと。


 「あれれ~? フミコお姉ちゃんどうしたんすか? ダメっしょ、そんな不機嫌そうな顔して~あ! もしかして、あーしとマスターが仲良くしてるから嫉妬しちゃったんじゃね? やだなー、フミコお姉ちゃんに嫉妬させちゃうくらいまでの仲にあーしとマスターなっちゃったか~これはひょっとしてマスターとワンチャンあるんじゃね?」


 そんな事をにやけ顔で煽るように言い出した。

 おいコラやめなさい! そんな事言ったらフミコがブチ切れて面倒な事になるでしょーに……

 案の定、フミコは顔を引き攣らせ、ピキィと青筋を立てると。


 「リーナちゃん、ちょー~っと向こうでお話しよっか?」


 そう言って親指で背後を指す。そんなフミコの姿は誰が見てもわかるほどの殺気を放っていた。

 そんなフミコにリーナ(成長ギャル化版)は。


 「も~フミコお姉ちゃん、ただの冗談っすよ冗談! も~何本気にしてんすか! マジやばいっしょ!」


 そう言って笑いながら流そうとするが、しかし、その顔には大量の汗が滝のように流れていた。

 そんなリーナ(成長ギャル化版)に対し、今まで蚊帳の外だった寺崎歩美が。


 「いや、めっちゃ動揺してるやん」


 思わずツッコみを入れた。そして、そのついでにフミコに尋ねる。


 「で、先輩誰ですこの方? 先輩の仲間って事でいいんすか?」


 寺崎歩美のこの質問にフミコが答えるよりも早く。


 「っ!!」


 リーナ(成長ギャル化版)が反応した。

 とはいえ、その反応はどうにも今までのものとはまったく違っていた。


 これまでのリーナ(成長ギャル化版)は召喚で呼び出すたびに「若い時の〇〇だー!」と帯同している仲間に反応するのが恒例であったのだが、しかし寺崎歩美に対して、そんな反応を一切見せなかったのだ。

 とはいえ、寺崎歩美は現在、異世界渡航者としての指導を受けるという名目で臨時で行動を共にしているに過ぎず、自分たちの仲間というわけではない。

 ドライだと言われるかもしれないが、普通に考えれば今回の異世界が終わればこれっきりという関係であるといえるだろう。


 確かに彼女の言動からはこれからも自分たちに……というよりフミコについて行く気満々の気配が見て取れるが、あの女神を自称する白亜がそれを許すとは思えない。

 そして、最近はまったく姿を見せないが、神を自称する老人であるカラス、カグも同様だろう。

 であるならば、リーナ(成長ギャル化版)が単純に寺崎歩美の事を知らなかったという可能性もあるにはある。


 だが、そうであるならば、最初に示す反応は寺崎歩美を見て「どちら様?」と言いたげな表情をしたりするはずだ。

 しかし、リーナ(成長ギャル化版)はそんな反応を示さなかった。

 示した反応は初対面の人に向けるものではなかった。


 そう、明らかに見知った顔を見て驚いたといった具合の表情をしたのだ。

 いうなればそれは、まるで幽霊に出くわしたような……ここにいるはずのない()()()()()()()()()()を……


 そんなリーナ(成長ギャル化版)の反応に気付かず、フミコは寺崎歩美の質問に答える形でリーナ(成長ギャル化版)を紹介しようとして。


 「あぁ、この子はリーナちゃんっていって……ってリーナちゃん?」


 そこでようやくリーナ(成長ギャル化版)が驚いた表情をして固まっている事に気付く。

 リーナ(成長ギャル化版)はフミコに声をかけられ、はっとして我に返り。


 「あ、え? えぇっと……いや~あゆっちじゃん、()()()()! 元気にしてた?」


 慌てた様子でそんな事を言い出した。

 そう、「()()()()~」ではなく「()()()()!」と……


 そのリーナ(成長ギャル化版)の言葉に寺崎歩美が眉を潜める。


 「は? おひさ? いや、今はじめて会ったんだけど?」


 この寺崎歩美の指摘にリーナ(成長ギャル化版)は頭を軽く叩く動作をしながら。


 「だよねー? あははー! これは一本取られたじゃん、もー! マスターにフミコお姉ちゃん、あゆっちにちゃんと事前にあーしの事、説明しといてあげなきゃダメっしょ? 混乱してんじゃん」


 そういつもの軽い調子で言うが、しかし誰の目から見てもリーナ(成長ギャル化版)はあきらかに動揺しており、それを隠しきれないでいた。

 なので自分とフミコは目を合わせて首を傾げる。


 一体どういう事だろう? と……




 寺崎歩美にリーナの事と今の目の前にいるリーナ(成長ギャル化版)について説明する。

 これを受けて寺崎歩美はまだ若干、目を細めて首を捻ってはいるが理解はしたようだ。


 「な、なるほど……同い年くらいに見えるけど、実際は年端も行かない幼女で、この姿はそんな幼女の成長した未来の姿と……いや、姿だけでなく実際にそれだけの時間も経過してちゃんとこの姿になっているから、つまりは未来人ってわけか……そういう事だよね?」

