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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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空賊連合(15)

 発射速度と火力が異常な兵器は使っているこっちの頭がおかしくなる。

 トリガーハッピーな状態になるのが大好きな人種なら問題ないだろうが、そうでない人種は撃っているうちに怖くなってきて撃つのをやめてしまうだろう。


 しかし、XM556(マイクロガン)に限っていえばその心配はない。

 なぜならば、恐怖を感じる頃にはすべてが終わっているからだ。


 XM556(マイクロガン)は1分間に5.56mm弾を数千発も発射し一瞬にしてベルトリンクで繋いだ銃弾を空にしてしまう。


 そして、そんなXM556(マイクロガン)の銃撃をくらって敵がまともに立っていられるわけがない。

 当然だろう。


 XM556(マイクロガン)の前身であるM61 バルカン砲を個人携帯用に小型化したM134(ミニガン)には無痛ガンという別名がある。

 生身の状態でM134(ミニガン)に銃撃され、被弾すれば痛みを感じる前に死んでいるからこの別名がついたそうだ。


 そんなXM556(マイクロガン)の銃撃をベルシは真正面からまともにくらったのだ。

 普通に考えればベルシは即死だろう……

 しかし、そのベルシの体は銃撃のあまりの威力に吹き飛んでいったが、自分を閉じ込めるように展開している赤紫色の靄は消えていなかった。


 つまりはまだベルシは生きている。

 まったくゴキブリ以上のしぶとさと生命力、悪運の強さだ。

 本当に反吐が出る。


 そんなベルシの体は見当たらない。

 恐らくはXM556(マイクロガン)の銃撃をくらって吹き飛び、そのまま赤紫色の中に消えていったのだろう。


 「……ったく、面倒だな」


 ため息をついて頭をぼりぼりと掻く。

 何にしてもここに突っ立っていても始まらない。

 XM556(マイクロガン)を手にしながら一歩前へ進むと。


 「ん?」


 足下に違和感を感じた。

 何だろうと思って床を見てみるが、特に変わった様子はない。

 試しにXM556(マイクロガン)に使う5.56mm弾の空薬莢を床に落してみると。


 「!!」


 床が突如グニャリと歪みだし、そしてそこに赤紫色の靄とともに空間の落とし穴が出現。

 空薬莢は赤紫色の靄が渦巻く空間の落とし穴の中へと消えていった。


 「なるほど、ベルシのやろうが狙ってたのはこれか……でも」


 自分の足下に現れた赤紫色の靄が渦巻く空間の落とし穴の上に自分は立っているのに、一向に落とし穴に落ちる気配はなかった。


 それは当然で、自分の足下にはアストラルシールドによって生み出された自分にしか見えない透明な橋が出来ており、落とし穴の上に自分だけの通り道を作っていたからだ。

 これにより、亜空間に落ちる事なく安全に前へと進むことができた。


 (色々勘ぐって、フミコを信用しきれず最悪な事態を想定してアストラルシールドを展開したが、結果的に正解だったわけか……アストラルシールドを展開してるって事は俺にしかわらない。もしも誰の目にも見える形で俺がシールドを展開していたら、ベルシもアホ面してこんな罠ははらなかっただろう。そしたら違った展開になっていたかもな)


