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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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次なる定例クエスト(1)

 空賊連合によるヴィーゼント・カーニバルへの介入事件は首謀者である空賊連合幹部、空の貴公子ベルシを倒した事によって幕を閉じた。


 とはいえ、ベルシが倒されたからと言ってコーサス要塞郡を攻めていた空賊連合たちが一斉に撤退を図るわけではない。


 ベルシが死んだ事により赤紫色の靄が完全に消滅し、空賊たちは退路を断たれたが、それでも彼らは交戦を続けた。

 結果、完全な事態の鎮圧には丸1日を要する事になったのだ。


 空賊連合はコーサス要塞郡を両端の小砦から順に占領していき、最後に包囲し逃げ場をなくしたメインの大砦を陥落させる算段だったようだ。

 なのでコーサス要塞郡のすべての砦を赤紫色の靄で覆いながらも大砦に襲撃を仕掛ける空賊たちはいなかったという。


 おかげで、大砦とその周囲の小砦を活動拠点としていた複数の有力なギルドに直接的被害はなかった。

 とはいえ、それはあくまで空賊連合側が最初から有力ギルドを相手にするのは面倒だから、最後に包囲するまでそこには手を出さないでおこうとしていただけであって、大砦から遠く離れたコーサス要塞郡の両端に近い小砦での被害は甚大となっていた。


 両端のうち、最も南西に位置する最果ての小砦を受け持ったギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>は無傷であり、なおかつ空賊連合幹部、空の貴公子ベルシに鋼鉄ボディーのゾルダの両名を討ち取る大金星を上げたが、これは例外中の例外であった。


 現にベルシが占領した小砦を受け持っていたギルド<ザ・ライジン>は救援に駆けつけたギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>が助けた3名を除いて壊滅しており、その周囲の小砦も陥落を免れたとはいえ、数名の死傷者が出たという。

 中には全滅は免れたものの、今後ギルドとして活動継続するのは不可能といったレベルまで人的被害がでたところもあった。


 そして両端のうち、ギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>が受け持った小砦とは反対の北西の最果ての小砦を受け持ったギルドは襲撃によって壊滅、小砦も陥落していた。

 救援に駆けつけたギルドによって小砦を占領していた空賊は排除されたが、小砦を受け持っていたギルドの団員は皆殺しにされ生存者はいなかったようだ。


 そんな多くの被害を出した今回の事件だが、捕らえた空賊によれば今回の一件は計画された大がかりな作戦の一環、大攻勢の前触れといったものではなく、よくある「あいさつ程度」の襲撃だという。


 たまたま毎年恒例の定例クエストを視察しに冷やかしに来てみれば、今年に限っては隙がありまくりでうまく行けばワンチャンあるんじゃね?というわけで急遽、今回の作戦が実行されたのだとか……


 あいさつ代わりでギルドが複数潰されるなどたまったものではないが、これが無干渉地帯の現状なのだろう。


 ギルドユニオン、空賊連合、キャプテン・パイレーツ・コミッショナー、邪神結社カルテル。これら4つの勢力の抗争が激しくなれば、どんな小さな衝突でも生じる被害が大きくなる。

 だからこそ、最前線に立つ実力あるギルドが増えないといけないのだ。


 でなければ、実力なき者たちはすぐに蹂躙され命を落す。

 それは巡り巡ってギルドユニオンという組織の首をしめ、弱体化に繋がる……


 ゆえにギルドユニオンという組織は必死になって強力なギルドの増産を急いでいる。

 今はそういう時期なのである。



 さて、話を定例クエスト「ヴィーゼント・カーニバル」に戻そう。

 空賊連合の襲撃を制圧後、翌日には十分に警戒しながらヴィーゼント・カーニバルを再開したわけだが、やはり相当数のギガバイソンたちがベルシによって操られ、コーサス要塞郡に駆り出されていたようだ。


