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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
4章:これはただ君を救うためだけの物語

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これはただ君を救うためだけの物語(5)

 「ほう? われを倒すと?」


 ニギハヤヒが心底楽しそうな表情で問いかけてきた。

 だからこちらも余裕を持って答える。


 「あぁ、そうだ! てめーを倒す!! 完膚なきまでにな!!」


 その返答にニギハヤヒは気味の悪い笑みを浮かべる。


 「できるかな? 貴様ごときに?」

 「あぁ、できるとも!!」


 言ってH&K HK416を構える。

 銃口をニギハヤヒに向けるが向こうが動じる気配はない。

 それどころかこちらもと言わんばかりに弓矢を構えこちらに鏃を向けてくる。


 ニギハヤヒの弓の腕前は相当なものだ。それはさきほどのたった一射の騎射が物語っている。

 となれば撃ち合いになればこちらがフルオート射撃の自動小銃であっても勝てる目算は少ない。


 「フミコ、奴の弱点とか何か知らないか?」


 傍らのフミコに小声で聞くがフミコは申し訳なさそうに首を振るだけだった。

 となればやはり2人してどうにか倒すしかないが……


 (まるで隙がないな……どうすれば?)


 そう思い攻めあぐねているとニギハヤヒがため息とともに弓矢の構えを解いた。


 「?」

 「つまらんな? いつまで経っても攻めてこん……さきほどの威勢はどうした? まさか怖じ気づいたわけではないだろうな?」


 挑発的な笑みを浮かべるニギハヤヒだが、それに乗るほどこちらもバカではない。


 「生憎と安い挑発に乗るような短気ではないんでな? ひょっとして持久戦は苦手なタイプか?」


 なのでこちらも小馬鹿にした軽口を叩いてみたがニギハヤヒは苦笑しただけだった。

 こんな問答をいつまでも続けるわけにもいかない、とにかく仕掛けてみるか?

 そう思った時だった。

 ニギハヤヒがフミコに向かって言葉を投げかけてきた。


 「ところでーーーーー。どうしてそやつの傍にいる?」


 ニギハヤヒに問われてフミコがビクっと肩を震わせる。


 「そやつはこの国が破滅すると嘯くゆうしゃ。殺さねばならん相手だぞ?」


 ニギハヤヒに睨まれフミコが萎縮する。

 これはまずい、このままではまた洗脳されて振り出しに逆戻りだ。

 なので慌ててフミコの耳を塞ぐ。


 「聞くなフミコ!! あんな奴の戯れ言に耳を貸す必要はない!!」

 「ーーーーーよ高き(みこと)の声を思い出せ」

 「フミコ正気を保て!! 君の名前はフミコだ! よくわからない名前じゃない!!」


 ニギハヤヒの言葉がフミコに聞こえないよう耳を塞ぎながら大きな声でニギハヤヒの言葉を邪魔する形で語りかける。

 フミコは怯えた表情をしながらもなんとか唇を噛みしめて正気を保とうとしていた。

 そして小さな震える声でこう懇願してくる。


 「あの言葉に………ニギハヤヒ様の言葉に惑わされないような……言葉を……かけて……ください」

 「え?」

 「あたしが………あなたを………ニギハヤヒ様ではなく……あなただけを信じられるような……言葉を………そうすれば……あの言葉にも………抗えます」


 そう言われてもどんな言葉をかければいいのか?

 信じられる言葉と言われても困惑してしまう。

 生まれてこの方、女性にそのようなことを言ったことはないし、そういう機会にも恵まれなかった。

 そんな自分が一体どうして適切なワードを導き出せようか?


