表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
15章:多次元の王との邂逅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

421/539

カイト/フミコvsアシュラ(5)

 「どうだクソッタレが!!」


 アシュラが呼び出したアンデット軍団を焼き払い、アシュラの背後は地平線の彼方まで炎が燃え盛っていた。

 そんな光景を見てガッツポーズを取る。


 そして、次の攻撃への準備にかかる。

 魔王の能力の全力全快のレーザービームでアンデット軍は薙ぎ払ったが、今のはまだ全力ではない。


 この能力の最大火力はさらにその先の巨大な目玉の紋章の周囲に大小様々な形の目玉を連想させる紋章を出現させこれらを連結し、魔法陣の前に実体化したエネルギーの火球を出現させ、それを破壊し、強大なエネルギーの濁流を放つクリムゾンストリームだ。

 これをアシュラへと放つため、頭上に浮かぶ巨大な目玉の紋章の周囲に大小様々な目玉の紋章を出現させていく。

 そんなこちらの頭上に浮かぶ紋章を見てアシュラはニヤリと笑う。


 「ほう、それなりにはやるじゃねーか、ひひ! 火力もそこそこってところだな?」

 「何余裕ぶっこいてやがる!! そうしてられるのも今のうちだけだぞ!!」

 「今のうちだけだぁ? おいおい、ペットどもを処分した程度でイキがるなよ後輩? それなりと言っても所詮はそれなり程度しかできてないんだぜ? ほれ」


 アシュラはそう言って指をパチンと鳴らす。

 ただそれだけで頭上に浮かぶ紋章が一瞬で消え去った。


 「なっ!?」


 その事に驚いているとアシュラは、腹を抱えて笑い出す。


 「ひひ! ひゃーっはっは!! いい!! いいぜその表情!! たまんねーな!! 最高の反応するじゃねーか後輩!! 気に入ったぜ!!」

 「おまえ!! 今何をした!?」


 アシュラに叫ぶとアシュラは剥いだ皮が縫い付けられた自らの耳を指さし。


 「まぁ元はこいつの異能だったがよ。俺様はな、一度見た技やスキルは無効化できるんだ」


 そう言ってニヤリと笑う。


 「一度見た技は無効化できる……だと?」

 「ひひ! 便利だろ? つってもその技やスキルを未来永劫無効化しちまうと、それはそれでつまらねーからよ? 1回だけの無効化に効果を留めてやってんだぜ? どうだ? 俺様の慈悲深さに感銘したか? んん? 感謝しろよ感謝!」


