表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/538

空賊連合(13)

 ベルシの命令によって、何十人もの女性たちが一斉に動き出すとベルシは。


 「あひゃひゃひゃ! おい、泣いて命乞いするなら今のうちだぞ? 男は助けんがフミカとフミコだけは助けてやらんことはない。まぁ、みだらにけつを振って僕をその気にさせられたらの話だがな? あひゃひゃひゃひゃ!!」


 愉快に笑いながらそんな事を言ってきた。

 まったく、典型的な低脳発言すぎて頭が痛くなりそうだ。


 「はぁ……本当にどうしようもねぇな」


 とは言え、これだけの数をいちいち相手にはしていられない。

 そして下の階にいた空賊どものように機銃掃射で片が付くこともないのだろう。


 フミカなら容赦なく、アンリやチャームにしたように次々と彼女たちの首を斬り落としていきそうだが、これだけの数だ、囲まれたらフミカでもさすがに厳しいのではないか?

 それにベルシが言うには彼女たちは全員、手練れ。

 まともにやりあってたら時間もかかるだろう、実に面倒だ。


 なので、一瞬で彼女らを無効化する方法を考える。

 視線をベルシの背後に向ければ、崩れた壁から青空が見えていた。


 天候は晴れ、そして陽の光もしっかりと視界に捕らえることができる。

 条件は申し分ない。

 思わずニヤリとしてしまう。


 「フミコ!! こいつを!!」


 叫んでフミコから預かっていた金銀錯嵌珠龍文鉄鏡をフミコへと投げ渡す。

 これをキャッチしたフミコはこちらの意図に気付いたのか頷くと、即座に床を蹴って部屋全体を見渡せる位置まで下がり、金銀錯嵌珠龍文鉄鏡を掲げた。


 「これでどうだ!!」


 掲げられた金銀錯嵌珠龍文鉄鏡の鏡面は陽の光を反射して広間全体に呪いを無効化する眩しい光を放つ。

 ベルシの命令で一斉に動き出した女性たちは皆、この光を浴びて即座に意識を失い、その場に倒れ込んでしまった。


 一方的な蹂躙ショーが見られると思っていたベルシは目の前の出来事に驚愕する。


 「な……なんだと!? バカな!? 僕の親衛隊(コレクションども)が!?」


 そしてすぐに気付いた。


 「魅了(チャーム)が解除されている……だと!? バ……バカな! ありえん!! こんな事あってたまるか!! 貴様、一体何をした!? どんなイカサマをしやがった!?」


 ベルシは叫んでこちらを睨んでくるが、鼻で笑い返してやる。


 「ふん、どうした? ご自慢の親衛隊(コレクション)が一瞬で失われて腰でも抜かしたか? イカサマ、イカサマと言うがな? イカサマ程度でてめーの手から離れるんだ。所詮、てめーの魅了(チャーム)はその程度って事だよ!」


 そう言ってやると、ベルシが怒りに満ちた表情となるが、ふと横を見ればフミカが何か言いたげな表情でこちらを見ていた。


 「えっと……フミカさん? どうしました?」

 「……別に、何でもない」


 フミカはそう言うが、しかし何か言いたげな表情をずっとこっちに向けている。


 あぁ、うん……これはあれだ。

 きっと、なんでこれをあの時にやらなかったの?魅了(チャーム)を解除できる術あるならアンリとチャームを私が斬った意味は?って言いたいんだろうな……


 ここに来る前の自分達の砦の駅でもその事で攻められそうになったが、さてフミカにどんな言葉をかければいいんだろうか?

 そう考えていると、ベルシの背後でガタっと大きい音がした。


 その場にいた全員が音のした方に視線を向けると、ベルシの背後の壁が崩れた音だった。

 元より、その壁は空賊連合が侵入する際に破壊されて穴が空き、青空が覗いていた状態だったが、その穴が空いた場所には、さきほどベルシが赤紫色の靄から呼びだし、金銀錯嵌珠龍文鉄鏡によって魅了(チャーム)から解放された女性が倒れていた。


