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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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キャプテン・パイレーツ・コミッショナー(9)

 球体の岩石となったロックアルマジロは海賊たちを次々となぎ倒していく。

 何せ恐るべきスピードで岩石のボールが突っ込んでくるのだ。

 そんなものをまともにくらって、ただで済むわけがない。


 あっという間に海賊たちは数を半減させた。

 しかし……


 「バカ野郎!! 防御を徹底しろ!! 盾を持ってるものは盾を使え!!」

 「言われなくてもわかってらぁ!!」


 残ったものたちはそれなりに手練れであった。

 ロックアルマジロの攻撃もうまくかわしたり、盾で防いだりしている。


 それどころか……


 「ぎゃはは!! いくら召喚獣が強力でもテイマーが棒立ちじゃ世話ねーぜ?」


 隙をついてヨハンへと迫り斬りかかってくるが。


 「ロックアルマジロ!!」


 岩石のボールとなって海賊たちに突撃していたロックアルマジロが素早くヨハンのもとまで戻り、その硬い岩石の体でヨハンへの攻撃を弾く。


 「ち!」

 「残念だったな海賊!! いけ!! ロックアルマジロ!!」


 そしてロックアルマジロはそのまま岩石のボールとなって海賊の腹へと突撃。

 海賊はこれをかわすことができず、そのまま吹っ飛んでいく。


 「なかなかに厄介だなこりゃ……」

 「どうするよ兄貴」

 「ここは一旦距離を取るぞ」

 「アイサー」


 リーダー格の海賊の一声でヨハンを取り囲んでいた海賊たちがヨハンとロックアルマジロから距離を取るべく後退をはじめる。

 これにヨハンは。


 「少し離れて様子見か? でも距離を取れる空間が果たしてあるかな?」


 右手を突き出し叫ぶ。


 「召喚……来い! オイルヘルドロス!!」


 宙に魔法陣が浮かび上がり、そこから全身ドロドロで常に油のような何かを滴らせている異形のモンスターが飛び出してきた。


 「オイルヘルドロス!! 逃げ腰のそいつらを油まみれにしてやれ!!」


 ヨハンが叫ぶと全身ドロドロのオイルヘルドロスは口を大きく上げて奇声をあげる。

 そして鼻につく嫌な臭いを放ちながら上空へと飛びあがると、ヨハンから距離を取る海賊たちに向かって大量の油を吐き出す。


 「が!?」

 「な、なんだ!?」

 「こいつ、何をかけやがった!?」


 オイルヘルドロスが吐き出した油を浴びた海賊たちは最初何をかけられたのかわからなかったが、すぐにそれが引火性の高い油であると気づく。


 「ま、まずいぞ! こいつは油だ!! まさかやろう!!」

 「くそ!! すぐに退散だ!!」


 海賊たちは慌てて逃げ出そうとするが。


 「残念だけど、逃がすつもりはないよ!!」


 ヨハンは叫んで再び右手を突き出し叫ぶ。


 「召喚……来い! フェニックス!!」


 宙に魔法陣が浮かび上がり、そこから炎の鳥が飛び出してくる。

 そして、そのまま炎の鳥は油まみれの海賊たちのもとへと向かい、彼らを容赦なく焼いていく。


 フェニックスの炎だけでも人間にとっては十分に脅威であるのに、引火性の高い油を全身に浴びているせいで海賊たちは抗うことができず、すぐに全身を炎に飲まれ倒れていく……

 あっという間に海賊たちは全滅した。


 「ふぅ……とりあえず、ここは片がついた。早く他に海賊がいる場所に行かないと!」


 そう言ってヨハンがその場を後にしようとした時だった。


 「隙あり!!」

 「っ!!」


 今まで物陰に隠れて、息を潜めていた海賊の生き残りが飛び出してきてヨハンへと襲いかかってきた。

 しかし、これをロックアルマジロが岩石のボールとなって阻もうとする。

 だが。


 「へへ! そいつの動きは観察しててお見通しよ!!」


 海賊は叫んで猛スピードで突っ込んでくる岩石ボールをくらりとかわす。

 ならばとオイルヘルドロスが油を吐き出すが、これも海賊はなんなくかわし、上空から襲い掛かるフェニックスの攻撃を軽い身のこなしで避け、アクロバティックな動きでヨハンの背後に回ると。


 「へへ! いただき!!」


 ヨハンの腰のホルスターからMP-446 バイキングを引き抜いて奪う。


 「っ!! こいつ!!」

 「何怖い顔してやがる? 海賊が他人のものを奪うのは普通のことだろ?」

 「黙れコソ泥!! そいつはリエルが僕に渡してくれた大切なものだ! 返しやがれ!!」


 ヨハンが怒鳴ると拳銃を奪った海賊は愉快に笑い、MP-446 バイキングの銃口をヨハンへと向けてくる。


 「へへ! 海賊が『返せ』と言われて『はい、そうですか』って返すかよ。お前は奪われた自分の武器で死ぬんだ。まぁ安心しな、こいつは戦利品として俺様がこれから重宝してやるからよ? こんな見たこともねぇ形の銃に勝るお宝はねぇぜ!」


 そう言って海賊は引き金を引く。


 「じゃあな! あばよギルドの若造! あの世でたっぷり自分の浅はかさを後悔しな!」

 「っ!!」


 しかし、何も起こらなかった……

 しばし静寂の時が流れる。


 「あ?」


 海賊は眉をひそめ、再度引き金を引く。

 が、やはり何も起こらない……というより引き金が最後まで引かれていない。


 「何だこれ? どうなってやがる? 不良品か? 火薬と弾丸が詰め込まれてないのか? そういや火縄が見当たらねぇが、そのせいか? ホイールロックみたいにゼンマイを巻かないといけないのか? くそ!! どうなってやがる!?」