 おかげで翌日、要塞郡の城壁に突撃してくる、ベルシの支配を受けなかったギガバイソンたちはほんの僅かだった。

 心なしか、丘の上でコーサス要塞郡を見下ろしているギガバイソンのメスたちの数も減っているように思える。


 定例クエスト「ヴィーゼント・カーニバル」はギガバイソンの繁殖期に彼らによる人里への被害を抑える狙いがあるが、一方で彼らの繁殖をサポートする側面もある。

 今回の一件でギガバイソンのオスは相当数、数を減らしたはずだ。

 そして、ベルシの支配を受けなかったオスたちが皆メスと繁殖活動できるとも限らない。


 つまりは今回の一件で減ってしまったギガバイソンの数を補えるほどの新生子牛が生まれる保証がないのだ。

 これすなわち、ギガバイソンの絶滅が危惧される事態に発展する可能性すらある。


 今の地域の安定、食料自給率、生態系バランスなどは今の食物連鎖が保たれてこそ保証される。

 今回の一件によるギガバイソンの数の低下はその前提を揺るがしかねず、学術ギルド<アカデミー>の学者たちを悩ませる結果となった。


 そうならないためにも「ヴィーゼント・カーニバル」を続けて、ベルシの支配を受けなかったオスたちには頑張って繁殖活動をしてもらわないといけない。

 学術ギルド<アカデミー>と闘牛ギルド<セニョール・マタドール>が中心となって「ヴィーゼント・カーニバル」に対処する中、捕らえた空賊の証言を元にズエの森奥深くの空賊連合の拠点への強襲も行われた。


 とはいえ、森の奥深くの拠点にはすでに空賊の姿は見当たらなかった。

 今回の襲撃に拠点にいた全員が駆り出されていたという事だろう。

 もしくは居残り組がいたとして、すでに襲撃を察知して逃げ出した後か……


 何にせよ、拠点はもぬけの殻だった。

 とはいえ、無人だったというわけではない……

 連中が寝泊まりしていたであろうテントの中には、さらわれて連れてこられたズエの森周辺の集落や小さな村に住んでいたであろう村娘たちがたくさんいた。


 空賊どもがここに拠点を築いてから今日までほぼ毎日連中に犯され続けたのだろう、彼女たちはすでに精神を病んでいた。

 そして、昨夜この拠点の偵察に出向いた狩猟ギルド<深き森の狩人>の団員の女性のひとりも捕らえられていたが、彼女も同様だ。


 彼女はベルシに捕らえられ魅了(チャーム)をかけられる事はなかったが、空賊たちに一晩中輪姦されていたようだ。

 彼女の状態を見るに、魅了(チャーム)をかけられベルシの言いなりになるのか、そうならずに遠慮なしの空賊たちに輪姦され続けるのか、どっちがましなのかと思ってしまう……


 そんな狩猟ギルド<深き森の狩人>の生き残りの女性に、捕らえられていた村娘たちを救助した後、拠点は焼き払う事にした。

 当然ながら捜索しても空賊連合に関する大した情報などなかったからだ。


 拠点の近くにはロギ・フードをはじめとした狩猟ギルド<深き森の狩人>の団員たちの死体が放置されていた。

 彼らの遺体も回収し、空賊連合拠点の襲撃班はコーサス要塞郡に帰還する。


 空賊連合の襲撃によってコーサス要塞郡の一部は壊れてしまったが、これらの補修も含めて来年のヴィーゼント・カーニバルまでにやっておかなければならないことは山積みだ。

 ヴィーゼント・カーニバルだけではない、時期が決まっている定例クエストはすべて見直しが必要だろう。


 何せよ多くの課題を残してヴィーゼント・カーニバルは幕を閉じたのだった。


 そして今、ドルクジルヴァニアに帰還したギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>のギルドマスターであるカイトは報告のためドルクジルヴァニア市庁を訪れていた。




