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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
14章:討伐クエストをこなそう!

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カイト/ハンスvsヤーグベルト(15)

 「試してみるか、だと? 何を言い出すかと思えば……くだらん、実にくだらん! 貴様らが仕掛けてくるよりも速く、わしは地面へと潜り移動するのだ。もう貴様らの攻撃は届かんぞ?」


 ヤーグベルトはそう言って地面の中へと両足をゆっくりと足首まで沈ませる。

 そんなヤーグベルトを見て口元を歪め。


 「そいつはどうかな?」


 構えていたハイパーシャイニングブレードを振るい、強力な光のカッターを放った。


 「っ!?」


 その放った攻撃は目で追うのが不可能なほどの恐るべきスピードでヤーグベルトに襲いかかり、一瞬にしてヤーグベルトの腹部に激突する。


 「がぁ!?」


 その衝撃は相当なものだったようで、ヤーグベルトはたまらず一歩後退した。

 そんなヤーグベルトを見て鼻で笑い、言い放つ。


 「どうだ? 一歩も動かずとも、てめーに攻撃をくわえたぞ? クソッタレが!!」


 そんな自分をヤーグベルトは憎悪をこめて睨んでくる。


 「若造が……あまりいい気になるなよ? わしを少しよろめかせた程度でいきがるんじゃねーぞ!!」

 「まぁ、確かに……この程度の攻撃で倒せるわけがないよな? けど、何発もくらったらどうだ?」

 「何?」

 「てめーのその腹に何発叩き込めば倒れるかって聞いてるんだよ!!」


 叫んで再びハイパーシャイニングブレードを振るう。

 ただし、今度は何度も振るい強力な光のカッターを連続して放つ。


 この連続攻撃をヤーグベルトは最初は回避せずに受け止めていたが、すぐに足下がぐらつき、倒れそうになったので慌てて地面の中へと潜り、数百メートル離れた場所へと移動した。

 その場所は言うまでもなく、これまでの戦闘で足を踏み入れたり、通過したりしていない場所だ。

 ゆえに当然ながらタイムリープ能力での移動は不可能である。


 だが、そんなものは光のカッターを放つ攻撃を行う分には何の問題もない。

 ヤーグベルトに向かって構わずハイパーシャイニングブレードを何度も振るう。


 強力な光のカッターが何発もヤーグベルトに襲いかかり、ヤーグベルトは慌てて地面に潜り別の場所へ移動する。

 それを何度も繰り返すうち、いつしかヤーグベルトのいる場所は、戦闘がはじまった当初の場所から数キロも離れた地点となっていた。


 つまりはヤーグベルトのいる場所は自分とハンスにとっては未踏の領域だ。

 とはいえ、この空間に景色が変化する何かがあるわけではないので意識するほどの事ではない。


 だが、タイムリープ能力を使っての移動という意味では自分にとっては近接戦闘を仕掛けるには厳しい場所にヤーグベルトを追いやってしまった。

 とはいえ、強力な光のカッターを放つ放出系の攻撃を行う分には問題はない、問題はないのだが……


 「なぁ、カイト」

 「なんだハンス?」

 「その攻撃そろそろやめないか? なんというか、カイトがそれ放ってる間は俺、やつに近づけないんだけど?」


 隣でハンスがジト目でこちらを見ながら言ってきた。


 「いや、気にせず仕掛けてくれていいぞ?」


 なのでそう答えると。


 「はぁ!? 巻き添えくらうだろ!! カイト、お前けっこう雑に攻撃放ってるじゃないか!! あんなの放ってるとこに飛び込んだら誤射くらうわ!! カイト絶対正確に狙ってないだろ!! 下手な鉄砲数撃ちゃ当たるじゃねーんだぞ!! 銃ぶっ放してる時はもっと正確だったのに、なんでさっきからそんなに雑なんだよ!!」


 ハンスが怒鳴って抗議してきた。

 確かに連続して放つ強力な光のカッターのいくつかはヤーグベルトに当たらずヤーグベルトの周囲の地面に激突していた。

 かと言って、一発一発を慎重に照準を合わせてから放っていたのでは、ヤーグベルトに攻撃を受け止める準備を与えてしまう。

 こういうのは当たればラッキー程度の気持ちでとりあえず無造作に撃ちまくるのがいいのだ。


 そして、それは異能を封じられていた時の銃撃も変わらなかったはずなのだが、自分ではわからないんだけど、そんなにも射撃の命中率良かったっけ?


