表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
15章:多次元の王との邂逅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

420/539

カイト/フミコvsアシュラ(4)

 巨大な骸骨、ボーンソルジャーが地面に倒れ、大きな振動とともに大量の砂煙が立ち上がり視界を遮る。

 まだ状況がわからない以上油断はできないのだが、しかしすぐにフミコは倒したと確信したようで。


 「やった!!」


 なっどと言ってガッツポーズを取っている。

 いやフミコ、そのセリフは戦場では絶対に言ってはいけない、一級フラグ建築士が放つ危険なセリフだ。


 案の定、すぐに視界を遮る砂煙ごしに巨大な骨の影が浮かび上がり、奇声とともに砂煙が吹き飛んで

巨大な骸骨が無事だと言わんばかりにこちらにその身を晒した。

 ほら言わんこっちゃない……まぁ、自分もそれフラグだから言っちゃダメとは口にしなかったけども。


 とはいえ、巨大な骸骨も無傷とはいかなかったようで、頭部の髑髏が半壊していた。

 あんな状態でも動ける辺りアンデットって便利だよなーと一瞬呑気な考えが頭に浮かぶが、すぐに雑念を振り払う。


 (余計な事を考えるな! 集中だ集中! くそ! 仕留めきれなかっただと!? 属性添付で光魔法を付与したはずだったが、威力が足りなかったのか? けど半壊はしてるんだ、つまりはあと一押し! けどどうする? SMAW Mk153は再装填速度が遅い、ちんたら装填してると普通に警戒されて対策を取られてしまう……でもそれにくらべてフミコの2式擲弾器は装填速度が格段に速い。それに第2次大戦時の兵器とはいえ属性添付と強化魔法で威力を底上げすればタ弾だけでも十分に仕留められるはず、だったら!!)


 手にしていたSMAW Mk153をパージし、フミコに叫ぶ。


 「フミコ!! もう一発タ弾だ!! 俺が押さえるから仕留めてくれ!!」


 叫びながらアビリティーユニットを懐にしまい、アビリティーチェッカーを手にして魔物の擬態能力+1のエンブレムをタッチする。

 直後、体はみるみる大きくなり、その姿が徐々にゴリラのような姿へと変化していく。

 そしてわずか数秒でギガントピテクスとも呼ばれる魔獣ビッグフットの姿になると咆吼をあげて気合いを入れ直し、巨大な骸骨、ボーンソルジャーを睨む。


 本当なら「混種能力:獣(進化)」を使えばあのような相手、即座に圧倒できるのだろうが、その後の事を考えたら今は使えない。

 何せアシュラはボーンソルジャーを何体も所持しているのだ、つまりはいくらでも替えが効く。

 1体倒したところで続々とあれを呼び出してくるだろう。それに対して自分は混種能力を一度使ってしまうともう戦闘の継続は困難というよりほぼ不可能な状態に陥ってしまう。


 とはいえタイムリープ能力の「事象の延期」を使用すれば混種能力使用後に訪れる疲労や脱力感を打ち消す事はできるだろう。だが、それを使ったところでそもそも混種能力は長時間に渡って使用し続ける事はできない。

 そして、混種能力は間髪入れずの連続使用ができない。それがたとえ、直後に使用したのと別の混種能力であってもだ。


 連発できない、だからこそ混種能力を使用する際にはその見極めが肝心なのである。

 何せ混種能力は自分にとって切り札たる最大火力である一方、最後の手段でもあり、一度使えば最後、そこで決着をつけなければ自分にとってもう詰んだ状態になるからだ。


 だからこそ、この局面で混種能力は使えない。

 確実にアシュラを殺せる。もしくは致命傷を与えられると確信できるその瞬間までは温存しなければならない。


 (とはいえ、魔物の擬態能力も+1のままなのに能力が向上しているんだよな……その事自体はまぁ悪い事ではないんだけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、困った事に)


 そう、本来異世界渡航者が転生者、転移者、召喚者から奪った異能は同系統の異能を奪わない限り強化されない。

 支援・サポートの異能で時限的な強化を除き、特定の異能を強化させるにはその道しかないのだ。


 そして魔物の擬態能力は魔物に転生した転生者から異能を奪って以来、同系統の異能は奪っていないため+1からは異能は強化されていないはずなのである。

 しかし、にかもかかわらず魔物の擬態能力は明らかにその能力値が向上しており、現在+1以上の真価を発揮している。


 まず目に見えてわかるところで言えば、変化した姿の魔獣ビッグフットの大きさだ。

 通常ならその身長は2~5メートルほどなのだが、現在は20メートルほどの大きさとなっており、巨大な骸骨、ボーンソルジャーと対等な関係で怪獣プロレスができる状態になっている。