 「まったく、空賊連合の連中めやってくれたものだな……おかげでこっちはてんやわんやだ。憎たらしいハエどもめ」


 そう言ってユニオンギルドマスターのヨランダは葉巻をくわえ、机の上に山積みにされた書類に目を通す。

 が、あまり困っているという風には見えなかった。


 「そうかい……だったら邪魔しちゃ悪いな? 報告も済んだし退室させてもらうよ」


 ため息をつきながらそう言うとヨランダがニヤリと笑う。


 「まぁそう言うな、話はまだ終わってないぞ?」

 「報告は終わっただろ? これ以上何を話せって言うんだ?」

 「何、ほんの世間話だ。お前も当事者、事後処理について聞いておいて損はない」


 そう言ってヨランダは葉巻を灰皿に押しつけると椅子にもたれながら話し始めた。


 「今回空賊連合のやつらには5つもギルドを潰されちまった……とはいえこんな世の中だ。ギルドとして依頼を受けた以上は連中も死は覚悟はしていただろう、というかそうでなくては困る。その覚悟なしにギルドをやろうなど馬鹿げているからな?」

 「……何が言いたい?」

 「何、つまらない話さ……連中もプロなら覚悟はあっただろうってな? そして、その覚悟があるならたとえ1人だけ生き残ってもこの道を貫くだろう」

 「……死んでいった仲間の分までってか」


 そう言うとヨランダも頷く。


 「そう言う事だ。とはいえ、たった1人でギルドは運営できん。ソロプレイをユニオンは認めていないからな? 一匹狼がしたければ余所へ行けって話さ……結局のところ、闇ギルドに堕ちるにせよ、アマとしてサークルから出直すにせよ、複数のメンバー……仲間が必要ってわけだ。それが得られないならこの街では残念ながらやっていけん」

 「悪徳の街と言われるわりにはボッチに厳しいんだな?」

 「悪さをするにも人手はいるという事さ、それが無理なら余所を当たれ、当然の事だろ? ギルドユニオンはそもそもが複数あったギルドを統一した組織だ。大昔の各ギルドが独立して乱立していた時代だったならば、それぞれのギルドに登録を行えばソロプレイも可能だったかもしれんが、今の世でそんなもの不可能だ、わかるだろ?」


 そう言ってニヤリと笑うヨランダを見てため息が出た。


 「やり方次第ではソロプレイも可能だとは思うけど、それは口を大きくして言わない方がいいんだな?」

 「まぁ、この街で平穏に暮らしたいならな?」

 「そうかい……それで? ソロプレイを認めないならたった1人生き残ったやる気のある逸材をどうやってユニオンに繋ぎ止めるんだ?」


 この質問にヨランダは背もたれから背中を浮かべて前のめりになるとこう答えた。


 「ギルドの再編だよ」

 「再編?」

 「そう……まぁ人材をシャッフルするってわけじゃない。適材適所に生き残った人員を振り分けるって話だ。教会が育てた孤児を各ギルドに振り分けるのと同じ要領だな」


 ヨランダの言葉でリーナとはじめて会った時の事を思い出す。

 あの時はギルドユニオン総本部の受付でリーナを押しつけられるような形であったが、あれと似たような形で壊滅したギルドの生き残りを押しつけられるという事なのか。


 ヨランダによれば、振り分ける人材はまだギルド活動を続けたいと希望する者だけだという。

 そして、ギルドを続けたいと希望する者が知り合いのギルドを尋ね、そこが受け入れると言うならばユニオンとしても本人の意思とそのギルドの意思を尊重し、適当なギルドに振り分ける事はしないという。


 また生き残ったその人材をどうしても欲しいというギルドが現れた場合、ユニオンはそのギルドへと振り分けるという。


 これがギルドの再編というわけだ。

 今回のヴィーゼント・カーニバルにおいて壊滅したギルドは5つ。

 そのうちギルド団員の生き残りがおらず全滅したのは1つだけで、4つのギルドに関しては数名が生き残ったわけだ。


 ユニオンの規定ではギルドを構成できる最低人数は3人から。

 つまりは生き残りが3人いれば、形式上はギルドの存続が可能だ。

 しかし、どこもギルドを継続できるような状態ではなかった。


 生き残ったと言っても、中には精神を病んでしまった者もいる。

 そういった者はもう復帰はできないだろう……


 特に空賊連合の拠点に捕らえられていた狩猟ギルド<深き森の狩人>の生き残りの女性団員は誰の目から見ても心が元に戻ることすら絶望的だった。

 同じくさらわれて捕らえられていたズエの森周辺の集落や村の村娘たちとともにドルクジルヴァニア市内の病院にしばらく入る事になるだろうが、その後は教会に預けるしか道はないだろう。


