キャプテン・パイレーツ・コミッショナー(6)
村の中に気になるところがあると言ってカイトたちと拠点に戻らず、別行動を取る事になったドリーは村の中を探索する事なく河川沿いに村を出る。
そして、機雷の敷設作業中に目についたある地点までやってくる。
「……ここら辺だったかな?」
ドリーはそういいながら川のほとりの木々を見回しながらある物を探す。
そして、川辺から少し離れた場所をゆっくりと進むある物を見つける。
「見つけた。はぁ……まったく、あれでカモフラージュしたつもりなのかな?」
ドリーはため息をついてゆっくりと進むある物へと近づく。
「ドルハン、一体ここで何してるの?」
そしてある物にそう声をかけると、ある物はピタリと動きを止めた。
ドリーが声をかけたそれは巨大なカメの甲羅であった。
アルバ村周辺には大型のリクガメ科のモンスターも棲息するため、別段動く巨大なカメの甲羅があってもなんらおかしい事ではない。
しかし、カメの甲羅と言っても、すべてのカメが同じ甲羅をしているわけではない。
その動く巨大な甲羅はここには存在しないはずの甲羅であった。
「その声……まさかドリーか?」
動きが止まった巨大なカメの甲羅から男の声がした。
そして巨大な甲羅がパカっと二つに割れて、中からバンダナを頭に巻いた、いかにも「海賊です」といった風貌の男が現れる。
ドリーはそんな男に声をかける。
「そうよドルハン、久しぶりね」
巨大なカメの甲羅の中から現れたドルハンはドリーを見て鼻で笑う。
「は、こいつは驚いたぜ! まさか空賊に捕まったバカな女がギルドユニオンの勢力圏内でのうのうとしてるとはな! どうした? 空の貴公子さまに捨てられて今度はギルドの連中にでも泣きついたか?」
「ベルシのやつならくたばったよ。知らないわけないでしょ?」
ドリーがそう言うとドルハンはニヤリと笑う。
「知ってるよ。おかげで空賊連合内がてんやわんやって事もな。でもよぉ……だったらなんでドリー、おめぇさんは斬首島に戻ってこないんだ? 空の貴公子さまの呪縛は解けてんだろ?」
その問いにドリーは。
「どうして斬首島に戻らない? 当然でしょ? だって、わたしをベルシの呪縛から解き放ってくれたのはカイトくんで、わたしはカイトくんに必要とされてるからよ!! そしてわたしもカイトくんを必要としている。だから海賊をやめる事にしたの。わたしはね、もう斬首島には戻る気なんてさらさらないのよ!!」
そう言い放った。
ドルハンはやれやれと肩をすくめて。
「なるほどな……おめぇさんが海賊をユニオンに売ったって噂は本当だったわけか。ほんと何考えてやがんだか」
ため息をつき、巨大なカメの甲羅の上に手をのせる。
そしてドリーに問うた。
「ところで、参考までに聞くがなんで俺がここに潜んでるってわかった?」
ドルハンは自分のカメへのカモフラージュは完璧だと思っていた。
たとえ、それが手の内を知ってる元仲間であっても、そこに自分がいると最初から注意してない限り、気付かれないはずだという自信があった。
しかしドリーは小馬鹿にしたように笑う。
「なんでもなにも……あんた、その甲羅ウミガメのものじゃない……この辺りに棲息してるのは常識的に考えてリクガメなんだけど? ウミガメとリクガメじゃ甲羅の特徴に違いがありすぎるんだけど、そんな事も知らないの?」
ドリーに言われてドルハンは改めて甲羅を見てようやく気付く。
「あぁ……言われてみればそうだな……こんな陸の奥深くに来る事なんて滅多にねーからな。失念してたぜ」
そんなドルハンをドリーは嘲笑する。