 言葉に詰まるが、しかしここで何か言って安心させなければニギハヤヒの思惑通りになる。

 ならばかけなければならない。信じてもらえる言葉を。

 自分は助けると決めたんだから。


 だからこそ想いを届ける。


 「フミコ聞いてくれ! 俺はーーーーーー」



 自分でも無我夢中で何を言ったかはっきり思い出せない。

 いや、思い出したくないくらい恥ずかしい。

 だが、その言葉は確かにフミコに届いたようだ。


 最初驚いた表情を浮かべたフミコはやがて顔を真っ赤にして下を向いてしまったがゆっくりと頷く。

 そして顔をあげた時には頬を赤く染めて笑顔を向けてきた。


 「はい! そう言ってもらえて嬉しいです! こちらこそよろしくです! ()()()!」


 一体自分は何を言ったのか? 恥ずかしいので思い出したくはない。

 だが想いは伝わったようだ。

 これでニギハヤヒの言葉にフミコが動揺することはないだろう。

 なら後は奴を倒して、ここから現実へと帰還するだけだ。


 頬を染めて熱い視線を向けてくるフミコから一旦離れてH&K HK416を構え直す。

 自分が離れたことにフミコは一瞬不満そうな表情をしたがすぐに気持ちを切り替えたのか

 どこからか丸木弓を取り出し弓矢を構える。


 「ーーーーーよ反旗を翻したか? まぁそれも致し方ない」

 「ニギハヤヒ様、あたしはもうそのような名ではありません!! あたしはフミコ! もうあなたの傀儡じゃない!!」

 「小娘が言ってくれる!!」


 したり顔でニギハヤヒが弓を射て、同時にフミコも弓を射る。

 2人が放った矢は同じ速度で飛翔し同じ軌道上でぶつかった。

 鏃と鏃が衝突しあり得ないほどの衝撃波を周囲にまき散らす。

 間髪入れずニギハヤヒが素早い動作で矢を取り出し弦を引く。

 フミコも負けじと弓矢を構え射る。

 再び鏃と鏃がぶつかる。

 そんな攻防が続いていく。


 「うおぉ!? な、なんじゃこりゃ!?」


 見ていて言葉を失うほどの壮絶な弓の射合いと衝撃波に思わず転びそうになるがなんとか踏ん張る。


 「というか弓矢の射合いでここまでド派手になるもんかよ?」


 思わず苦笑いしてしまうが気にしたら負けだと思ってニギハヤヒの様子を確認する。

 フミコとの弓の射合いがニギハヤヒにとっては予想外に苦戦してるのか、完全にフミコとの射合いに集中してこちらに注意を払ってる様子がない。

 これはチャンスだ。


 フミコが作ったこの隙を見逃さず照準をニギハヤヒの眉間に合わせる。

 そしてニギハヤヒの脳天を撃ち抜くべく引き金を引き弾丸を放った。


 銃声が轟き、ニギハヤヒは注意をこちらに向けるがもう遅い。

 その弾丸は違うことなくニギハヤヒの眉間に吸い込まれ、頭部に風穴を開けた。

 血が飛び散りニギハヤヒがよろめく。


 「やったか!?」


 しかし弾丸で頭をぶち抜かれたにも関わらずニギハヤヒは倒れなかった。

 その場に踏みとどまり頭から滴り落ちる血を手で拭う。

 血で染まった拭った手を数秒凝視し、やがてペロリと血を舐める。 


 「あは、あひ、アヒはハハハは!!!」


 すると愉快に大声で笑い出したのだ。

 その行動に壊れたのか? とも思ったが違う。

 直後、滴り落ちる血の量が勢いを増し、まるで濁流のような勢いとなるとそれは赤黒い大蛇となった。

 その姿は疑似世界での赤い雷光の大蛇によく似ていた。


 「まじかよ!? まさか精神世界でもこいつを見ることになるとはな!!」


 正直驚いたが、大蛇にメンタルダイブしてこの精神世界にきたのだ。いてもおかしくはない

 つまりはあれがこの精神世界のラスボスだろう。

 そう思えばより明確にゴールが見えた気がする。

 なので銃口を赤黒い大蛇に向けて引き金を引くが弾丸は赤黒い大蛇の前でまるで見えない壁に阻まれたように空中に静止し、そのまま地面へと力なく落ちていく。


 「は?」


 思わず変な声を出してしまった。

 何だ今のは? ハリウッドのアクション映画で似たようなシーンを見たことがあるが現実にそれを目にすると理解が追いつかない。