 思って、前へと進む。

 赤紫色の靄が渦巻く空間の落とし穴を抜けてもベルシは見当たらなかった。


 「本当に面倒だな……いっその事、この赤紫色の靄を吹き飛ばしてみるか」


 ため息をついてXM556(マイクロガン)をパージし、アビリティーユニットへと戻す。

 そしてアビリティーチェッカーを取り付け、「召喚」のエンブレムを押し右手を突き出す。


 「召喚……こい! 風神剣!!」


 突き出した右手の先に魔法陣が浮かび上がり、そこから剣の柄が飛び出した。

 それを掴んで引き抜き、両手で握ると大きく頭上に掲げる。

 そして。


 「吹き飛べ、クソッタレーーーーー!!」


 叫んで風神剣を床へと振り下ろした。

 直後、突風が発生し、周囲の赤紫色の靄を一瞬にして吹き消した。


 「わ!?」

 「きゃ!? 何この風!?」

 「あ、カイトさま!! カイトさまだ!!」


 風神剣が放った突風が赤紫色の靄を消し去ると、すぐそこに突風に驚いたフミカとフミコがいた。

 そして、すぐに自分に気付いたココが笑顔でこちらへと駆けてきて抱きついてきた。


 「わ!? ココ、いきなり抱きつくなって!」

 「なんでですか? ココがカイトさまに抱きつかない理由がないです!」

 「今は戦闘中だろ! 離れろって」


 そう言ってココを離そうとするが、笑顔のココは自分から離れない。

 するとフミコが物凄い顔で睨んできた。


 「かい君……戦闘中に何やってんの?」

 「それはココに言ってくれ! それよりベルシの野郎は!?」


 そう言って広間全体を見回す。


 「いや、赤紫色の靄の中にカイトと入ってそれっきりだけど……」


 フミカはそう言って、すぐに気付いた。


 「っ!! しまった、ベルシのやつ逃げる気だ!!」

 「何!?」


 慌てて自分もフミカが見つめる先を見る。

 そこは空賊連合たちによって破壊されて穴が空き、青空が見える状態となった壁であった。

 そう、先程ドリーが外へと放り出された場所だ。


 その壁際にベルシは倒れていたが、上半身を起こすとこちらを見てニヤリと笑う。


 「あひゃひゃひゃ!! コンボがリセットされた状態でいつまでも戦うわけねーだろボケが!! さっさと退散してコンボを稼ぎ直さないといけないからな!! まぁ、他の連中はまだ別の砦で戦ってるだろうが僕はトンズラこかせてもらうぜ!! ひひ! わざわざ壁際まで吹き飛ばしてくれてありがとよ!! 移動の手間が省けたぜこのマヌケ!!」


 そう言ったベルシの背後、崩れた壁の外に小型の飛空挺がどこからかやってくる。

 自動で動いているのか、もしくはベルシが赤紫色の靄で操っているのか、その小型の飛空挺は無人であった。


 崩れた壁に乗り付けたその無人の小型飛空挺へと、ベルシは起き上がって激痛に顔を歪めながらも必死に飛び乗ろうとする。


 「まずい!! 逃げられるよかい君!!」

 「くそ!! 逃がすか!!」


 慌ててアビリティーチェッカーをアビリティーユニットに装填、アサルトライフルのステアーAUGに変化させ小型飛空挺へと飛び乗ろうとするベルシを銃撃する。


 「がはぁ!?」


 パンパンパン!と銃声が鳴るが、1発がベルシの足を撃ち抜いただけで、後は脇腹や肩をかすめた程度の戦果であった。


 「ぐぎぁぁぁぁ!!! ぐぞぉぉぉぉ!!」


 しかし、その痛みに耐えてベルシはなんとか小型飛空挺にしがみつく。


 「この!! 落ちろ!!」


 フミコも99式小銃で銃撃するが、ベルシには当たらない。

 そして、小型飛空挺はこの場から離脱すべく、壁から離れ上昇を開始する。

 だが……


 「させるか!!」


 フミカが叫んで脇差の小刀を素早く引き抜くと、そのままベルシに向かって小刀を投げ放った。

 空を切り、小刀は一瞬で離脱しようとするベルシの元に届き。


 「ぐ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!! 手がぁぁ!! 僕の手がぁぁぁぁぁ!!! あがぁぁぁぁぁ!!!!」