「失念? こんなお子様でもわかるような常識も持ち合わせてないバカが一体ここで何しようっての? さっさと愛しの海に帰ったらどう? あんたじゃ歩ける陸地なんて斬首島くらいしかないでしょ」
「言うじゃねーか。この売女が」
「事実でしょ? そもそもなんでアン・メリー号派閥のあんたがこんな陸地の奥深くにいるのよ」
ドリーがそう聞くとドルハンが鼻で笑う。
「はん、アン・メリー号派閥ねぇ……おめぇさんは知らないだろうが、今のブラックサムズにはもうそんな派閥はねぇよ」
ドルハンの言葉にドリーは眉を潜める。
「派閥がもうない?」
「あぁ、そうさ! おめぇさんが空の貴公子さまに捕まって、やろうの慰め物になってる間にブラックサムズは変わったんだよ! 組織改革ってやつさ! 今のブラックサムズに派閥なんてもんはねー! つまりは誰もが陸海どちらも襲撃するってこった!!」
そうドルハンが言った直後、ドリーの背後で物音がした。
「っ!!」
ドリーが振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
「これはまた懐かしい顔がいたものだ……やぁドリー、久しいね」
その女性を見てドリーが驚き、目を見開く。
「クイラ姐さん……どうしてここに!?」
ドリーからクイラと呼ばれた女性は鼻で笑うと。
「どうしても何も我らは海賊だぞ? つまりは村を襲う。ただそれだけのためにだが?」
そう言ってクイラを顎をくいっとさせる。
それが合図だったのか、ドルハンが頷いて二つに割れた巨大なカメの甲羅の一つを一気に持ち上げる。
「っ!!」
ドリーがその動きに素早く反応するが。
「させないよ」
クイラが腰のベルトに差していた30センチほどの長さの杖を引き抜き、素早く詠唱、杖先をドリーの足下へと向ける。
するとドリーの足下に巨大な落とし穴が開いた。
「しまっ!!」
ドリーは抵抗する事もできず落とし穴に落ちていく。
「ドリー、君の持っているマジックアイテム『水の精霊石』と『魔結晶の腕輪』はとても厄介だ。だから村を襲撃している間はそこで大人しくしといてもらうよ」
クイラがそう言うとドルハンがドリーが落ちた穴に巨大なカメの甲羅を被せて塞ぐ。
「姐御、これでひとまずギルドのやつらに報告がいくのは防げましたな」
「それも短い時間稼ぎでしかない。直にドリーが戻らないことを不審に思ったギルドの連中が探しに来る。それまでに準備を済ませないとな」
「では決行は……」
「今夜だ。皆にそう伝えろ」
「アイアイサー」
ドルハンが敬礼し素早く立ち去っていく。
クイラもその場を去ろうとするが、今一度巨大なカメの甲羅が被せられたドリーが落ちた穴を見て。
「お前の処遇はすべてが終わったら決める。覚悟しておけよ裏切り者」
そう呟き、その場を後にする。
空はすでに夕陽で赤く染まっていった。
ドリーと分かれ拠点に戻ってくると、村を一望できる小高い丘陵地の上に建つ元羊飼いの家の周囲は変わり果てた姿となっていた。
丘陵地には塹壕がいくつも掘られ、バリケード代わりの有刺鉄線がいくつも設置されている。
そして建物の前には土嚢が積まれ機銃が設置された。
まさに完璧な陣地構築だ。
第1次世界大戦の西部戦線が舞台の映画のロケ地にはバッチリだろう。
それらを完成させた功労者であるヨハン、ココ、TD-66は塹壕を掘りまくった影響か土で全身が汚れていた。
TD-66は警護ドイロイドであるため土で汚れただけで汗は当然かかないが、ヨハンとココは全身汗だくでもあり、特にココにいたっては汗で下着が透けてしまって丸見えであった。
とても目のやり場に困る。