 「どうした? そんなものか?」


 赤黒い大蛇に巻き付かれるような格好になっているニギハヤヒが不適な笑みを見せる。


 「あぁ!? 挑発してるのか? 上等だ! バリアか何かわからないがぶち抜いてやる!!」


 叫んでH&K HK416の外装をパージ、ゲパードGM6 Lynx .50 BMGへと変更し構えなおす。

 同じくフミコも弓矢を構え、同時にニギハヤヒと赤黒い大蛇へと射撃する。しかし……


 「うそ!?」

 「まじかよ!?」


 先程と同じく弾丸は見えない壁に阻まれたように空中に静止し、そのまま地面へと力なく落ちていく。

 フミコが放った矢も同じ状況だ。


 「だったら白兵戦だ!!」


 ゲパードGM6 Lynx .50 BMGをパージしてレーザーの刃を出し赤黒い大蛇へと斬りかかっていく。


 「うぉぉぉぉぉ!!!」


 しかし振り下ろしたレーザーブレードも目に見えない何かに阻まれて弾かれてしまう。


 「な!?」

 「どうした? 攻撃がまるで届いてないぞ?」


 ニギハヤヒが嘲るような表情で言ってくるが、しかしその憎たらしい顔を斬り裂こうにも見えない何かに阻まれて攻撃が届かない。


 「くそ!! どうなってやがる!?」

 「どうした? もう芸がないなら今度はこちらの番だな?」


 ニギハヤヒがいって右手を前にかざす。すると赤黒い大蛇がその口を大きく開き、牙を向けてこちらに突進してきた。


 「まずい!!」


 慌てて横へ飛んで回避する。

 しかし赤黒い大蛇もすぐに方向を転換してこちらに迫ってくる。


 「かい君!!」


 フミコが矢を射るがやはり赤黒い大蛇には当たらない。

 そして、フミコが赤黒い大蛇を攻撃したことで攻撃対象がフミコへと変わる。

 赤黒い大蛇はフミコの方を向くと恐ろしい勢いでフミコへと突進していく。


 「くそ!! ふざけるな!! てめーの相手は俺だ!!」


 慌ててレーザーブレードを振るうが空振りに終わる。


 「フミコ逃げろ!!」


 レーザーの刃をしまいSCAR-Hを構え引き金を引く。

 しかし弾丸はやはりに見えない何かに阻まれてしまう。


 「くそ!! どうなってんだ!?」


 意味がないとわかっても焦って射撃を続けていると頭の中にカグの言葉が響いた。


 (何を意味のない事をやっとる?)

 「あぁ!? うるせー!! だったらどうしろってんだ!?」

 (よく考えよ、そこは一体どういう世界じゃ?)

 「は? 何を言ってやがる?」


 叫んで、気付く。

 そうだ、ここは現実世界じゃない。()()()()だ。

 と言うことはまさか……


 (ようやく気付いたか? カラクリに)


 カグのバカにしたような言葉に苛っとしながらも少し冷静に事態を捉えられる余裕ができた。


 「ここがどういう世界か、ね……つまりは精神世界。さっきの乗馬経験がないにも関わらずいけそうな気がするってだけで難なく乗馬をこなせた時点で気付くべきだったな」


 そう、つまりは精神。()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。


 「俺やフミコはニギハヤヒには苦戦するかもしれないって思い込みが最初からあった。ニギハヤヒは絶対の自信を最初から持っていた。その差ってわけか!」


 そうと分かれば話は簡単だ。

 何せ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。


 「よーくわかったぜ!! だったら俺はもう恐れたりしない! 負ける気はしねー!! フミコは俺が絶対に守る!! あんなクソ蛇に負けるわけがねー!!」


 叫んでアビリティーユニットにアビリティーチェッカーを取り付け聖剣のエンブレムを選択。

 レーザーの刃の出力が上がる。


 「フミコには近づけさせねーぞ!!」


 レーザーブレードに渦のように光が纏わり付き、より一層輝きを増す。

 そのレーザーブレードをまるで野球選手がバッター打席でバットを構えるような格好で持つと思いっきりバットを素振りするようにレーザーブレードをスイングした。

 