 そんな心が折れてしまった者たちを除いたメンツでギルドを継続できるところはなかったため、再編が行われるのだ。


 「なるほどな……まぁ、面倒見てくれるギルドがあるならそこに任せるし、そんなギルドはないけど本人にまだやる気がなるならユニオンが見繕ったギルドに振り分けると……相変わらず強引だな」

 「そう言うな、それにやる気のある人材ならいずれユニオンが用意したギルドから独立して、また自分のギルドを設立するはずさ」


 そうヨランダは言うと再び葉巻を手にしてくわえる。

 そしてニヤニヤしながらこんな事を言ってきた。


 「まぁ、そういうわけでよろしく頼むぜギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>のギルドマスターよ? あいつらの事頼んだぜ?」

 「は? 何言ってるんだ?」


 ヨランダの言ってる意味がわからなかった。

 しかし、そんな自分の顔を見てヨランダがニヤリと笑う。


 「おいおい、さっきの話もう忘れたのか? ユニオンが生き残った人材を振り分けるってよ」


 ヨランダの言葉でようやく理解が追いついた。

 長々と事後処理の話をしてきたのはこれのためだったのだ。


 「ちょっと待て!! まさかうちに今回壊滅したギルドの生き残りの何名かを押しつけるつもりか!? 冗談だろ!?」


 思わず叫ぶがヨランダは気にせずに葉巻をふかしながら。


 「冗談を言うためにわざわざ時間をとって説明したと? そんな暇人だと思うか?」


 そう言って愉快そうに笑った。

 このタヌキが!殴ってやろうか!

 そもそもうちはこれ以上、ギルドメンバーを増やすつもりはないっていうのに!


 しかし、そんなこちらの事などお構いなしにヨランダは話を続ける。


 「それにこれは彼女たちたっての希望でな? 再編で新たなギルドに割り当てられるなら恩人のギルドがいいってよ」

 「恩人? 一体何の話だ?」

 「何の話も何も、助けたんだろ? 彼女たちを。言ってたぜ、空賊どもに輪姦されてた自分たちを必死で助けてくれたヒーローだってな。だから彼の傍で恩返しがしたいってよ、モテモテじゃねーか」


 笑いながら言うヨランダを見て、理解した。

 自分達のギルドを希望したのは自分が助けたギルド<ザ・ライジン>の生き残りの女性3人だ。


 うむ……これは正直、フミコやケティーがブチ切れる波乱の予感しかしない。

 どうしたものか?

 思わず頭を抱えてしまう。


 そんな自分を見てヨランダは葉巻を再び灰皿に押しつけて、新たな話題を切り出す。


 「さて、お前さんのお楽しみが増えたところで次の話題だ……これはお前さんにも関係ある話だぜ?」

 「まだなんかあるのか? 新たな悩みの種なら勘弁してくれよ?」


 そう言うとヨランダは鼻で笑う。


 「悩みの種ね……それをお前が言うか? そもそもこれはお前が持ち込んだ悩みの種なんだがな?」

 「は? どういう意味だ?」


 ヨランダの言葉に思わず眉を潜めるが、ヨランダが次に発した言葉を聞いて反論できなくなった。


 「親衛隊(コレクション)だったか? お前が助け出したベルシが魅了(チャーム)で従わせていたという女性たちの総称は」

 「ぐ! そ、それは……」


 ベルシの魅了(チャーム)からフミコの金銀錯嵌珠龍文鉄鏡で解放した彼女たちを自分はベルシとの戦闘後に保護し、ヴィーゼント・カーニバルに参加している多くのギルドの協力を得てドルクジルヴァニア市内に連れ帰り、そのまま病院に預けたのだ。