そんなこちらの気も知らずにココは帰ってきた自分に気付くと。
「あ、カイトさま戻ってきた!!」
顔をぱーっと明るくして、そのまま抱きついてきた。
「カイトさまー!!」
「わ!? ココ!?」
自分に笑顔で抱きついてきたココを見てフミコ、ケティーの表情が険しくなるがココは気にせず体を密着させてくる。
おかげでたわわな感触を味わう事ができたが、同時にココは全身汗だくで泥だらけでもあるわけだから、できれば熱い抱擁はご勘弁いただきたいのだが、ココがそんなもの気にするわけがない。
「カイトさま! ココとっても頑張りましたよ! だから頑張ったココを慰めてください! 子作りしましょう子作り!!」
そう笑顔でココが求めてくるが、フミコとケティーがココを自分から引き剥がそうとやってくる。
「この雌牛、何言ってるんだ!! まだ発情期継続中なのかよ? かい君から離れろ!!」
「まずは体を洗え川畑くんに汚い体で抱きつくな!!」
「ちょっと何カイトさまから引き剥がそうとしてるの? 邪魔なんだけど!? あぁカイトさまー!! ココを助けてーーーー!!」
騒ぐココをフミコとケティーが自分から引き剥がし、どこかへと連れて行ってしまった。
それを見てリーナとエマが苦笑いしながら。
「た、たぶん水浴びさせにいったんだと思います。ココさん汗だくだったし」
「水浴び中にギガバイソンの姿に戻ってお風呂壊されなきゃいいけど、大丈夫かな?」
「ちょっとエマ!」
そんな事を話しだしたが、リエルが笑いながら自分の隣にやってくる。
「あはは! 相変わらずエマちゃんはココに厳しいんちゃうか? もうちょっとお手柔らかにしたってや! 大事な牛乳を生み出す母体やねんから」
そう言いながら自分の背中をバシバシ叩いてくるが、そんなリエルを見てまだギガバイソン牛乳を諦めてなかったのかとため息をつきたくなった。
リエルが企んでいた計画についてはケティーから聞かされたが、万が一自分とココがそういった関係になってココが身籠もったとしてもリエルにだけは近づけないようにしよう……
そう思っていると、気配を消していつの間に自分とリエルの背後にやってきたのか、全身汗だくで泥だらけのヨハンがうらめしい顔で立っていた。
「カイト……」
「わっ!? よ、ヨハン!?」
「な、なんやビックリしたぁ! 心臓に悪いできみ! 無言で背後に立たんとってや気持ち悪いな!」
いくら驚いたとはいえリエルの言い方はあんまりだとは思うが、それでも気配を消して近づくのはやめてほしい。
そう思っているとヨハンはうらめしい顔をこちらに向けて。
「はやく戻ってきて手伝ってくれるんじゃなかったっけ? めっちゃ大変だったんだけど」
そう低いトーンで言ってくる。
「あーすまんすまん、教会の補修作業はすぐに終わったんだけど、河川に機雷を敷設するのに時間がかかってな……とは言っても機械の騎士さんとココがいたんだから力仕事ならそこまで苦労はなかっただろ?」
そう聞くと、ヨハンではなく隣にいるリエルが視線を逸らして。
「ま、まぁTD-66はともかくココはほら、自由奔放な性格やからな? こちらの支持通りに動くとは限らんっちゅーか……」
そう言葉を濁すが、ヨハンははっきりと。
「ココは最初は手伝ってくれたけど、すぐに飽きて遊びだしたよ。確かに塹壕は掘ってくれたけど、同じくらい、無駄に意味のない塹壕ができて、それを埋めたり、有刺鉄線も笑いながら変な設置の仕方するしで無駄に労力くったよ!」
そう怒鳴った。
うん、なんとなく想像はつくな……
適材適所と思って力仕事を任せたつもりだったが、ココも一緒に連れてくべきだったのか?