 かっこ悪く、慌てて小型飛空挺に両手でしがみついたベルシのその左手を切り飛ばした。


 ベルシの左手を切断した小刀はそのまま地面へと落下していき、ベルシの左手も後を追うように落ちていく。


 左手を失いバランスを崩したベルシであったが、それでも上昇を開始する小型飛空挺に片手のみで必死にしがみつく。


 「ぐがぁぁ!!! きぃぃぃぃ!! ご、ごごでじんでだまるがぁぁぁぁ!!!」


 執念でなんとか踏ん張るベルシと逃走を開始する小型飛空挺に向かって、今度はココが床に落ちていた瓦礫を拾うと。


 「カイトさまから逃げるな!! 素直にカイトさまに殺されろ、このダニめ!!」


 叫んで小型飛空挺に向かって瓦礫を投げ放った。

 瓦礫は爆風を周囲に撒き散らしながら恐るべき速度で飛んでいき、逃走を図る小型飛空挺の横をかすめた。


 「あぁ!! もう当たらなかった!! せっかくココが役に立ったところカイトさまに見てもらいたかったのに!!」


 ココはそう言って、悔しそうに地団駄を踏むが、しかしココの投げ放った瓦礫は直撃こそしなかったものの、その撒き散らす暴風でもって小型飛空挺の上昇を一時的に遅らせた。

 何より片手で必死にしがみついているベルシは暴風によって小型飛空挺が一回転したりとした事でギャーギャ上空で喚き散らしている。

 いい気味だ。


 「ココ、ナイスアシストだ!! 助かったぜ!! これで時間が稼げた!!」


 この機を逃すわけにはいかない。

 叫んでベルシが脱出した壁際まで走って行く。


 「ほんとですか!! やったーー!! ココ、カイトさまのお役に立てました!!」


 喜ぶココを横目に見ながらステアーAUGをパージ、アビリティーチェッカーの新たなエンブレムをタッチする。

 それは同じ銃のエンブレム。

 高火力モード、高射機関砲スタイル……


 壁際へと走る自分の周囲に紫電が迸り、半透明の物質が浮かび上がる。

 その浮かび上がった半透明の物質は今までの銃とは様相が違っていた。


 完全に物質化したそれらは自分の持つアビリティーユニットではなく、外へと繋がった崩れた壁の手前に移動し、トレーラーのような砲台となる。


 そのトレーラーには20mmバルカン砲が装備されてはいるが、他にも色々と機器が装備されているなど、今までのアビリティーユニットを銃に変化させた時とはまったく様相が異なっていた。


 そこには測距レーダ装置JAN/VPS-2やリードコンピューティングサイトが装備されていたのだ。

 これはもう完全に銃ではなく、ひとつのシステムだ。


 それは当然である。

 カイトが出現させたアビリティーユニット・高火力モード、高射機関砲スタイルはただの銃ではない。

 対空機関砲システムなのだから。


 それはVADS-1改。

 M168 20mmバルカン砲を中核とした射撃管制装置を組み合わせた半自動対空システムである。

 日本においては航空自衛隊が基地防空の最後の砦として基地や滑走路に低空で進入するミサイルや敵機を捕捉し、これを迎撃するために導入している。


 具体的にはどういったものかと言うと、測距レーダーと電子機器による計算、カメラによる映像とその解析によって導きだされた移動する標的の未来の予測位置に射撃するというものだ。


 またカメラの画像信号を用いての自動追尾機能もあり、移動する標的に対して常に高精度の対空射撃が可能なのである。


 そんなVADS-1改の操作席に飛び乗り、アビリティーユニットを取り付ける。

 これによりVADS-1改は完全に起動した。


 VADS-1改は本来2人で操作するものだが、アビリティーユニット・高火力モード、高射機関砲スタイルのVADS-1改には関係ない。

 M168 20mmバルカン砲が仰角を上げ、上昇し逃走を図る小型飛空挺をロックオンする。

そして……


 「これでもくらいやがれベルシ!!!!」


 M168 20mmバルカン砲が火を噴いた。

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!という爆音と煙と共に毎分3000発近くの20mm曳光榴弾が上空へと放たれていく。


 拝莢口から大量の空薬莢が一気に飛び出し、上空から泣き叫ぶベルシの声が聞こえた。


 「ち! やっぱダメか!!」


 しかし、VADS-1改を持ってしてもベルシの撃墜には至らなかったようだ。

 ここから見る限り、ベルシがしがみつく小型飛空挺にいくつか被弾したようにも見えるが、ベルシの愉快な恐怖で泣き叫ぶ声しか聞こえてこない。

 肝心の小型飛空挺が墜ちてくる気配がないのだ。


 (どうする!? このまま対空射撃を続けるか!?)