 当然ながらそんな事をすればユニオンから説明を求められる。

 とりあえず、彼女らの容体がよくなるまで病院に預けるつもりでいたのだが、しかしユニオンは自分から詳しい経緯を聞くと、彼女らの処遇に関して一任するよう求めてきた。


 どっちにしろ、これからどうすべきか迷っていた自分としてはユニオンの要請に従うことにしたのだが、ユニオンとしても対応には頭を悩ませたようだった。


 何せ数が数だ……しかも個別に対応するには彼女たちのバックホーンは複雑すぎたのだ。


 ベルシは彼女たちについて、それぞれがネームドと言っていたが、彼女たちの中には行方不明となっていた複数のギルドの団員もいた。

 1人は所属していたギルドが健在なため、そこに復帰できるだろう。

 しかし、数名はそもそも所属していたギルドが壊滅していた。


 ベルシが彼女たちを手に入れるためにそのギルドを壊滅させたのか、彼女たちがベルシの手に堕ちた後、色々あって壊滅したかはわからない。

 わからないが、彼女たちの処遇はさきほど述べたような再編になるだろう。


 そして、それ以外では無干渉地帯に国境を接する周辺国の関係者の女性達をどうするかだ。

 何せアルティア王国の女騎士にメルホルン公国お抱えの魔女、ハウザ諸王国郡の中でも上級貴族(メイジ)である子爵令嬢にボルヌ帝国の宮廷女魔道師、そしてエルフ領メーカで罪人にされていた女エルフの剣士ときたものだ。


 普通に考えれば即、当事国に連絡して返還すべきだろうが、外交という面では対応を間違えれば周辺国からの侵攻を招きかねない。

 極めてデリケートな案件だった。


 特に彼女たちがそれぞれの国で地位も名誉もない、ただの平民クラスだったならまだよかったのだが、よりにもよってその国の貴族令嬢や賓客待遇で召し抱えていた者までいる。

 場合によってはギルドユニオンが誘拐したと疑われかねない……頭の痛い話であった。


 女エルフに関しては元が罪人であるため、本人が帰国するのを拒絶するだろう。

 誰が好き好んで牢屋に戻るというのだろうか?

 そういった意味では女エルフに関しては脱獄させてくれたベルシに感謝していたかもしれない……


 そんなわけで女エルフに関しては特に頭を悩ませる必要はないのだが、その他の面々は違う。

 今後の外交戦略も踏まえ、適切に対応しなければ命取りとなる。

 そりゃ悩みの種とも言われるだろう……


 「で、彼女たちはどうするんだ?」

 「まぁ、遠征を依頼しているギルドに追加の外交を依頼するしかないだろうな……しかし、考えようによっては、対応さえ間違えなければ周辺国を抱き込める要素が増えるわけだ。悪い話じゃない」

 「なるほどな」


 何か責任を追及されるのかと思ったが、そうではなかったようだ。

 とりあえず安堵の息を漏らすと、その他の女性についても聞いてみる。


 「で、それ以外の女性たちはどうなる?」


 そう聞くとヨランダは灰皿の葉巻を手に取り、再び口にくわえてふかし出す。

 そしてゆっくり煙を吐き出した後でこちらを見ると。


 「どうなるも何も……どうにかする必要があるか?」


 そう鋭い目つきで言ってきた。


 「な……」

 「考えても見ろ? 周辺国の女性たちは何かあれば外交問題に発展する、だがしかし……あいつらはどうだ? ()()()()()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()?」


 ヨランダはそう言って再び葉巻をくわえた。

 まるで興味がないと言わんばかりに……


 しかし、それは仕方がない事だろう。

 何せ彼女たちはギルドユニオンと敵対する組織、空賊連合、キャプテン・パイレーツ・コミッショナー、邪神結社カルテルにそれぞれ所属するのだ。


 彼女たちはギルドの敵、助ける義理はない。

 何より、今争っている敵に対してこちらが拉致したわけではない人間の返還交渉を行うなど馬鹿げている。


 そう、言いたい事はわかる……わかるが、納得はできなかった。


 「ちょっと待て!! それじゃ彼女たちはどうなる!? ギルドユニオンは彼女たちをどうするつもりなんだ!?」


 思わずヨランダに怒鳴ってしまうが、ヨランダは気にした風もなく葉巻をふかしながら。


 「どうするつもりって、そりゃお前……処刑以外に何かあるか?」


 そう言ったのだった。

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