それはそれで、また別の問題が発生していただろうが……
「そ、そうか……そいつは大変だったな……なんというかご愁傷様」
そう申し訳ないと思いながら言うと隣でリエルがため息をついた。
「カイト……それは逆効果やで」
「へ?」
それからしばらくヨハンの怒りは収まらなかった。
ヨハンの怒りが収まってから自分はヨハンを拠点である元羊飼いの家から少し離れた場所へと連れ出した。
思いだした事があったからだ。
それはドルクジルヴァニアからこのアルバ村へと出発する朝、次元の狭間の空間で朝食を食べている時にカグから告げられた事なのだが、すぐに試そうと思って忘れていたのだ。
アビリティーチェッカーを懐から取り出し、液晶画面を見ながら思う。
(カグのやろうにアドバイスを受けるのもなんだか癪だ……これからは暇な時に新たな機能が増えてないか調べるためにこいつをいじっておかないといけないな)
「それでカイト、話ってなんだい?」
ヨハンの言葉で視線をアビリティーチェッカーの画面からヨハンへと向ける。
「悪い……ちょっと試したいことがあってな」
「試したい事?」
「あぁ……ヨハンは今、能力を俺に奪われた状態だ。ゆえに今は異能を有していない」
「そうだね」
「そして、お世辞にも剣や槍、弓や銃の扱いがうまくなっているとは言い難い」
そう指摘するとヨハン表情を曇らせる。
「そうだね……どうにもうまく扱えない。頑張ってはいるんだけどね……なんでだろ?」
そう言ってへこむヨハンを見てため息をつく。
「なんでも何もヨハン、自分で気付いてないのか? ヨハンは異能を有していた時は自分で召喚した武器は普通に扱えてただろ?」
「あぁ、そうだね……だからこそ、今は歯がゆいんだ。なんであの時は扱えたのにって」
そう言ってヨハンは悔しがる。
なので答えを教える事にした。
「なんでだって? 簡単だろ……ヨハン、それはヨハンが異能の武器を扱う事に長けた人間だからだ」
「僕が、異能の武器を扱う事に長けた人間?」
「そうだよ、普通の武器をうまく扱えないのがその証拠だ。つまりはヨハンは異能で生み出したり喚びだした武器でない限りまともに扱えないんだ」
そう告げるとヨハンは手で顔を覆って笑いだした。
「は、ははは……何だよそれ? それじゃ僕は、もう戦闘が発生したら不様に逃げるしか術がないって事じゃないか……だってもう僕には異能は……ないんだから」
ヨハンはそう言って悔しそうに拳を握りしめた。
そんなヨハンにある事を告げる。
「そうでもない……方法はある」
「方法って?」
「それは……俺がヨハンから奪った能力をヨハンに返還するんだよ」
そう言ってヨハンから奪った「召喚」の能力のエンブレムが宙に投影されているアビリティーチェッカーをヨハンへと見せる。
「返還って……そんな事が?」
「あぁ、可能だ……このエンブレムを使えばな」
そう言って、宙に投影されたエンブレムを指でスライドさせ、能力を奪う時にタッチするエンブレムを持ってくる。
その能力を奪うエンブレムの横に今まではなかった別のエンブレムが表示されていた。
それこそが任意の対象者に奪った能力を返還するエンブレムである。
通常、各異世界で転生者、転移者、召喚者から能力を奪った後は彼ら彼女らを殺すため、この機能は本来必要ない物だ。
しかし、今回の異世界では自分のいた世界以外からきた転生者たちも多く存在するため、ヨハンのように必ずしも転生者たちから能力を奪った後、殺す必要はないのだ。
そして、場合によっては彼らに能力を保持しておいてもらったほうがよい場合もある。
そんな時に使用するのがこの「返還」という機能だ。
とはいえ、注意しておかなければならない点がある。
何も考えなしに対象者へ奪った能力をそのまま返還した場合、アビリティーチェッカーから奪った能力のエンブレムは消え去る。
つまりは能力を持ち主に返還する事によって、その奪った能力を自分は当然ながら失うのだ。
カグ曰く、これを防ぐには3つの手段がある。
ひとつがアビリティーチェッカー上で投影された能力のエンブレムをコピーアンドペーストして増やし保管しておくこと。
これにはポイントとやらをいくつか消費するらしいが、これで能力を対象者に返還しても問題なく使い続けられるらしい。