 「くらえ!! 聖天閃光剣・改!!」


 レーザーの刃に纏わり付いていた光が巨大な光弾となって恐るべきスピードで赤黒い大蛇へと飛んでいく。

 そして光弾は赤黒い大蛇を飲み込んで光の彼方へと消し去る。


 目の前で起こった出来事にフミコは目を丸くして呆然としていた。


 「す、すごい! 何今の……」


 そんなフミコの様子に安堵し、レーザーブレードを構えてニギハヤヒへと向き直る。


 「今度はてめーの番だ!!」

 「ほざけ、一匹倒した程度でイキがるなよ?」


 言ってニギハヤヒは頭に開いた風穴に自ら指を突っ込む。

 ぐちゃぐちゃと不快な音を立て風穴をかき乱し指を抜くと血が大量にあふれ出す。

 そしてその流れ出た血が無数の赤黒い大蛇へと変化していく。

 それは胴体を共有はしていないものの、複数の大蛇の頭が存在するという点では疑似世界での赤い雷光の大蛇そのものであった。


 「これらすべてを相手にできるかな?」


 愉快に笑いながらニギハヤヒは赤黒い大蛇たちに攻撃を指示する。

 すると無数の赤黒い大蛇たちは雄叫びをあげ一斉にこちらへと迫ってくる。


 「だったらこっちも同じようなことするまでだ!!」


 叫んでレーザーブレードを地面に突き刺した。直後地面に無数の亀裂が走りニギハヤヒの方へと向かっていく。

 そして無数の亀裂から眩しいばかりの光が漏れ出して無数の光の竜となった。

 無数の光の竜は迫り来る無数の赤黒い大蛇を迎え撃つ。

 竜と大蛇が牙を顎を交え首を絡みつかせ絡ませられ、まさに怪獣映画さながらの大混戦となる。


 しかし、その結果をただ待つことはしない。

 自分とニギハヤヒはポケ○ンバトルをしているわけではないのだから。


 なので間髪入れずレーザーの刃の出力を最大限にまであげてレーザーブレードを頭上へと掲げる。

 出力を増し、聖剣の纏わり付く光でさらにレーザーブレードの刃渡りが長く伸びるがすぐにしなってしまう。

 しかしそれでいい、伸びてしなったレーザーの刃を腕を大きく振るってムチのように複数の赤黒い大蛇へと打ちつける。


 光の竜に押えられ光のムチをくらった赤黒い大蛇たちは次々と消滅していった。


 「ち!」


 その光景にニギハヤヒは舌打ちして再び風穴に指を突っ込もうとするが。


 「させるかよ!!」


 レーザーブレードを振るって巨大な光弾をニギハヤヒへと放つ。

 それを見てニギハヤヒは風穴に指を突っ込もうとするのを止め、丸木弓を構えて矢を射る。

 ニギハヤヒの放った矢が光弾を迎撃するが、光弾に隠れる形でニギハヤヒの懐まで一気に踏み込む。

 光弾が消滅したと同時にレーザーブレードを振り上げてニギハヤヒを真っ二つに斬るべく振り下ろす。


 「うおらぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 しかしニギハヤヒも丸木弓を惜しげもなく捨て、鉄剣を引き抜きレーザーブレードを受け止める。

 弥生時代の鉄の剣などレーザーの刃の敵ではないはずだが精神世界故になのか鍔迫り合いになる。

 もしくは何かの呪いがかかっているのかもしれない。

 弥生時代ならではというべきか、ニギハヤヒの鉄の剣の剣身に古代中国語のような文字が光り輝いて浮かび上がっていた。

 何て書いてあるのかはさっぱり読めないが、これが力を与えているのかもしれない。


 「素人が調子に乗るなよ!!」

 「!?」


 ニギハヤヒが叫んで鉄の剣を押しあげる。その勢いに負けてレーザーの刃が弾かれ一瞬後ろにふらつてしまう。

 その隙をニギハヤヒは見逃さず鉄の剣を強烈な勢いで突き出してくる。


 「死ねーーーーーー!!!!!!」

 「く!?」


 すぐに立て直しこれを受け止めるが、主導権を奪われてしまう。


 「おら! おら! おら! どうした!? こんなもんか!? えぇ!?」


 恐ろしまでの力で何度も鉄の剣を振り下ろしてくる。

 それをなんとかレーザーの刃で受け止めるが反撃の隙が窺えない。


 (くそ! このままじゃジリ貧だ)


 焦りを感じだした時だった。後方でちらっと何かが光った。

 一瞬何かと思ったがすぐに察する。

 自然と笑みを浮かべていた。


 「何がおかしい? 死への恐怖で壊れたか?」


 ニギハヤヒが狂喜を浮かべて鉄の剣を振るうが、ただそれを受けるだけでいい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 「あぁ、おかしいとも。だっててめーは肝心なことに気がついていないからな?」

