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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
13章:緊急クエストをこなそう!

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ドルクジルヴァニア防衛戦(23)

 タイムリープ能力によって時間はアースブレードでギガント・レックスの左足を切断した直後まで戻される。

 そして再び新たな時を刻み始めた。


 アースブレードの斬撃によって周囲に血が飛び散り、ギガント・レックスの左足が近くの建物の壁へと転がっていってぶつかり建物が倒壊する。

 そしてギガント・レックスは気味の悪い叫び声をあげ、その場でのたうち回った。


 一方でこちらが手にしていたアースブレードは刀身がボロボロと崩れ落ち、そのまま消滅してしまう。

 それを見届けてから素速くアビリティーチェッカーを取り出し、アビリティーユニットに装着してエンブレムをタッチ、アビリティーユニット・アックスモードへと切替える。


 のんびりしている暇はない、何せギガント・レックスはすぐに変異を開始する。

 その前にケリをつけなければならない。


 「悪いがてめーをス○ルクローラーもどきにする暇は与えねーぞ!!」


 叫んでアビリティーユニット・アックスモードを手に、倒れているギガント・レックスに向かって駆ける。

 そして走りながらアビリティーユニット・アックスモードを前に突き出し、自分でも何語なのか理解していない言語をブツブツとつぶやく。


 その言葉に反応するようにアビリティーユニット・アックスモードの刃が眩しく輝いていた。

 それを確認してもう一言添える。


 「タクヤ、使わせてもらうぜ? そして、できたら力を貸してくれ」


 直後、隣にタクヤの気配を感じた。

 そして同じくタクヤも自分とシンクロして聖斧アジャールを構えながら、並走する。


 アビリティーユニット・アックスモードと聖斧アジャールの刃を眩しく輝かせながら走る2人に呼応するように地面を突き破って岩石がドンドン生え出てくる。


 それらすべてを2人の眩しく輝く斧の刃が取り込み、さらに輝きを増す。


 「これで終わりだギガント!! 地のご加護を浴びてくたばりやがれ!!」


 倒れているギガント・レックスの前まで駆けた後、眩しく輝くアビリティーユニット・アックスモードの刃をギガント・レックスの脇腹に突き刺し、自分とシンクロするようにタクヤも聖斧アジャールの刃を突き刺した。

 そして、そのまま力一杯、勢いよくアビリティーユニット・アックスモードと聖斧アジャールの刃を自分とタクヤは真横に振るった。


 「グランドスラッシュ!!!!」


 その斬撃はギガント・レックスの脇腹を抉り、切り裂いて周囲に大量の血の雨が降り注いだ。

 ギガント・レックスを斬り裂くと、アビリティーユニット・アックスモードの刃の輝きはすでに収まっていた。


 代わりに斬り裂かれたギガント・レックスの体がどんどんと眩しく輝きだし、やがてその輝く体の中からアビリティーユニット・アックスモードが取り込んでいた、地面を突き破って出た岩石のすべてが一気に弾けて飛び出してくる。

 ギガント・レックスは体の内側から岩石で潰され絶命、粉々となって血の雨と肉塊を降らせながら飛び散った。


 返り血で全身真っ赤になったが気にせずアビリティーユニット・アックスモードを解除する。

 そして血と肉塊の海となった周囲を見回し、力強くガッツポーズを取った。


 「っしゃぁ!! 勝った!!」


 叫んで、しかし直後、目眩と頭痛と吐き気が襲ってくる。


 「っ!!」


 そして、足下に広がる血の海に倒れそうになった。


 (まずい!! このままだとぶっ倒れて戦闘続行不可能だ! はやくタイムリープ能力で「事象の延期」を行わないと!!)