 「まぁ簡単に言うとそういう事だな、未来人っていうのは何か違う気もするけど。俺たちの今の時間経過とリーナちゃんが本来いるべき異世界の時間の流れが違うってだけだから……」

 「それ、何が違うの?」


 寺崎歩美のその質問に思わず首を傾げてしまった。


 「……何が違うんでしょう?」


 それを聞いた寺崎歩美は呆れたといった表情となり、こんな事を聞いてきた。


 「それをこっちが聞いてるんだけど? ……いや、だって話を聞く限りじゃ川畑の仲間が持ってるっていうムーブデバイスってのを使えば先輩や川畑が出会った時間のあの子を連れてこれるわけでしょ? でも召喚すると成長した未来のあの子が出てくる。それって未来人召喚じゃないの? 別の仲間でも試してみたら?」


 これには思わず本音が出てしまった。


 「いや、なんか怖いからそれはやってない」

 「怖いって……あっそ。で? 歩美はなんでビックリされたわけ?」


 こちらの回答にさらに呆れた表情となった寺崎歩美はリーナ(成長ギャル化版)のほうを向いてそう尋ねる。

 この質問にリーナ(成長ギャル化版)はビクっとした後。


 「()()()()()()! マスター、今ってどんな状況? あーしを呼んだって事は何かヒントが欲しい状況って事っしょ! 何でも聞いて聞いて!」


 そう言って寺崎歩美の質問をスルーした。

 そんなリーナ(成長ギャル化版)に対して寺崎歩美は何か言おうとしたが、リーナ(成長ギャル化版)が言いたくないのであれば、無理に聞き出す事もないだろうと思い、寺崎歩美には悪いがリーナ(成長ギャル化版)に乗る形で呼び出した理由を答える。


 「あぁ、それなんだが……ヒントというよりも今は人手が欲しいんだ。こんな状況だからな」

 「こんな状況?」


 首を傾げるリーナ(成長ギャル化版)は自分が視線を向ける先、監視塔とその周囲に黒い靄とともに地面を埋め尽くし群がる魔物の群れ、そして監視塔の頂上に陣取り、今現在は(スーパー)ギガバイソン(きわみ)へと進化しているココを見て納得したように頷いた。


 「あぁ、これってあの時のやつじゃん! そういう事か!」


 そんなリーナ(成長ギャル化版)に本題を告げる。


 「ココを連れ戻しに行こうにも、あの監視塔の頂上にたどり着く前に強力な4体の魔物を何とかしないといけない、その人手が欲しいんだ! 頼めるか?」


 これに対しリーナ(成長ギャル化版)は満面の笑みを浮かべると。


 「マスター、呼び出しといて頼めるかも何もないっしょ! 頼むつもりで呼んだんっしょ? なら遠慮はいらないじゃん! あーしはマスターのお願いなら何でも聞いちゃうよ! そう、()()()! だからこの後、ちゃんとあーしに()()()してね?」


 そんな事を言ってきた。

 しかも最後の一言は妖艶な笑みを浮かべながら耳元に顔を寄せて小声で囁いたのだ。

 うむ、さすが半分はヴァンパイアの血が混じったハーフヴァンパイアだ。

 ギャルな見た目をしているが、成長してヴァンパイアの妖艶さが滲み出るようになってきたのだろう。

 まったく、恐ろしい子だ……


 とはいえ、ここでリーナ(成長ギャル化版)の魔性の魅力に引き込まれたら後でフミコに何を言われるかわかったものではない。

 なので、あえてとぼける事にする。


 「お願いって……いや、何を?」


 これに対し、リーナ(成長ギャル化版)は妖艶な笑みを浮かべながら。


 「ん~? そりゃマスターが気持ち良くなるこ……」


 そう言いかけたところで、ガシっ! とフミコが背後からリーナ(成長ギャル化版)の肩を掴み、凄みのかかった笑顔でリーナ(成長ギャル化版)に詰め寄る。


 「リーナちゃん? 一体何をしてるのかな?」


 これにはリーナ(成長ギャル化版)も「げ!?」と声をあげると。


 「フミコお姉ちゃんもご一緒にど、どうでございやす?」


 などと大量の汗をかきながら苦しまみれに提案するが、フミコはそのまま何も言わずリーナ(成長ギャル化版)の首根っこを掴みどこかへとリーナ(成長ギャル化版)を引きずって行く。


 「いや! フミコお姉ちゃんごめんなさい!! というかマスター! あーしを助けて!! マスター!! マスターーーー!!!! あーしをだずげでーーーーーーー!!!!」


 リーナ(成長ギャル化版)は涙ながらに助けを求め訴えてくるが、そのまま黙って見過ごすことにした。

 すまない、これはどう考えても助け舟を出せる状況じゃない……

 そう思い、無念の表情で拳をぐっと握るが、そんな自分を寺崎歩美はゴミを見るような目で見ていた。


 それから数分間、フミコとリーナ(成長ギャル化版)は屋根から飛び出た煙突の裏側へと消え戻ってこなかった。

 そして、戻ってきた時にはリーナ(成長ギャル化版)は大粒の涙を流していた。

 一体、煙突の裏側で何があったのか? 詮索はしないほうがいいだろう。

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