 そう、女性が倒れた影響で壁が崩れたのだ。

 そして女性は壁の内側ではなく外側、つまりは屋内ではなく、砦の外へと落ちていく。


 「まずい!」


 そのまま放っておけば地面に落下して間違いなく転落死だ。

 咄嗟に伸縮性のある魔術障壁を展開して女性をキャッチし、トランポリンの跳躍に近い形で砦内へと投げ返す。


 「よし!」


 勢いよく砦内に戻ってきた女性の体を受け止めるべく再び魔術障壁を展開しようとするが。


 「僕の親衛隊(コレクション)だ! 渡すかよ!!」


 ベルシが叫んで赤紫色の靄を出現させ、女性の体を飲み込むと、すぐに赤紫色の靄は霧散した。

 直後、ベルシの手元に赤紫色の靄が出現し、女性の体が赤紫色の靄の中から出現すると赤紫色の靄は霧散する。

 そして、今度はベルシを守るようにベルシの周囲に赤紫色の靄が出現し、ベルシへの接近を阻む。


 「これ以上イカサマをされてたまるか!! おい!! 起きろ!! いつまで寝てやがる!!」


 そう言ってベルシはその手に抱いた女性に怒鳴るが、女性は意識を失っており、目を覚ましそうにない。

 そんな女性の様子を見てベルシが怒りに表情を歪める。


 「起きろと言ってるだろ!! 聞こえないのかこの役立たず!! 僕の言う事は絶対だ!! 僕が起きろと言ったら起きるんだよ、このアマ!! まったく使えない女だな!! あぁ!?」


 ベルシは怒鳴ると女性を平手で激しく殴打した。


 「起きろ!! さっさと起きろこのグズが!! 僕を煩わせるな!! おら!!」


 ベルシは半狂乱に叫んで連続で女性を平手で殴打していく。

 見ていてまったく気分のいいものではない。

 殴打されている女性と面識はないが、怒りが沸々とこみ上げてくる。


 「おい! いい加減にしろよクズ野郎!! それ以上その女性を叩くのをやめろ!! その女性を離せ!!」

 「あぁ!? 黙れイカサマ野郎!! この女は僕のものだ! 僕がどう扱おうが僕の勝手だろうが!!」

 「その女性はもうてめーの魅了(チャーム)からは解放されてる。てめーの所有物じゃねーよ。人権を持った一人の女性だ。これ以上の侮辱は許さねーぞ!」

 「人権を持った一人の女性だ? バカか貴様は? こいつに人権なんかねーよ! こいつは僕の玩具以外の何でもねー! 僕の望むままに相手を殺し、僕に腰を振って喘いでいたらそれでいいんだよ!」


 ベルシはまさにこれ以上ないくらいのクズ顔でそう言うと、目を覚まさない女性を今度は蹴り倒して踏みつける。

 そんな光景、見てるのもそろそろ限界だ。


 「……本当に反吐が出るなクズが、いい加減、そろそろ死んどけや!」


 なのでベルシの額をぶち抜こうとアビリティーユニット・ハンドガンモードを向けたところで、女性がうめき声をあげた。


 「う……」

 「……!! 気がついた!?」


 女性が起きた事でベルシの表情が狂気に歪む。


 「あは! ようやく目を覚ましやがったかこのマヌケが!! おい!! 何してやがるさっさと起きて目の前のこいつらを殺せ!! 僕の命令が聞こえないのか!? おら!!」


 ベルシが女性を数発蹴ると、女性は「痛っ!」と叫んで意識が戻った。

 そして、女性はベルシを見上げるとその表情を恐怖で歪め。


 「ひぃ! べ、ベルシ!! い、いやーーーー!!! 誰か助けて!!」


 叫んで、その場から逃げようと身をよじるが。


 「おい! 何逃げようとしてるんだコラ!! まったく使えない女だな!! おい!! 聞けよボケ!!」


 ベルシに手を掴まれて逃げることができない。

 なんとか足をバタつかせるが、すぐにベルシに馬乗りされて抵抗できなくなった。


 「いや!! 離して!! 誰か!! 誰か助けて!!」

 「この! 暴れるなよ!! 僕の所有物が僕に反抗するんじゃねーぞ!!」


 ベルシは馬乗りになった状態から女性の顔を殴り、そして女性の首を絞めて抵抗をなくそうとするが、女性は必死でベルシから顔を背ける。


 「あ……が……あ……ぐ、お、お願……い、助け」


 女性の悲痛な声に、いてもたってもいられず、アビリティーユニット・ハンドガンモードの引き金を引く。

 しかし、その銃弾は赤紫色の靄に阻まれた。


 「ち!! だったら!!」


 銃身を外してレーザーの刃を出し、ベルシへと斬りかかろうとするが。


 「僕を見ろ!! このマヌケが!!」

 