 思ってタイムリープ能力を発動し、時の流れが一旦止まる。




 「ふぅ……危なかった」


 再び時間が動き出す。

 秘奥義を発動した直後であったが、「事象の延期」のおかげで疲労でぶっ倒れ、戦闘続行不可能な状態になる事はなかった。


 とはいえ、積み立てられたDPの数はとんでもない事になっており、この数値を凍結解除したら一体どれだけの負荷が体に降りかかるのか? 今から気が滅入ってしまう。

 そして秘奥義でこの数値だ、混種能力だともっとえげつない数値になっていただろう。

 考えただけでゾッとしてしまう。混種能力を選択しなくて正解だった。


 「さて、イレギュラーな個体は始末した。後はウラス・ヨルドのやろうを警戒しつつ、押し寄せる数の暴力に対処するだけだな」


 そう呟いて周囲を見回す。

 血と肉塊でとんでもない事になっているが、この区画はとりあえず放置でいいだろう。

 まずはフミコたちと合流すべく、インカムでケティーにフミコたちが今どこにいるか尋ねようとするが。


 「ん? なんだ? 通信障害か?」


 インカムからはザーザーとノイズが聞こえてくるだけでケティーやリエルの声が聞こえてこない。


 「おーい! ケティー? 聞こえてるか?」


 呼びかけても返事は返ってこず、ザーザーとノイズが聞こえるだけであった。


 「まじかよ? って事はスマホで連絡しないとだめか?」


 ため息交じりにつぶやいてポケットに手を突っ込む。

 そして今更ながら全身ギガント・レックスの返り血を浴びて真っ赤である事に気づいた。


 「ん? ひょっとしてこれ、返り血がインカムにもかかって故障したとかそういうのか?」


 そう思って一旦スマホを取り出すのをやめて耳からインカムを取り外す。

 しかし見たところインカムは特に何ともなかった。ならばインカムの不調は通信障害が原因だろう。


 「あまり期待できないが、スマホで連絡取るか……こういう手間をなくすためのインカムだったんだが」


 そう呟いてポケットからスマホを出してケティーに連絡を取る。

 インカムと違ってスマホはすぐにケティーと繋がった。


 「もしもし、ケティー? ちゃんと聞こえてるか?」

 『あ、川畑くん! スマホでかけてきたって事はやっぱりインカムは通じなかったのね』

 「あぁ、ずっとノイズがなってる。インカムは壊れてないから通信障害だと思うが……」

 『でしょうね、全員に無線が飛ばなくなってる。スマホに関しては通信方式が違うから大丈夫だとは思うけど、すぐにこっちも通じなくなる事を考慮したほうがいいかも』


 そう言うケティーの声色はいつもと違い、少し焦っているように感じた。


 「何かあったのか?」

 『フェイクシティーの外に飛ばしてるドローンからのライブ映像が安定しない。たぶんジャミング波を飛ばせるイレギュラー個体がいるのかも』

 「まじかよ……その個体は特定できるか?」


 この異世界で電子機器と通信機器を使用してるのは自分達くらいだ。

 そんな自分達にしか効果を発揮しない能力を持ったギガントがいるのか? と首を傾げたくなるが、ギガントの出自を考えたら、そういった個体がいても不思議ではない。


 そして、そんな個体に電子戦を仕掛けられた上で暴れられたらドローンで広範囲を偵察して指示を出しているこっちの作戦が瓦解する。

 面倒な事になる前に早めにその個体を潰しておきたいところだが……


 『うーん、それっぽい個体はドローンからの映像では特定できないかな……それよりもライブ映像が安定しなくなってて解析が難しい』

 「まじか……」


 ケティーの報告を聞いて考える。

 イレギュラー個体を特定できないなら、ギガントどもへの砲撃を強化して数を減らす従来のやり方しか手の打ちようがないか?

 そう思った直後だった。ケティーが慌てた声をあげた。


 『え? 何こいつ? いつの間に?』

 「ケティー? どうした?」

 『まずいよ川畑くん! ギガントどもの中に他とは違う見た目の個体がいるのに気づいたんだけど、そいつ突然姿が消えたんだ』

 「姿が消えた? 移動した瞬間が映像が安定していないせいで映らなかったのか?」

 『たぶんそうだと思う。でも、そいつの姿が消えてから映像が安定してる』

 「それって、そいつが通信障害を引き起こしてるギガントって事じゃ!」

 『確実にそうだと思う! で、問題は姿が消えたそいつ、今フェイクシティー内に設置した監視カメラの映像に映ってるの』

 「……は?」


 ケティーの言った言葉が一瞬理解できなかった。

 フェイクシティー内に設置した監視カメラに映ってる?

 それって気づかないうちに侵入されたって事じゃないか?


 でもさっきまで遠く離れた外にいたんだろ?

 瞬間移動でもしてきたって事か?

 そう思うが、すぐに相手がジャミングを行える相手だと気づく。


 「まさか……最初から侵入して潜んでいた? だから今、通信障害が起こってるのか?」

 『その可能性が高いと思う……だとしたら、なんでこのタイミングで姿を現したのか謎だけど』


 そう言って首を傾げてそうなケティーに尋ねる。


 「ケティー、そいつは今どこにいる? 他とは違う見た目って言ってたけど、どんな外見なんだ?」

 『なんか全身ドロドロとした泥状の黒い粘液に包まれてて、口は大きく割けてて細長い白目をしてるってところかな? 場所は川畑くんがいる地区の隣の地区だね』

 「なっ!? それは本当か!?」


 ケティーが話した特徴を聞いて驚いてしまう。

 それには心当たりがあった。


 『え? えぇ、映像を見る限りだとそうだけど、どうしたの?』

 「そいつはもしかしたら、カストム城門で遭遇したやつかもしれない」

 『っ!! それって、撤退する時に戦っていう? でも最初に出てきた奴らはとりあえず全滅させたんでしょ?』

 「そう思ってたが、違ったのかも」

 『同一種で別個体かもしれないよ?』

 「その可能性はある、でも、別個体であっても同一種ならそいつは危険だ。ちょっと面倒な能力を持ってる」


 そう言って思い出す。

 やつがカストム城門で放ってきた攻撃を……




 そのギガントはフェイクシティー内の戦闘装甲車部隊が多く展開する区画に突如出現した。

 いきなりの事にその場にいた誰もが一瞬呆気に取られ、そしてすぐに思考が追いつき戦闘態勢に入る。


 「せ、戦闘配備ーーーー!!」

 「他の部隊に通達!! 一斉に仕掛けるぞ!!」


 しかし、どの戦闘装甲車も他の装甲車と連絡が取れなかった。

 当然だ。なぜなら、今目の前にいるギガントがジャミング波で通信を妨害し、通信障害を引き起こしているのだから……


 そのギガントの名はギガント・ジャマー。

 カイトがカストム城門で対峙し、仕留め損ねたイレギュラー個体である。

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