 引き金が引けず、イラつく海賊を見てヨハンは思わず笑いがこみあげてしまう。


 「く、くくく……あはははは!」

 「こ、小僧!! 何笑ってやがる!!」

 「いや、笑うも何もバカなことをしてるなって思ってさ」

 「あ?」

 「まぁ、僕もリエルから扱い方を教わってなかったらお前みたいな行動を取ってたかもしれないんだけどさ」


 そう言ってヨハンは一息つくと気を引き締める。


 「そいつで僕を殺したきゃ、セーフティーくらいちゃんと外せよ素人が」


 そう言ってヨハンはMP-446 バイキングの側面のセーフティーバーを指さす。

 ヨハンに言われて海賊は思わず指さされた側面を見るが。


 「召喚……来い! 雷槍サンダクト!!」


 その瞬間、ヨハンは右手を突き出して宙に浮かび上がった魔法陣から黄色く輝く雷の槍を引き抜くと。


 「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 「がはぁ!?」


 一瞬にして海賊の心臓を貫いた。

 雷の槍に貫かれたことによって全身が黒焦げとなった海賊はそのまま地面に倒れこむ。


 ヨハンは雷槍サンダクトを手放すと地面に倒れた海賊の死体からMP-446 バイキングを回収する。


 「こいつは返してもらうよ」


 そしてMP-446 バイキングをホルスターにしまい、周囲を確認する。


 「海賊はもういない……よな? うん、大丈夫そうだ」


 そして備蓄倉庫が無事なのを確認して村の入口方面へと向かおうとした時だった。


 「あら? あらあら? これは……ワタシのおバカな部下ちゃん達が全滅じゃな~い。や~んまったく使えない子たちだこと……」


 オネエ喋りの野太いおっさんの声が背後から聞こえてきた。


 「っ!!」


 振り返ると、酒場から奪ってきたのか、左手で樽を担ぎ、右手に酒が注がれたグラスを持っている筋肉ムキムキマッチョマンな海賊がこちらへとゆっくり歩いてきていた。


 その海賊は立ち止まると樽を地面に置き、グラスの中の酒を飲み切ると樽の上に置いた。

 そして軽く肩を鳴らす。


 「まったく使えないおバカな部下を持つってや~ね~。そうは思わない? ギルドの坊や」


 そう言って筋肉ムキムキマッチョマンな海賊はヨハンを見てニヤリと笑う。

 そんな海賊を見てヨハンはロックアルマジロ、オイルヘルドロス、フェニックスの3匹に攻撃の支持を出す。


 「みんな、やれ!!」


 しかし筋肉ムキムキマッチョマンな海賊は舌なめずりすると、右手を上空に掲げ。


 「悪いけど、そのモンスターちゃんたちじゃワタシ、興奮しないの……ワタシ、かわいい男の子相手でないと楽しめないわ」


 そう言って右手に装備しているマジックアイテムを発動する。


 そのマジックアイテムは「制圧の腕輪」。

 自分より弱い魔物の動きを制限するマジックアイテムである。


 「モンスターちゃんたちには静観しといてもらうわよん」


 筋肉ムキムキマッチョマンな海賊がウインクしながらそう言うと、ロックアルマジロ、オイルヘルドロス、フェニックスの動きが止まった。


 「な!? バカな!!」


 驚くヨハンを見て筋肉ムキムキマッチョマンな海賊おっさんが内股になって体をクネクネさせながら興奮しだす。


 「いやん! いいわその表情!! たまらない!! ゾクゾクするわ!! さぁ坊や! ワタシとこれからいっぱい楽しいことしましょう! ワタシ、坊やの事結構好みかも、ウフフ」

 「何がウフフだ気持ち悪いな!」


 思わずヨハンは叫ぶが、逆効果だったようだ。


 「イキがいい子はワタシ好きよ! ウフフ、たまらないわね! やっぱり男の子は坊やの年くらいの子が一番ワタシの好みだわ! 斬首島に連れ帰っていっぱいかわいがってア・ゲ・ル! う~んチュ!」


 筋肉ムキムキマッチョマンなおっさんの海賊に投げキッスをされた。

 ヨハンの背筋が一瞬で凍り付く。


 き、きめぇ……なんだこいつ?

 こいつは関わったらダメなやつだ!


 とはいえ、逃げるわけにもいかない。

 こいつは海賊で、こいつらを倒すために今自分はここにいるのだから。


 だから吐き気と嫌悪感と逃走したい気持ちを抑えて、ヨハンは目の前の海賊と対峙する。


 「あんまりふざけた事いうなよ? 僕がお前なんかに負けるものか!!」

 「お前じゃないわ坊や、ワタシはビルよ。ちゃんと覚えておきなさい。今夜から坊やをかわいがってあげる主人の名なんだから、うっふ~ん」

 「何が主人だ! 冗談も大概にしろ!」

 「あ~ん! いいわ!たまらない!! その反抗的な態度がベッドの上でどう変化していくのか、今から楽しみすぎて勃起が止まらないわ!」


 そう言って筋肉ムキムキマッチョマンなおっさん海賊のビルは内股になって右手で自らの股間を掴む。

 そしてヨハンを見てニヤリと笑った。


 「あぁ、こいつはさっさと片づけないと見ているこっちは不快で仕方ないな!!」

 「う~ん!! いいよその顔!! いいねぇ!! 最高!! さぁおいで坊や!! ワタシが遊んであげる!!」


 互いに一歩踏み出して相手へと攻撃をしかける。

 ヨハンとビルの戦いがはじまった。

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