 必死で顔を背けていた女性だったが、首を絞められ続け、ついに抵抗できずにベルシのほうを向いてしまいベルシを見て抵抗を見せなくなる。

 そして……


 「ベルシさま……申し訳ありません」


 そう言って、散々自分を殴ったり蹴ったり首を絞めた相手であるベルシに対し、首に手を回して自ら抱きついていき、情熱的にキスをしだした。


 そしてしばらくそうした後、唇を離すと女性はゆっくりと起き上がり、虚ろな目でこちらを見据える。


 「ベルシさまの望むままに、敵を排除します」

 「あは! そうだ!! 僕のためにそいつらを殺せ!! そうすればご褒美をくれてやるぞ、ひひ」


 ゲス顔で命じるベルシの前で、女性は無感情に頷くと、一気にこちらに向かって駆けてくる。


 「くそ! あんな事されてもベルシの言う事聞くのかよ!? つくづくゲスな技だな魅了(チャーム)ってのは!」


 言ってちらっと横にいるフミカを見ると、すでに大刀を構えて準備万端な状態だった。

 きっと次の瞬間にはフミカが女性の首を斬り落としているだろう。


 そうなれば、もうベルシに手はないはずだ。

 まぁ、まだ他に倒れている女性を回収して同じ事を繰り返す可能性もあるにはあるが、ベルシがそこまで頭が回るかは不明だ。


 しかし……それでいいのか?

 ここでフミカに彼女の首を刎ねさせていいのか?


 (よくは……ねぇよな)


 この女性とフミカは恐らく面識はないだろう。

 だからアンリやチャームの首を斬り落とした時ほど気は重くないはずだ。

 だからと言って、ベルシにあんな事された女性を……

 意識を取り戻してからずっと助けを求めていた女性を殺していいものなのか?


 フミカの向こうにいるココに目を向ける。

 ココでは恐らく女性を取り押さえる事はできないだろう……というか力加減がわからず女性の体を粉々にしてしまいそうだ。


 となれば……


 「フミコ!! もう一度金銀錯嵌珠龍文鉄鏡を!!」


 振り返らずにそう叫ぶが、しかし……


 「かい君ごめん……さっきので鉄鏡内の呪力全部使っちゃったみたい」


 申し訳なさそうな声が聞こえてきた。

 Oh……まぁ、あれだけの人数の魅了(チャーム)を同時に解除したのだ。

 それは仕方のない事だろう。


 こうなっては仕方がない……気が進まないが、あれをやるしかない。

 ベルシのゲスな言動を散々見てきた後で使うのは本当の本当に心苛まれるが、彼女を殺さず救うには、もうこれしかない。


 「はぁ……本当に最悪だ。実戦で……使った事のない能力をぶっつけ本番で使うのだけは今まで極力避けてきたってのに……けど、俺はあんなゲス野郎とは違う!! それを今から見せてやる!!」


 叫んでレーザーの刃をしまうと懐からアビリティーチェッカーを取り出し、アビリティーユニットに取り付ける。

 そして投影されたエンブレムの中から、あるエンブレムをタッチした。


 アビリティーユニットの周囲の空間に紫電が迸り、何もない空間に半透明の板が浮かび上がる。

 やがてそれは完全に物質化し一気にアビリティーユニットの元にくっついた。


 それはとある異世界の貴族令嬢エリオール・トリテ・セレヌ・カルテーラ。

 通称、悪役令嬢転生者エリオから奪った呪いの鏡の能力。

 それを使用する際のアビリティーユニット・ミラーモードの姿だった。


 アビリティーユニット・ミラーモードを前に突き出し、陽の光を反射させて鏡面からレーザービームを放つ。

 かの異世界では自分はこのレーザービームを浴びてしまい、悪役令嬢転生者エリオを「うつくしい、うつくしい」と言うだけのゾンビと成り果ててしまっていたらしい。


 その時の記憶が一切ないので、フミコの話でしかその時の事はわからないが、はてさて一体どうなるやら……


 アビリティーユニット・ミラーモードから放たれたレーザービームはこちらに向かって駆けてきた女性を貫き、そして……自分の目の前で足を止めた。


 「おい! どうした!? 何をやってるさっさとそいつを殺せ!! 僕の言う事が聞けないのか!? このマヌケ!!」


 動きを止めた女性をベルシが怒鳴りつけるが、しかし自分の目の前で止まった女性はベルシのことなど無視してため息をつくと。


 「はぁ……素敵」


 うっとりとした顔で自分を見てそう言ってきた。


 ……うむ、これは成功なのか?

