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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
1章:旅の始まり

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旅の始まり(1)

 「はぁ……空が青いな」


 空を見上げながらつい口走ってしまった。

 昨夜は台風で学校が休みになるのではないか? と期待したが朝になってみればこの天気である。

 夜のうちに台風は日本列島を通り越し熱帯低気圧に姿を変えたらしい。

 それならそれで置き土産の一つや二つあってもいい気がするが、あいにくと自分の住んでる地域には別段被害はなかったようだ。

 とはいえニュースを見れば台風が通過した地域は被害が多数あったようなので、あまり不謹慎なことは考えるものではないのだが。


 「それでも休めるかという期待を抱かせておいて、ちゃぶ台返しされたこの感覚をなんとかしてほしいぜ……」


 とは言うものの休みになっていたからといって、別段何かやりたいことがあったわけではない。

 自分にはこれといった趣味がないし、趣味に発展するかもしれない興味の対象もない。

 好きでやっている何かがあるわけでなく、やりたい何かもない。

 スポーツやキャンプなどのアウトドアをするでもなければ、映画やドラマ、アニメ鑑賞や読書、ゲームなどのインドア趣味も持っていない。


 いわゆる無趣味、無関心な冷めた人間。

 人によってはつまらない人間と評されるだろう。

 それが俺、川畑(かわばた)界斗(かいと)のすべてだ。


 唯一の生きがいとまではいかないが楽しみなことはバイトの給料の振り込み日に残高をチェックすることである。

 これを他人に話すと守銭奴扱いされるので最近は誰にも言っていない。

 このままではダメだと思いながらも、どうにも何かにのめり込むことができずにいた。


 「何か部活にでも入るべきだったのかもしれんが……これと言って面白そうなのもないしな、うちの学校」


 そう言いながら学校へと歩を進めていたのだが、その時異変が起こった。

 強い揺れが体全体を襲い、立っていられなくなる。


 「な……地震!?」


 周囲を見回すとかなり強い揺れのようで道路の標識や信号がグラグラと揺れていた。

 そして揺れはかなり長く続き、平衡感覚を保てなくなる。


 「おさまった……か?」


 揺れはおさまり恐る恐る立って周囲の様子を窺う、どうやらこれといった被害はないようだ。

 そう思った時だった。

 再び大きな揺れが爆発音と共に起こった。

 そしてすぐに爆発音のした方から衝撃波が襲ってくる。

 その衝撃波に周囲にいた人々もろともその場から吹き飛ばされてしまう。


 どれくらいの時間宙を舞っていたのかわからない。

 が、そんなことを考える間もなく地面に落下し、激突した衝撃の激痛で地面をのたうち回った。


 後に続いて大量の瓦礫や車、土砂が空から降り注いでくる。

 直撃しなかったのは奇跡と言えるだろう。

 どれくらいの時間そうしていたかわからないが呼吸を整え、なんとか上半身を起こせるくらいまでは回復した。まだ痛みは引いていないがそうも言っていられない。


 「一体……何がどうなったんだ?」


 顔をあげると、それには信じられない光景が広がっていた。


 「何だ……あれ?」


 爆発音のしたほう、衝撃波が押し寄せてきた方角のすべてが吹き飛んでおり真っ赤な炎が空高く舞い上がっていた。

 そして、そこに()()はいた。



 「これは夢だよな? なぁ………誰かそう言ってくれよ!!」



 叫んでも誰も答えてくれなかった。

 当然だ、自分の周囲には瓦礫の山しかない……()()()()()()()()()()()()()()()

 街は壊滅し恐らく交通機関も麻痺しているだろう、というかこの周辺のインフラ設備がまだ稼働しているがどうかすら怪しい。



 この日、世界は一変した。

 地球人類の文明は突如出現した災厄によって滅亡の危機に瀕したのである。

 そうまるで瑞獣の特徴をすべて有したような禍々しい巨大な怪獣の出現とその攻撃によって。

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