 そう思っていると、ヤーグベルトがそんなこちらを見て滑稽だと言わんばかりの表情を向けてくる。


 「なんだ、仲間割れか? まぁ、貴様らが連携して攻撃してこない分にはわしも楽だからこのままでも一向にかまわんぞ? とはいえ、今の貴様らに連携は無理だろうな?」


 ヤーグベルトのその言葉に自分もハンスも眉を潜めた。


 「あ?」

 「何が言いたい?」


 自分とハンスの反応を見て、ヤーグベルトはやれやれと言わんばかりに首を軽く振ると。


 「だってそうだろ? 貴様らが足を踏み入れていない場所にわしがいる以上、高速戦闘での接近戦を仕掛けられるのはひとりだけ。もう一方が遠距離攻撃をしようものなら、巻き添えを恐れてもう片方は接近戦を仕掛けてこない。そしてこの状況を貴様らは解決しようにもできないだろ? 何せ貴様、異能を取り戻したはいいが、その取り戻した力が倍増したおかげで周囲を巻き添えにする可能性がぐんと高まった……そりゃ気軽にタイミングを会わせて同時攻撃などできるわけがないよな? あぁ、できないとも!! 滑稽!! 実に滑稽だ!!」


 そう言ってヤーグベルトは高らかに笑う。

 そんなヤーグベルトを見て思わずため息をついた。


 「はぁ……あのな、誰が高速戦闘ができないだって? 何勝手に決めつけてやがる!」


 そう言うとハンスが驚いた表情を浮かべた。


 「え? カイト、できるのか?」


 隣でそう言うハンスに答えようとしたところで。


 「ふん、何を言い出すかと思えば……つよがりはよせ。ならば何故、今までそれを披露しなかった? まったく苦しいにもほどがあるぞ?」


 ヤーグベルトがニヤニヤしながらそう言ってきたので


 「そうかい……だったら見せてやるよクソッタレ!! ハンス、タイミング合わせろよ」

 「あ、あぁ……」


 ハンスは戸惑いながらも炎と水の短刀を構える。

 そんなハンスを横目にこちらもハイパーシャイニングブレードを構えてから姿勢を低くする。

 そして……


 (速度をあげるバフをかけられるだけかけまくる!! 「魔法」と「補助」は今能力リミッター解除モードなんだ! だったら、あのクソッタレに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!)


 ありとあらゆる速度をあげるためのバフを自身にかけまくる。

 それらはすべて、能力リミッター解除モードによって通常とは比べものにならない効果を発揮するだろう。

 さらにダメ押しで魔術障壁を自身の足下に出現させる。


 その魔術障壁は表面にぶつかったものを弾き返すカウンター仕様で、それを陸上競技の短距離走のスタート地点に設置されているスターティングブロックのように斜めの角度に設置し、慎重にカウンターが発動しないように足の裏を表面に乗せて大きく息を吸い込み、そして前を向く。

 目指すはヤーグベルトの喉元だ。


 「いくぞハンス!! 吶喊!!」


 叫んで思い切りスターティングブロック代わりの魔術障壁を蹴り込み、カウンターが発動する。

 それと同時に背後に強力な炎魔法をブースター代わりにぶっ放ちロケットスタートを決める。


 時を同じく強力な風魔法で災害級の突風を後方に発生させ、強力な追い風を作る。

 さらに補助の能力で身体能力を一時的に底上げ、速度のパラメーターを時限的にほぼMAXにし、その速度に耐えられるだけの肉体の硬化を行った。


 おかげで、わずかコンマ0、0秒のうちに、数百メートルは離れていたヤーグベルトとの距離を詰める事に成功し、一瞬にして目の前にヤーグベルトが現れた。


 (まずっ!? はやすぎる!!)