 その女性を鑑定眼で見てみるとステータスに「魅了(上書き)」「洗脳(催眠術による上書き)」「混乱(無効)」となっていた、どうやら成功したようだ。

 呪いの鏡の能力でベルシの魅了(チャーム)から彼女を解放できたらしい。


 鑑定眼によれば、その女性はドリーという名前らしい。

 プライベートな部分を覗き見るつもりはないので、名前と状態異常のみ確認しようと思ったのだが、さすがにそれは無理があるというもので、職業:海賊という文字が嫌でも目に入った。


 「えっと……ドリー。怪我はないかい?」


 とえあえず、そう声をかけてみると。


 「あ、はい……大丈夫です。でも、少し体が痛むのであなた様の腕の中で介抱してくれたらうれしいなって……」


 そうもじもじしながら上目使いでドリーが言ってくる。

 横の方からと背後から殺気が感じられたが、今は一旦無視しよう。

 後で大変な事になるのはわかっているが……


 「あぁ、俺の事ならカイトって呼んでくれたらいいよ」

 「カイト……様。はい! ではカイト様、わたしを抱いてください……そうすれば体は癒えますので」

 「……ん? 今何て?」

 「だからその……抱いてくださいって……やだカイト様、照れます」


 そう言ってドリーは頬を両手で押えながら体をクネクネさせだした。

 うん、この子は突然何を言い出すのかな?


 あ、断っておくが、断じて自分が言わせてるわけじゃないぞ?

 確かにこの子は今「魅了(上書き)」「洗脳(催眠術による上書き)」って状態だけど、自分が言わせてるわけじゃないですからね?


 うん、どうなってんのこれ?

 能力の詳しい説明、誰かしてくれー!


 そう思っていると、いつまでも抱きしめてくれない事に業を煮やしたのかドリーのほうから自分に抱きついてきた。


 「えい!」

 「わ!? ちょ、ドリー?」

 「うふふ」


 直後、横のいるココと背後のフミコの殺意が肌で感じるほどに膨れ上がった。

 あ、これはまずいと思ってると、隣にいるフミカまで自分に冷めた視線を向けてきた。


 「カイトさぁ……最低、何やってんの? ベルシと同じ事して楽しい?」

 「ちょっとフミカさん!? 大いなる誤解ですよそれ!!」


 そうフミカに訴えるが、フミカは冷めた視線を向けてくるままだった。


 一方のベルシは目の前の光景が信じられないといった表情をしていたが。


 「おい! ふざけるな!! マヌケどういうつもりだ!? 僕を裏切る気か!? そんな事許されると思ってるのか!? おい!! こっちを見ろ!! このマヌケ!! 返事をしろ!!」


 すぐに怒り心頭といった表情となるとドリーを怒鳴りつけるが、ドリーはベルシの言葉を無視したままだった。


 自分の言葉をまるで聞かなくなったドリーと、そんなドリーを抱きしめている自分を見てベルシは血が出るほど歯がみし。


 「ぐぬぬ……おのれ、どういうつもりだイカサマ野郎!! 僕のコレクションに一体何をしやがった!! あぁ!? こんな事、許される事ではないぞ!? この泥棒が!! 僕がコレクションを集めるのに、一体どれだけ苦労したかわかってるのか!? えぇ!?」


 などと言ってきた。

 本当に呆れてしまう……こいつはとことんクズの、最底辺に生きてるんだなと実感した。


 「空賊が横取りされて、その相手を泥棒と罵るか……乾いた笑いしかでねーな?」

 「なんだと?」

 「大体そんなに苦労したというなら、もっとドリーを大事に扱えよ! 大切に接しろよ! それが感じられない時点で、殴る蹴るの暴行を働く時点でお前の苦労とやらは薄っぺらいんだよ! 苦労話を語る資格も、権利もねー! そもそも魅了(チャーム)なんて不正行為で堕として手に入れた時点で、てめーは苦労なんてしてねーよ! 一体どの口が苦労を語ってるんだ? あぁ!?」