 「あ?」

 「わからないか? てめーの相手は俺だけだったか?」


 言ってニヤリと笑ってやった。

 その顔がニギハヤヒにどう映ったかはわからないが、すくなくとも自分の放った言葉の後にこちらの後方を確認して驚愕の表情を浮かべたことは確かだ。


 そう、後ろには矢を番えてその瞬間を待っているフミコがいた。


 「これで終わりです! ニギハヤヒ様!!」


 フミコがニギハヤヒ目がけて矢を射る。

 それを察してすばやく横へと飛んでその場を回避する。

 直後ニギハヤヒの首元を鏃が貫いた。


 「ぐほぉ!?」


 首を射貫かれニギハヤヒが後方へとフラフラとたじろぐ。


 「やった!」

 「いや、まだだ!!」


 フミコが喜びの声を上げるが警戒を解かないように叫ぶ。

 そう、まだニギハヤヒは完全に倒れていない。


 「お、お、おのれぇぇぇぇ!!!!! こんなところで死んでたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 矢で射貫かれた首から再び大量の血が上空へとあふれだし、さきほどより大きな赤黒い大蛇が生まれる。

 赤黒い大蛇は大きく口を開いて雄叫びを上げると下を向きそのままニギハヤヒ自身を飲み込んだ。

 すると赤黒い大蛇がさらに巨大化する。


 「ぐはははははは!!!! 見ろ!! これが!! われの真の姿よ!! ぐははははは!!!! 貴様らごとき踏み倒してくれるわ!!!!」


 巨大化した赤黒い大蛇からニギハヤヒの声が聞こえた後、おぞましいまでの咆吼をあげる。

 まるで怪獣映画の一場面に出くわしているような状況だが恐怖はまるでなかった。

 むしろ苦笑してしまったほどだ。


 「まったく……もう少しハリウッドのパニック映画やゴ○ラや○メラを観て勉強しろってんだ、迫力不足だぜ? まぁ1800年前の存在に言っても仕方ないがな」


 言ってレーザーブレードを両手で持つ。


 「俺はそれよりももっと恐ろしくて歯が立たない怪獣以上の存在を見てるんだ」


 そして両手で持ったレーザーブレードを真上に突き上げた。


 「ジムクベルト、神ですら殺すことができない超高次元の存在……やつに比べたらてめーはただの()()()()だ」


 真上に突き上げたレーザーブレードに纏わり付く光が輝きを増す。

 そしてレーザーの刃のみならず自身の周囲にも光が纏わり付き周囲に暴風が吹き荒れる。

 そしてそれはレーザーの刃へと集束していく。

 これまで以上に眩しい光を放ち、立っていられないほどの暴風が空間全体を支配する。


 そう、これは聖剣シルブルムフゲンの持つ最大の秘奥義。

 かつて最初の異世界で異世界転生者・今元(すすむ)が見せた究極の技である。


 秘奥義は強力ゆえに使用後の消耗も激しい

 本来の能力の持ち主の今元晋もこの技を使った直後は立っているのがやっとだったほどだ。

 しかし、今なら使いこなせる気がする。

 ここが精神世界というのもあるのかもしれないが、それ以上に理由がある。


 (誰かを守りたい。助けたいって気持ちはこんなにも力を生むものなんだな)


 フミコを救う。そのためにニギハヤヒを倒す。

 このシンプルな想いが強力な力を制御できる原動力となっていた。


 故にこそ本来のこの能力の持ち主、自分が奪ってしまった命についても考えてしまう。

 だからこそ自然と声に出していた。


 「ススム、使わせてもらうぜ? そして、できたら力を貸してくれ」


 実際にはそんな事はないのだが、なぜだか口に出した直後、隣にススムの気配を感じた。

 そして同じくススムも秘奥義の構えを取る。


 「行くぜ!! これで終わりだ!!! 颶風裂光斬!!!」


 叫ぶと同時に突き上げていたレーザーブレードを振り下ろす。

 すると恐ろしいまでの閃光と暴風がその場を飲み込み、巨大な赤黒い大蛇を光の中へとかき消した。

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