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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
14章:討伐クエストをこなそう!

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カイト/ハンスvsヤーグベルト(17)

 その時、ハンスはヤーグベルトに反撃の隙を与えることなく、目にも止まらぬ速さで次々と斬撃を加えていた。

 これに対しヤーグベルトはただ耐える事しかできない。

 その光景は傍から見ればハンスが優勢であるかのように見えるだろう。


 しかし、実際はどれだけハンスが押しまくっているように見えても、ヤーグベルトに決定打を与えられないでいた。

 そう、ヤーグベルトは硬すぎるのだ。その異常なまでの防御力の高さにハンスの攻撃は阻まれていたのだ。


 その事に焦るハンスであったが、そんな時カイトがこちらへと叫ぶ声が聞こえた。


 「ハンスーーーーー!!!! そこからできるだけ離れろーーーーー!!!!」

 「っ!!」


 これにハンスは即座に反応。振り返ったり、何をするつもりなのかカイトに尋ねるといった事をせずにヤーグベルトに攻撃を加えるのを止め、すぐにその場から離脱した。

 カイトがこんな事を言ってくる場合、こちらに何の説明もなくとんでもない事をしでかしてくる……

 短い付き合いながらハンスはすでにその事を理解していた。


 そして、ハンスが離脱した直後、予想通りとんでもない攻撃がヤーグベルトへと放たれたのだ。

 その威力は凄まじく、ハンスはヤーグベルトからかなりの距離を取ったにも関わらず、それがもたらす強力な突風に巻き込まれた。


 そして、遠い別世界で戦いをただじっと観戦していた神帝ゲノンはその攻撃にほんの少しだけ反応を示す。


 「ほう」


 とはいえ、発したのはその一言だけであった。


 一方、神帝ゲノンやその他の神々と違い、現場で直に観戦しているスプルはその攻撃を見て楽しそうに「これはいいデータが取れそうだ」とニヤニヤとしていた。




 ヤーグベルトの姿は爆炎と立ち上る巨大な煙に隠れてここからでは確認できない。

 攻撃をくらって倒れたのか、それともまだ生きているのか……


 「手ごたえはそれなりにある。けど……これで終わりってわけにはいかないんだろうな」


 ハイパーフレイムエアバスターを放った際にハイパーエアブレードを形成していた風はすべて消えてしまった。

 なので今はハイパーシャイニングブレードを構え警戒している。


 爆炎と立ち上る巨大な煙を見据える事数秒、衝撃波とともに煙が吹き飛んで消えヤーグベルトがその姿を現した。

 それを見て軽く舌打ちをする。


 「っち、やっぱりか……どこまで頑丈なんだクソッタレが」


 とはいえ、ヤーグベルトの全身からは白い煙が立ち上がっており、ほのかに焼け焦げた臭いもこちらに届いてきた。

 そして、ヤーグベルトはその場に仁王立ちをしているのだが、どことなく頭部がふらついているようにも見える。


 つまりはノーダメージというわけではないという事だ。

 しかし……


 (確かにダメージは与えたようには見える。けど……明確に体の一部が破損してるといった目に見える戦果がない。それはつまり、ダメージは与えたとはいえ強固な防御力を崩せてないって事だ。つまりは致命傷ではない……まったく、どんな攻撃を叩き込めば崩せるっていうんだクソッタレが!)


 そう思って思わず歯ぎしりしてしまうがそこでふと思いつく。


 (いや、待てよ……強固な防御力を真正面からぶつかって崩せないなら、破壊しようとせず引き剝がせばいんじゃないか?)


 そう思って手にしているハイパーシャイニングブレードに目を落とす。

 目を落としてから考える。


 (とはいえ、果たして可能か? そんな事ができるのか? ……いや、できるかどうかじゃなくて、やるんだ! やってやるんだ!! 能力リミッター解除モードというならこれくらいはできて当然だろ!! あぁ、そうだ!! できて当然だ!! そうだろ自称神!! 自信満々に強化パーツだと言って渡してきたんだ! だったらこれくらいできなきゃ困るぞ?)


 心の中で叫んでから一旦深呼吸し、心を落ち着かせる。

 そしてハイパーシャイニングブレードを一旦しまってからアビリティーユニットを高らかに掲げ叫んだ。


 「さぁ、期待に応えてくれよプロトアブソーブ・コネクター!! 時の流れを掴み取れ!!」


 その叫びに応えるようにアビリティーユニットの底に取り付けてあるプロトアブソーブ・コネクターが虹色に輝き、そこから周囲に波紋が広がっていく。

 そして波紋が通過していった場所から目には見えない何かがあふれ出し、それらはアビリティーユニットの元に収束し、数秒とかからないうちにアビリティーユニットは目には見えない何かに包まれてしまった。


 それを確認してからアビリティーユニットを振るい、ボタンを押す。

 するとレーザーの刃が飛び出す代わりに集まった目には見えない何かが収束して半透明の刃となる。


 その半透明の刃の表面には時計の針を連想させる模様が無数にちりばめられていた。

 そんな半透明の刃を真横に軽く振るうと、()()()()()()()()()()()()()()

 それを確認して思わず口元を歪ませる。


 「完璧だ!! これならいける!!」


 半透明の刃を構え、そしてヤーグベルトを見据えた。


 「さて、いい加減終わらせてやる」


 そう口にして半透明の刃を振るった。

 その直後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 「な!? なんだと!?」


 突然目の前にカイトが現れた事にヤーグベルトは驚き目を見張る。

 そんな自身に対し、カイトは手にしている武器を振り下ろしてきた。



 「!!」


 その攻撃をヤーグベルトは咄嗟に左手を振り上げて受け止めようとした。

 そう、ヤーグベルトはこの戦いにおいて、はじめて明確に防御の行動にでたのだ。


 (馬鹿な! このわしが咄嗟とはいえ守りに入っただと!? ありえん!! ありえんぞ!! こんな事あってはならない、そうあってはならないのだ!!)


 ヤーグベルトは屈辱に思いながらも、その心とは裏腹に本能が身の危険を感じていた。

 そもそもヤーグベルトは自身に一体何が起きたのか理解できていなかった。


 当然だ。

 何せ、こちらに超高火力の攻撃を放ってきたカイトはさきほどまでかるく1キロは離れていたのだ。

 にもかかわらず、一瞬でその距離を埋められた。

 自分がいた場所はカイトがまだ足を踏みしめていない場所。タイムリープ能力を警戒し、そこを注意しながら行動していたはずである。

 なのに何故一瞬で距離を埋められたのか?


 ヤーグベルトはわけがわからぬまま、防御の行動に出てしまったのだ。


 とはいえ、ヤーグベルトの堅固さを考えればカイトの放った一撃はヤーグベルトの左手に受け止められるか弾き返されるのがオチである。そのはずであった。

 だが……


 「残念だったなヤーグベルト!! こいつをただの魔法剣だと思うなよ!!」


 そう叫んだカイトが振り下ろす半透明の刃は、振り上げたヤーグベルトの左手をあっさりと斬り落とした。


 「な!? なんだと!? バ、バカなぁぁぁぁぁ!!! ありえん!! こんな事はありえんぞぉぉぉぉぉぉ!!」


 左手を斬り落とされ、信じられないといった表情を浮かべるヤーグベルトを見て、半透明の刃を振り下ろしたカイトはニヤリと笑う。


 「ありえない? ちゃんと現実を直視しろよ。確かに斬り落としたぜ? てめーの左手、このタイムブレードでな!!」

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