 そう言ってヘラヘラ笑うアシュラを見て、隣にいたフミコが小さく舌打ちすると。


 「何が感謝だ! ふざけるな!!」


 そう叫んで弓を射る。

 だが……


 「おいおい、てめーさっきの俺様の言葉聞いてたか? 理解が足りてねーぞ女」


 アシュラがそう言うと、射たはずの矢が一瞬にして消え去る。


 「なっ!?」


 その事にフミコが驚くとアシュラは呆れたような表情でため息をつき。


 「てめーのそれはさっき見てんだ。無効化できて当然だろうーが」


 そうつまらなそうに言い放つ。

 それを聞いたフミコは再び矢を手にして弦を引き。


 「だったら!! 連続しておまえに矢を射るだけだ!!」


 そう言い放った。

 これにはアシュラも目を丸め。


 「あ?」


 思わず間の抜けた声をあげた。

 そんなアシュラへとフミコは言い放つ。


 「何がおかしいの? さっきおまえ自身が言った事でしょ? つまらないから1回だけしか一度見た技の無効化はしないって! だったら次は当てられるって事じゃない!!」


 そして矢を射ろうとした時だった。


 「あぁ、そうかい」


 アシュラは心底つまらなそうな表情でそう言うと指をパチンと鳴らす。

 そして……


 「めんどくせーな女、てめーは邪魔だ。これじゃ後輩と楽しい殺し合いができねーじゃねーか。引っ込んでろ」

 「っ!!」


 アシュラがそう言うと、矢を射ろうとしたフミコの手から矢が滑り落た。


 「フミコ?」


 フミコの異変に気付き声をかける。だがフミコからの返事はなかった。

 直後、矢だけでなく弓もその手から滑り落ち、フラフラとした動きでフミコは全身から力が抜けたように前へと倒れていく。


 「な!? フミコ!? 大丈夫か!?」


 倒れそうになったフミコの体を慌てて支え、倒れるのを阻止する。

 そしてフミコの顔を覗きこむが。


 「フミコ? おいフミコ!! しっかりしろ!! どうしたんだ!? おい!!」


 その表情に生者の覇気はなかった。

 その瞳に命の輝きはなかった。

 顔から赤みはまだ引いていないが、返事もなく虚ろな目、嫌な予感がよぎる。


 「お、おい……嘘だろ? まさか!!」


 すまないフミコと心の中で謝って、慌ててフミコの右胸に耳を押し当てる。


 「クソッタレ!! 冗談だと言ってくれ!! 頼む!!」


 しかし、フミコの心臓の音は一切聞こえなかった。

 その事に愕然とした。


 「そんな……なんで?」


 フミコの右胸から顔を離し、そしてアシュラへと視線を向ける。

 一体やつはあの一瞬でフミコに何をした?

 フミコは一体何をされた?


 そして、ある可能性に気付く。


 「まさか……即死魔法!!」


 そう口にするとアシュラはニヤリと笑い。


 「ご名答! ひひ! けどよぉ、そう悩むことでもねーだろ? 即死魔法なんてチート異能の代表格じゃねーか! あ、てめーはまだ持ってないのか? 即死系の異能。そいつはご愁傷様だな?」


 そう言うが、しかしこうも付け足す。


 「まぁ、つってもこいつは一瞬で相手を殺せてつまらねーから普段はあまり使わないんだけどな? だってそうだろ? これから殺し合いを楽しもうってのに、お楽しみもないまま即死されちゃ興奮しねーだろ? 殺し合いってのはお互いがお互いの命を必死で奪い合うから面白れーんだぜ? それを許さない一方的な虐殺はしらけてつまらねーよ。まぁ、目障りな有象無象をさっさと一掃するには丁度いいのはいいんだがな? 今みたいによ」


 そんなアシュラの言葉を聞いて怒りがこみあげてくる。


 「ふざけやがって、このイカレポンチが!」


 そう吐き捨ててから、支えているフミコの体を見て。


 (とにかくまずはタイムリープ能力でフミコが即死魔法を受ける前まで時間を戻さないと! 即死耐性を付与できるか現状では未知数だが、それでもやるしかない! 即死魔法が来るとわかった以上、フミコを守るにはやるしかないんだ!! 何としても!!)


 そう決意したところで。


 「おいおい後輩、まさかとは思ううけどよぉ。てめー、今しょうもない事考えてないだろうな?」


 アシュラがニヤニヤしながらそんな事を言ってきた。


 「あ? しょうもない事だ?」

 「あぁしょうもない事だ。実にくだらなねー、熱を帯びた殺し合いに水を差す行為だ。てめー、今タイムリープ能力で時間改変をしようとたくらんでねーか? その女が殺される前まで戻ろうとかよぉ」


 アシュラの指摘に舌打ちしてから。


 「だったらなんだって言うんだ?」


 そう言ってアシュラを睨むが当の本人はどこ吹く風だ。

 気にせずこんな事を言い出す。


 「そいつはいけねーな? 実にいけねー、何せ時間改変は殺し合いの緊迫感をなくしちまうからよ? だってそうだろ? 殺されても時間を戻してやり直せるなら、いくらでも死んで構わないなんて考えがバカみたいに浮かんじまう。そんでその考えは真剣な殺し合いに水を差す、最悪だ。何せわざと殺されて相手の手札を探ろうとするんだからよ? なんだそれ? ふざけてんのか? ったくそれはもう殺し合いじゃねーぞ? ただの作業ゲーだ。くだらないにもほどがあるぜ? そんなもん命への冒涜だ、そうは思わねぇか?」