 このままVADS-1改で対空射撃を続けていれば、いずれベルシを撃墜できるかもしれない。

 しかし、それはベルシがパニックったまま今の高度であたふたし続けた場合の話だ。


 小型飛空挺がパニクるベルシも気にせず無理に上昇を続けたら、いずれ射程範囲外に逃げられてしまう。

 そうなる前に撃墜できるかは不明だ。

 賭けに出るか否か……今がその判断の瀬戸際だろう。


 (最初の数秒で決められなかった時点でVADS-1改にこだわる理由はない! 判断を誤るな! VADS-1改は十分にベルシの逃走速度を鈍らせた。だったら!!)


 対空射撃をやめ、素早くアビリティーユニットを操作席から取り外してVADS-1改をパージする。

 そしてその手にアタッシュケースを出現させ、アビリティーユニットをアタッシュケースに取り付け、その姿をアビリティーユニット・地対空誘導弾モード、SAMスタイルの91式携帯地対空誘導弾SAM-2Bハンドアローへと変化させた。


 SAM-2Bを肩に担ぎ、構えて叫ぶ。


 「危ないから俺の後ろに立つなよ!」


 フミコたちが頷いて背後にいなくなったのを確認してから標準を小型飛空挺に定める。


 「さぁ墜ちろベルシ!! これでもくらえ!!」


 叫んで引き金を引く。

 耳がつんざくような音とともに大噴射が後方へと吹き荒れ、ミサイルが上空へと放たれる。

 解き放たれたミサイルは一気に標的のベルシがしがみつく小型飛空挺へと向かって飛んでいく。


 目にも止まらぬ速さでミサイルは上昇、一瞬にして小型飛空挺を捕らえ、これを破壊。

 上空で大爆発を起こした。


 「まったく、汚ねー花火だ……けど」


 肩からSAM-2Bを下ろし、双眼鏡で上空の爆発地点を覗く。

 そんな自分の元へとフミコとココが笑顔で近づいてくる。


 「やったかい君!! さすが!! これで一件落着だね!」

 「さすがココのカイト様です! かっこよすぎます! 痺れます! 惚れ直します!」


 そんな2人と違ってフミカは冷静に懐からシングルシリンダーの望遠鏡で取り出し、上空の爆発地点を覗くと。


 「仕留めたの?」


 そう尋ねてきた。

 なので双眼鏡から目を離して首を振る。


 「まったく、本当にうんざりするなあのクズ野郎……ゴキブリ並のしぶとさと言うか何というか……」


 ため息をつきながらそう言って、再び双眼鏡で上空を覗く。


 「あいつ、俺が放ったミサイルが被弾する直前に、上空から急降下してきた竜? みたいなのに飛び移って撃墜を回避しやがった。俺が撃ち墜としたのは無人の小型飛空挺だけだよ、くそ!」


 双眼鏡から覗く上空にはプテラノドンのような姿の竜の背中に乗ってこの場から逃げ去っていくベルシの後ろ姿が見えていた。

 あの竜のスピードは速い、恐らくはもうSAM-2Bの射程外に到達しただろう。


 「あぁ、風竜か……あれは確か唯一ベルシが操っていないのにベルシに寄り添って従ってる、真の意味でのベルシの唯一無二の友、ソルデスだったはず」


 望遠鏡を覗きながら言ったフミカの言葉を聞いて、思わず双眼鏡から目を離してフミカのほうを見てしまう。


 「え? 唯一の友があの竜だけって何それ? ボッチすぎない?」

 「だから魅了(チャーム)なんて能力に目覚めたんじゃない? それにソルデスはただの風竜じゃない。確か空の遺産の管理者の末裔だとか何とか……そんな奴と心通わせ、友達になったからベルシは空の貴公子なんて地位を得られたんでしょ? 興味ないから詳しくは知らないけど」