 恐らくは「混種能力:獣」が「混種能力:獣(進化)」へとパワーアップした事で関連する異能の能力値も上昇したのかもしれないが、一方で困った問題も発生していた。


 以前の能力値の魔物への完全変化でも魔物の本能へと意識がもっていかれる感覚があったが、能力値が向上した現在はその感覚がさらに酷くなっているのである。

 恐らくはちょっとしたことでもすぐに破壊衝動が増して、感情が高まり意識が魔物のそれへとシフトしてしまうだろう。


 つまりは長時間の完全変化はすべきでない、早期に決着をつける必要があるのだ。


 (できるだけ早くこの巨大骸骨を片付ける! 悠長に怪獣プロレスをやってる余裕はないぞ!!)


 拳を力強く握り、そして一気に巨大な骸骨に向かって走る。

 そんな自分を見てフミコは大きく頷き。


 「わかったよかい君!! 任せて!!」


 その手に次弾の40mmタ弾を出現させ2式擲弾器に装填、99式短小銃を構える。

 それを横目で確認してこちらも大きく地面を蹴ってジャンプし巨大な骸骨の真正面に飛び掛かる。


 雄たけびをあげ巨大な骸骨に拳を叩き込み、そのまま両手で拘束、暴れる巨大な骸骨を何とか押さえながらフミコの方へとその体を向ける。


 (いまだフミコ!!)


 そう心の中で叫び、フミコが40mmタ弾を放とうとしたところで。


 「あぁ、そいつはダメだな? それじゃつまらねぇぜ? なぁ、そう思うだろ?」


 アシュラの声がフミコの背後から聞こえた。


 「っ!!」


 今までどこにいたのか? いつの間にフミコの背後にいたのか?

 言うまでもなくアシュラは配置転換でそこに現れたのだが、その事をフミコは知らない。

 それでもフミコは極めて冷静に対処した。


 巨大な骸骨への攻撃を諦め、即座に振り返ってアシュラに向けて40mmタ弾を放とうとしたのだが。


 「そいつの使用を禁止する」


 アシュラはただそれだけ言って指をパチンと鳴らす。

 すると直後、フミコが持っていた99式短小銃とその銃口に取り付けてある2式擲弾器全体に黒い霧のようなものがかかった。


 「っ!?」


 その事に驚いたフミコは咄嗟の判断で99式短小銃から手を離し、武器を放棄してその場から地面を蹴って後方へと下がり距離を取る。

 直後、99式短小銃は黒い霧と共にその場から消え去ってしまった。


 「な!? 消えた?」


 99式短小銃と2式擲弾器が消えた事に驚いたフミコの反応を見てアシュラがニヤリと笑う。


 「だから言ったろ? そいつの使用を禁止するって。ひひ! 戦場で禁止された武器はもう使えない、常識だよな?」

 「使えないって……あんた一体何をしたの?」


 フミコの質問にアシュラは。


 「兵器使用禁止制限、現代兵器チート無双を抑制する異能だ。この異能の思想には共感するぜ? だって思わねーか? ただのドンパチ銃火器で苦労なく相手を倒すとかクソつまらねーってよ」


 そう言って喉仏のあたりに縫い付けられた誰かの皮を親指で指し。


 「まぁ、この異能を使ってた召喚者の考え方はそうじゃねーんだけどな? とはいえ中々に面白いやつだったからこうして首の皮を残してやってるんだぜ?」


 そう言って本来の異能の持ち主だった召喚者の話をしだした。


 「この異能を持ってたやつは集団で異世界に召喚されてな? まぁ、いわゆる学校のクラス単位で魔王だがの討伐のために勇者候補として王さんに呼び出されたってやつだ。で、そのクラスの中で現代兵器を無限に呼び出せる能力を与えられた奴がいてな? そいつは案の定、現代兵器チート無双をやりはじめたわけよ。で、その活躍に嫉妬した哀れな嫉妬心の塊みたいなパリピやろうが、現代兵器を無限に呼び出せる能力を与えられた奴を殺すためにこの異能を生み出したわけよ。その呼び出された世界の文明・技術レベルでは製造できない武器を今後一切使用できなくするって異能をな? 要するに、銃を使われちゃ楽に殺せねーから銃の使用を禁止するぜ? これで楽に殺せるな! って考えなんだが、俺様抜きで何楽しい殺し合いはじめてんだって話だが、まぁ小物の割には中々に面白いやつだったな」


 アシュラはそう言うとさらに指をパチンと鳴らそうとする。

 それはアシュラが何かしらの異能をさらに使おうとする動作だ。


 (まずい! 現代兵器だけじゃなく、さらに追加で別の武器も使用禁止されたら終わりだ!)