 そんな力説するアシュラが命の冒涜なんてワードを使った事にイラっときた。


 「てめーが命の冒涜を語るか」


 なのでそう吐き捨てるとアシュラは鼻で笑い。


 「俺様だからこそ語れるんだ、いや、俺さまにしか語れねーな? 何せ俺様は殺した相手の命を肉の一片まで無駄なく食すぜ? だろ?」


 そう言って舌なめずりするとアシュラはこちらに向かって右手を突き出し、そして指をパチンと鳴らした。


 「まぁ、そんなわけで時間改変なんてくだらねー事は禁止だ後輩。つまらねー悪知恵に頭が回らねーようにタイムリープ能力に施錠(ロック)をかけてやんよ」

 「っ!?」


 直後、半透明の鎖のようなものが自分を捕縛するように周囲に出現し、足元から南京錠のようなものが出現する。

 それは浮かび上がって自身の体の中をすり抜けていくと胸元の辺りで止まり、周囲に出現した鎖をこちらに向かって一気に引き寄せる。


 そして半透明の鎖と南京錠によって体はグルグル巻きにされ、身動きができなくなった。


 「っち!! なんだこれ!?」


 拘束を解こうとするがどうにもならない、そうしていると目の前に巨大な半透明の鍵が出現し、そのままこちらに向かて突っ込んできた。

 そして、そのまま南京錠に突き刺さり、カチっという音とともに施錠が施され、直後鎖も南京錠も消え拘束が解ける。


 「今のは?」


 真っ先に動作確認をしてから体に異常がない事を確認し、そしてアシュラの言葉を思い出して慌ててアビリティーチェッカーを確認する。


 「っち!」


 案の定、タイムリープ能力のエンブレムにロックがかかっている事を示す×マークがついており、「現在こちらに制限がかかっており使用できません」というメッセージが表示されていた。

 これではもう時間を戻してフミコを救う事はできない。

 思わず奥歯を噛みしめると、そんな自分を見てアシュラが楽しそうに声をかけてきた。


 「ひひ!! これで邪魔者はいなくなったな後輩!! さぁ、楽しい楽しい殺し合いを再開しようぜ!! レッツ、パーティータイムだ!! ひひ!!」


 そんなアシュラの言葉に怒りを覚えながらも、タイムリープ能力以外でフミコを救う方法を模索する。


 (クソッタレが!! 時間を戻せない以上、フミコを救える手段はふたつだけだ。けど、その成功率は……)


 その散々な結果を思い出し、それでもやるしかないと意を決してアビリティーチェッカーの聖斧の能力のエンブレムをタッチ。

 アビリティーユニット・アックスモードを手にして地面を思い切り叩き、自分とアシュラとの間に頑丈な岩の壁を作る。


 「あ?」


 その事にアシュラは間の抜けた声をあげるが気にせず、作り上げた岩の壁をさらに錬金術で構造を変化させより硬度を高める。

 そして内側に魔術障壁を展開、アシュラがすぐにこちらの邪魔をしてこないよう防御を固めてからフミコの救済措置に移る。


 「トレーニングルームでの成功率はまだそんなに高くない……けど、それがどうした!! 絶対に成功させる!! フミコを救うんだ!!」


 フミコの死体を慎重に地面に寝かせてから気合いを入れてアビリティーチェッカーのあるエンブレムをタッチする。

 それは前回の異世界での終盤、スロル山の麓で戦った邪神結社カルテルの邪教徒アズフから奪った能力「術式結合」のエンブレムであった。


 直後、アビリティーユニットの姿が変化し、分厚い1冊の本となる。

 それは魔導書ネクロミコンを扱うための能力、術式結合を使用する時のアビリティーユニットの姿、アビリティーユニット・ブックモードであった。


 そしてアビリティーユニット・ブックモードを手に取ってページを開き叫ぶ。


 「発動せよ!! 魔導書ネクロミコン!! 蘇生(レイズ)!!」


 直後、開いた魔導書ネクロミコンのページが眩しく光り輝いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