 「……なんだかあいつが悲しい奴に思えてきたな。まぁクズに同情はしねーけど」


 そう言ってため息をつくと、望遠鏡でベルシを監視しながらフミカが尋ねてくる。


 「で、どうするの? まさか見逃す気?」

 「正直、目視で追えてもあそこまで攻撃を届かせる手段がなぁ……」


 頭をボリボリと掻いてフミカに聞いてみる。


 「仮にベルシをこのまま逃がしたとして、復讐しにまた戻ってくると思うか?」


 その質問にフミカは迷うことなく即答した。


 「当然、戻ってくるでしょうね? 今すぐではないにしても、一旦態勢を整えてから出直してくるはずだよ? 様子を窺って、今だと思うタイミングでね? それが明日なのか、一週間後なのか、一年後なのかはわからないけど」

 「……そんな長期間、やつを警戒し続けるわけにもいかないんだがな」


 ため息交じりにそう言うとフミカは鼻で笑う。


 「最前線で空賊、海賊、山賊、邪神教徒と対峙してるギルドはどこもそうやって年中気を張ってるよ。カイトも上級ランクのギルドを目指すなら慣れとかないとね?」


 フミカは意地が悪そうな笑みを浮かべて言うが、正直自分たち……少なくとも俺とフミコ、ケティーはそこまでして上級ランクを目指そうとはしていない。


 上級ランクになればこの異世界にいるであろう、転生者、転移者、召喚者の情報を得られたり、接触できる可能性が増えるから目指しているだけであって、そこまでのリスクや気苦労を追ってまで上級ランクになろうとは思わないし、そんな長期間この異世界に滞在するつもりもない。


 一刻も早く、この異世界にいる地球からの転生者、転移者、召喚者を見つけ出して能力を奪って殺し、次の異世界に進みたいのだ。


 しかし、そう思う一方でこの異世界でリーナやヨハンといった面倒を見なければならない仲間もできてしまった。

 なんとも困った事である。


 (どっちにしろ、この異世界にいつまで留まる事になるかはわからない以上、後顧の憂いは取り除いておくべきだろうな)


 そう思って、懐からスマホを取り出す。

 そしてリエルへと電話をかけた。


 『もしもし? どないしたん?』

 「リエル、機械の騎士さんに頼みたい事があるんだが、長射程のミサイルを放てるオプションパーツってあるか?」


 その問いにリエルは即答した。


 『もちろんあるで! ご期待通りのやつがな!』

 「そうか、だったら……」




 ギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>が受け持つ最果ての小砦。

 その小砦を覆っていた赤紫色の靄が消え去ったため、空賊に襲撃される危険はなくなり、安全に屋外へと出られるようになっていた。


 そんなわけで今、歩廊から階段で繋がる見晴らしのいい砦の屋上へと誰かが歩いて向かっていた。

 しかし、その誰かは体が大きく、とても歩廊を歩いたり、屋上への階段をしっかりと登れる雰囲気ではなかった。


 それは一体誰なのか……言うまでもなくTD-66である。

 そんなTD-66を歩廊からリーナが心配そうに見つめていた。


 「ティーくん大丈夫かな? こけたりしないかな?」

 「ちょっとリーナ! 危ないから中に入ってようって!」


 そんなリーナの服をエマが必死で引っ張って砦の中に連れ戻そうとするが、リーナは頑なにTD-66を見守ると言って動かなかった。

 そんなリーナとエマの攻防を確認しながら、しかしTD-66はあえて何も言わず屋上へと歩を進める。


 そして屋上に到達するとTD-66は上空を見上げた。


 『ターゲット確認、これよりオプションパーツとドッキング、システムのアップデートを開始します』


 そう言ってTD-66は両手を前へと突き出す。

 そして、それは出現した。

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