 アシュラの動作を見て慌てて巨大な骸骨の拘束を解き、拳を力いっぱい握りしめて振りかぶり、半壊した髑髏に強烈な拳を叩き込む。

 さっさとこいつを倒してアシュラが何かする前にやつに攻撃しなければ! そう思っての全力パンチだったが、しかし巨大な骸骨は仰け反っただけで致命傷には至っていない。


 (っち! 浅かったか!!)


 フミコはそんな巨大な骸骨とアシュラを交互に見て「ふぅ」と小さく息を吐き出すと。


 「そう……確かにただの銃火器で苦労なく相手を倒すのがつまらないって意見には少し共感できるかもね……だってあたしにはあまり馴染まないから」


 そう言ってその手に新たに丸木弓を出現させると素早く弓を引き。


 「かい君!!」


 叫んで矢をアシュラではなく巨大な骸骨のほうへと向けた。

 そこでフミコの意図を察し、矢に属性添付で光魔法を付与する。

 それと同時にフミコは矢を射て、爆風と眩しい光が巨大な骸骨に向かって飛んでいき、半壊した髑髏を射抜いた。

 直後、髑髏は粉々に砕け、髑髏だけでなくすべての骨が同時に砕け散る。


 (物理的にも骨が消滅し、光魔法でアンデットも浄化した。こいつはもう倒したとみていいだろう)


 フミコの攻撃後、巨大な骸骨、ボーンソルジャーがいなくなったのを確認して魔獣化を解く。

 そして人の姿に戻ってすぐにアビリティーユニットを懐から取り出し、レーザーの刃を出してアシュラとフミコの方へと視線を向けるとフミコはすでに次弾の矢を持って弓を構えアシュラへと向けていた。


 「次はあなただよ!!」


 そう言って弓を構えるフミコを見てアシュラは小さく笑うと。


 「てめーと単独で遊んでもあまり面白くねーんだがな?」


 そう言って次の瞬間には姿を消す。

 言うまでもなく配置転換だ。


 「っ!! どこに行った!!」


 弓を構えながらフミコは周囲を見回す。


 「フミコ!!」


 そんなフミコの元へと駆け寄ると、遠くを見たフミコが何かに気付き目を見開く。


 「っ!! かい君、あれ!」

 「どうした? って……っ!!」


 フミコの視線の先、数百メートル離れた場所に配置転換で移動したアシュラのその背後に十数体のボーンソルジャーが控えていた。

 しかも大きさはさきほどの巨大な骸骨よりも大きいように思える。

 しかも、中には骸骨ではなく動物の骨、具体的に言えば竜のようなものまでいた。


 「あのやろう……アンデット化したテイムモンスターのバーゲンセールでもおっ始める気か? そんな迷惑な催しこっちはお断りだぞ?」

 「かい君、どうする? 多分さっきのやつよりも強いの出してきてるよ」

 「だろうな……」


 そう言って冷や汗をかいたところでアシュラが楽しそうに声をかけてくる。


 「さて、ちょっと在庫整理につきあってくれや? 亜空間をほんの少しすっきりさせてーからよ? 邪魔なもんは処分しなきゃだろ? 断捨離だ断捨離。後輩なら当然付きあうよな? 何せ後輩だからよ」

 「ふざけるな!! てめーのものはてめーでなんとかしろ!」

 「おいおい、聞き分けのねー後輩だな? パイセンのいう事には素直に従っとけ! でないと痛い目見るぜ?」

 「黙れよ先輩、その減らず口、今閉ざしてやる!!」


 アシュラの物言いにイラっときてしまった。この上から目線の先輩にこのまま混種能力をぶつけてやろうかとも思ったが、思いとどまりレーザーの刃を閉まってアビリティーチェッカーの魔王の能力のエンブレムをタッチする。

 直後、頭上に巨大な目の紋章が浮かび上がった。


 (秘奥義、混種能力には及ばないが、それでもこの能力は全力で放てばそれに近い威力は出せる!! 薙ぎ払ってやるぞクソッタレが!!)


 弓を構えるフミコを背後に下げ、そして全力全快のレーザービームを巨大な目玉の紋章から放った。


 「これでもくらいやがれ!!」


 巨大な目玉の紋章から放たれた強力なレーザービームはその威力でもって地平線の彼方までを一気に焼き払い、そしてアシュラのボーンソルジャーたちを一瞬で焼き尽くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