 なので慌ててハイパーシャイニングブレードを振るう。

 ヤーグベルトは驚愕の表情を浮かべる間もなく、圧倒的な破壊力を有したハイパーシャイニングブレードによる斬撃をくらう事になる。


 「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ヤーグベルトは一体何が起ったのか、理解する間もなく強力な斬撃によって宙に一瞬浮かび、すぐに地面に叩きつけられ、そのまま数メートル地面を転がっていく。

 それは、戦いが始まってからはじめて、ヤーグベルトが目に見える形で大ダメージを受けた瞬間だった。


 そして、そんな地面を転がるヤーグベルトに対して炎と水の短刀を構えるハンスが、目にも止まらぬ速さで強力な攻撃を叩き込む。


 「これでどうだ!!」

 「ぐがぁぁぁぁぁ!!!!」


 地面を転がる中、無防備に弱点の右手首を晒すヤーグベルトはハンスの攻撃を防ぐ事ができず、悲痛な叫びをあげる。

 そんなヤーグベルトに対してハンスは攻撃の手を緩めず、さらに追加の攻撃を加えていく。

 一方……


 「と、止まらねぇーーーーー!! くそーーーーー!! 止まれーーーーー!!! 止まりやがれクソッタレ!! ぬほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 ハンスが自分の後を継いでヤーグベルトに攻撃を加えている中、自分はヤーグベルトを地面に叩きつけた後も、止まる事ができずにいた。

 恐るべきスピードで真っ直ぐ突き進む中、必死で魔術障壁や風魔法、錬金術とありとあらゆる方法を駆使し、ようやく1キロほど突き進んでから何とか止まる事ができた。


 「はぁ……はぁ……はぁ……ふぅ……これ、スピード出せるのはいいが止まるのが一苦労だな……最悪敵にタックルして一緒に倒れて転がるって方法でないと止まれないかもしれないぞ? ハンスみたいに継続しての高速戦闘は無理だな」


 額に流れる汗を手で拭いながら、この戦法をこれからも何度も使えるだろうか? と考え、さすがにご免被りたいなと思いながら、ハンスとヤーグベルトの方を向く。

 すでに1キロ近く離れてしまったが問題はない、タイムリープ能力を使えば、ヤーグベルトに攻撃を加えた地点まですぐに戻れる。


 なので遠目から現在の様子を観察する。

 ハンスは攻撃を連続して叩き込んでいるが、やはりヤーグベルトは硬すぎて有効打を与えられているかは微妙だ。


 ハンスもそれを理解しているのか、ヤーグベルトに反撃の機会を与えない形での素早い動作で短刀の属性添付を小まめに変えながら攻撃を加えている。


 炎と水、炎と風、炎と炎。

 水と風、水と水。

 風と風。


 ハンスが2本の短刀に属性添付できるパターンはこれらだけだ。

 そして、遠目から見るにこれらのパターンではダメージは与えられても、有効打は与えられていない。

 つまりは現状、ハンスの攻撃ではヤーグベルトは倒せないという事だ。


 もちろん、まだハンスは切り札を隠し持っている可能性はある。

 何せあのギガントどもの頂点であるギガント・カイザーとかいう伝説級の怪物を倒したのだ。

 その時に使用したであろう秘奥義など、完全に手の内は明かしていないだろう。


 とはいえ、それを使用するのを待っている間にヤーグベルトが自分がかけたタイムリープ能力による時間凍結を解いてフェーズ2に進化する可能性は捨てきれない。

 そうなるとハンスがヤーグベルトに敗れて殺される危険がある。


 「能力を奪う前にそれは勘弁願いたいな……いや、今はヤーグベルトを倒す事だけ考えないと、余計な事を考えて勝てる相手じゃない……それはやつを倒してから考えればいい」


 そう思ってタイムリープ能力を発動、ヤーグベルトを攻撃した地点まで一気に戻った。

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