 そうベルシに怒鳴ると、自分に抱きついていたドリーも振り返ってベルシに文句を言い出した。


 「カイト様の言う通りよ!! ただの自己満足の収集行為を苦労だとか言わないでほしいわ!!」


 そう言うドリーを見て、しかし思わず我に返ってしまう。

 いやドリーさん、あなたは今ベルシのほうを見ない方が……


 案の定、ベルシは自分のほうを向いて文句を言ってきたドリーを見てニヤーっと笑うと。


 「やっとこっちを向いたなドリー、ダメじゃないか僕を裏切ったら……君は僕のものなんだから」


 そう言ってドリーに再び魅了(チャーム)をかける。

 ベルシに言われてドリーは即、硬直して虚ろな目に戻ると。


 「申し訳ありません、ベルシ様……」


 そう言いだした。

 ほら、言わんこっちゃない……


 仕方がないのでもう一度ドリーにアビリティーユニット・ミラーモードの反射の光を浴びせる。

 するとドリーの虚ろな目が覇気ある目に戻った。


 「はっ!! カイト様……わたし今何を?」


 そう言うドリーを見てベルシがぐぬぬと唸りながら再び声をかけてくる。

 それにまたしてもドリーは反応し魅了(チャーム)にかけられ、こちらもアビリティーユニット・ミラーモードの反射の光を再び浴びせ……


 こうして、ここから吉○新喜劇もビックリな往復ドタバタ劇がはじまった。


 「こっちを向くんだドリー」


 魅了(チャーム)


 「ベルシ様!」


 アビリティーユニット・ミラーモード!


 「カイト様!」


 「こっちを向くんだドリー」


 魅了(チャーム)


 「ベルシ様!」


 アビリティーユニット・ミラーモード!


 「カイト様!」


 「こっちを向くんだドリー」


 魅了(チャーム)


 「ベルシ様!」


 アビリティーユニット・ミラーモード!


 「カイト様!」


 「こっちを向くんだドリー」


 魅了(チャーム)


 「ベルシ様!」


 アビリティーユニット・ミラーモード!


 「カイト様!」


 こうして、このやり取りがほぼ永久に続くのかと終われるくらい、終わりのない応酬が続いたのだが、おかげですっかりフミコとココの怒りは冷め、フミカに至っては大きなあくびをして退屈そうに耳の穴に指を突っ込んでほじほじしている。

 そしてやれやれと言わんばかりにため息をつくと。


 「ほんと仕方ないなー」


 そう言って、ドリーが自分のアビリティーユニット・ミラーモードの反射の光を浴びて「カイト様!」と言ったタイミングでドリーの顔にハチマキを巻いて目隠しをした。


 「はい、これならもうこの子がベルシの魅了(チャーム)にかかる事はないでしょ?」

 「あ、本当だ。ありがとうフミカ。ん? というか最初からこれしておけばよかったんじゃ……」


 思わずそう口走るとフミカに睨まれた。


 「ん? カイト、今何か言った?」

 「え? あ、いや……何でもないです、はい」


 うん、金銀錯嵌珠龍文鉄鏡の事まだ根に持ってるのかな?

 これ以上は何か言うのはやめておこう。

 おほん!とわざとらしく咳き込んでからアビリティーユニット・ミラーモードを解除し、レーザーの刃を出して改めてベルシを睨み付ける。


 「と、とりあえず……今度こそ年貢の納め時だぜベルシ! 覚悟しろ!! てめーをぶっ倒す!!」


 後ろから駆けてきたフミコが自分の隣に立ち、こちらも銅剣を構える。

 隣に立つフミカも大刀を構え、ココも拳をゴキゴキ鳴らす。


 そんな自分達を見てベルシはぐぬぬ……と唸っていたが。


 「親衛隊(コレクションども)を無効化したくらいであまりいい気になるなよ? 何を勝ったつもりでいやがる! 気にくわなねー! その鼻っ面、ポッキリ折ってやるよ!!」


 そう叫ぶと両手を広げ、自分たちの周囲に赤紫色の靄を発生させる。


 「!!」


 直後、赤紫色の靄の中から無数の槍が飛び出してきた。


 「くたばるのはお前達だ!! 串刺しにしてやる!!」

 「そいつはどうかな!?」


 叫んでレーザーブレードを振るい、槍を斬り落としていく。

 ベルシとの直接対決が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