旅を始めた最初の頃にポイントって何だよ?とカグに尋ねた事があるが、いまだにポイントをどうやって貯めるのか、なんでポイントが貯まるのかもわかっていないが、こういった機能を使うのにポイントは必要なものらしい。
うん、地球を旅立ってからそれなりになるが、いまだにポイントが何なのかわからん……
わからんがコピーアンドペーストにはポイントが必要なのだ。
もうひとつがバックアップで、アビリティーチェッカーの予備容量に返還する能力のエンブレムのバックアップを取っておけば、能力を返還し、エンブレムが消えても予備容量にバックアップしたエンブレムを引っ張り出してきて使用できるという。
そして、これも当然ながらそれなりのポイントを消費するようだ。
最後がアビリティーチェッカーの復元ポイントを作成するという方法で、復元ポイントを作成しておけば、アビリティーチェッカーに何かあった時、その復元ポイントを作成した時点の状態に戻せるという。
つまりは能力を返還する前に復元ポイントを作成しておけば、能力返還後に復元ポイントの状態に戻す事で返還した能力を引き続き使用する事ができるわけだ。
そして言うまでもなく、これにもポイントは必要で、かなり消費するらしい。
なんだかパソコンなりタブレットなりスマホのデータ保存のやり方のようにも思えるが、まぁ自分でも理解できるやり方にしたらこうなったのだろう。
下手な専門用語に専門的なやり方より、こっちのほうがわかりやすくてありがたい。
ポイントとやらが今どれだけ貯まってて、どれだけ消費するかはわからないが、安全策をとってコピペ、バックアップ、復元ポイントの作成すべてを実行する。
そしてアビリティーユニットにアビリティーチェッカーを装着する。
「それじゃあヨハン……『召喚』の能力を今からヨハンに還す」
自分がそう言うとヨハンはゴクンと唾を飲み込んで頷いた。
それを見てアビリティーチェッカーの液晶画面上に投影された返還のエンブレムをタッチし、続けて召喚の能力のエンブレムをタッチする。
『return ability 』
アビリティーチェッカーから電子音声がして、能力を奪う時とは反対にアビリティーユニットから光の暴風が吹き出し、それはヨハンへと向かっていく。
光の暴風はヨハンを飲み込み、そしてアビリティーユニットからは何もでなくなった。
そしてアビリティーチェッカーの画面が真っ暗となる。
「終わった……のか?」
アビリティーチェッカーの画面に目を落してから視線をヨハンに向けると、ヨハンは驚いた顔で自身の両手をまじまじと見ていた。
そして……
「これは、力が……以前のように溢れて?」
そう言って微かに震えるヨハンに声をかける。
「試しに何か召喚してみたらどうだ? それで呼び出せたなら成功って事だ」
ヨハンは頷くと右手を突き出し叫んだ。
「召喚……こい! 聖剣バルムンク!!」
すると宙に魔法陣が浮かび上がり、そこから剣の柄が飛び出した。
「っ!!」
ヨハンはその柄を恐る恐る握り、そして。
「はぁぁぁぁぁ!!」
目を閉じて一気に引き抜いた。
両手で柄を握り、ゆっくりと目を開ける。
「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」
すると、その手には紛う事なき、聖剣バルムンクが握られていた。
「す、すごい……僕がまた……また召喚を使う事ができた!!」
そう言って涙を流すヨハンに近づいていって、その肩にぽんと手を置いた。
「冒険者サークルの頃は召喚の能力に舞い上がりすぎて周りが見えていなかった。だから失敗した。けど、ヨハンは十分に反省したんだ。同じ過ちは二度と繰り返さない、そうだろ?」
その言葉にヨハンは力強く頷く。
「あぁ!! 当然だとも!! ミラやアヒムに誓って!! 絶対に!!」
「なら、今のヨハンは召喚の力を使いこなせるはずだ。そしてそれはすぐにでも始まる海賊との戦いで役に立つ! 守り抜くぞ!! アルバ村を!!」
「あぁ!! 当然!!」
そう言うヨハンとハイタッチをかわした。
ちょうどその頃、河原の様子を見に行ったキャシー、シーナ、シルビアの3人は目の前の光景に歯がみしていた。
「これって……」
「くそ!! やられた!!」
「悔しがるよりも……はやくこの事をカイトさんに伝えないと!!」
そう言ってシーナはケティーから渡されていたスマホを取り出してカイトに連絡を取ろうとする。
海賊たちの脅威が今まさに迫っていた。




